帝国内乱

時は遡り、シリウスが不貞腐れて寝た後だった。監獄島の通路、ある男が2人の部下を連れて歩く。


ストラス「お〜い。兄さん?本当に寝たのか?返事が無ぇな。」


リード「フム。本当に寝ている様だぞ。こんな硬い所でよく寝れる。」


ストラス「え?お!リード!・・・・じゃなかった。騎士団長。」


ストラスは膝を突く。


リード「気にするな。私とお前の仲だ。今更そんな形式は要らない。それでどうだ?姫の居場所は?」


ストラス「いや、こいつ本当にただの観光客みたいよ。」


リード「はぁ、結局は警ら隊の勇み足か。」


ストラス「そうみたい。」


騎士1「フンッ。奴等、偉そうに言っておきながら結局は何も出来無いんですよ!」


騎士2「やはり抜本的な改革が必要ですね!」


ストラス「落ち着けって!それは分かってんの!」


騎士2「ストラス隊長!分かっているならば今直ぐやるべきです!」


リード「奴等を叩き潰すのはまだ後だ。とにかく今、重要なのは姫の身柄確保だ。旧貴族派閥より先に捕まえる。」


現在の帝国の勢力は大きく分けて3つある。現皇帝エカルトを支持する新貴族派閥と言われる貴族達。その貴族達で構成された騎士団の2番隊と4番隊。

騎士団長、リード率いる1番隊と3番隊、そしてストラス率いる5番隊。

エカルトに反発している子爵と男爵家からなる旧貴族派閥、その子息で構成されている6番隊の3勢力に分かれていた。


騎士1「お2人のお考えは分かります!しかし、このままでは民が疲弊していくばかり。早急に対処しなければ!」


ストラス「分かってるって。その為の姫さん。だろ?」


リード「そうだ。」


騎士2「姫を捕えるのは分かりました。しかし、居所が分かりません。現状では直ぐに捕えられる事は難しいかと。ただでさえ旧貴族派閥の奴等に遅れを取っています。1度、旧貴族派閥の連中に牽制を入れるのはどうですか?」


リード「旧貴族派閥の邪魔をすると言うのは悪く無いだろう。だが、それをすると皇帝の耳に姫を狙っている事が知られてしまう。」


ストラス「今は隠密行動が必須って事さ。」


騎士1「了解しました。」


ストラス「そろそろ俺達も動くのか?」


リード「ああ!行くぞ、ストラス!」


リードの指示で牢屋の鍵が開く。ストラスは牢屋から出ると身体を伸ばす。


ストラス「う〜。やっと牢屋から出られたぁ。」


リード「1日しか入っていなかった筈だが?」


ストラス「五月蝿ぇっての!」


リード達は歩き出す。


ストラス「あ!おい!こいつは?」


リード「ストラス、我々には時間が無い。当然、国民にもな。」


ストラス「だけど!こいつも俺達と同じ様に貴族の理不尽で・・・。」


リード「理解しろ!我々が何より優先すべきは帝国国民だ。彼には悪いが、助けている余裕は無い。」


ストラス「・・・・鍵を。」


騎士1「いや、しかし。」


リード「渡してやれ。急げよ。」


リードと騎士達は出口へ向かう。


ストラス「おい!あんた!おいってば!」


シリウス「んあ?」


眠気から朦朧としているシリウスにストラスは話を続ける。


ストラス「これ!鍵!置いて行くから。これで脱出しろ!分かったな!」


シリウスは軽く手を振りまた眠る。


ストラス「分かってんのかな?」


リード「行くぞ。」


ストラス達4人は転送の魔法陣を発動させ帝都へ戻る。


リード「ストラス。」


ストラス「うん?」


リード「早速で悪いが新しい任務だ。姫を探せ。懐柔し、隙を見て私の所へ連れて来てくれ。」


ストラス「・・・ああ。」


リード「お前がエカルト陛下に想う所があるのは理解している。だが、もう皆が限界なんだ。頼む。」


ストラス「分かってるよ。行ってくる。」


騎士1「隊長!ご武運を。」


騎士2「ご武運を。」


ストラス「おう。お前等もしっかりな。」


シリウス達を置き去りに、それぞれの思惑が動き出す。

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