漂流
自分で言うのも何だけど、見事な唐竹割りでドラゴンを真っ二つにした。とにかく戦いに勝ち、一旦は休憩出来る。
ただ、窮地は脱していない。今、俺は海の真ん中で漂流している。この『世界』の星の並びは『地球』と同じだ。だから北極星を見つければ方角は分かる。でも帝国の本土がどの方角にあるかが分からない。
俺「駄目だ。詰んだ。」
地下から脱出したと言う事でスマホも確認した。
俺「相変わらず圏外だ。くそっ!もう地下じゃないのに。たくっ、基地局くらい建てとけよ!・・・はぁ、落ち着け。ここで無駄に体力は使うな。」
先ずはライフラインだ。辛うじて昔にスクルドから貰ったアプリで飲み水はある。スマホから出る水を飲むなんて変な話だけど、背に腹は代えられない。食べ物に付いては何も無い。海の魚を刀の投擲で刺し、"来い"と念じ引き寄せるって手段を考えた。実践すると刺した魚は置き去りに刀だけ帰って来た。
そして水だけでの漂流生活2日目。
俺「死ぬ〜。暑い〜。雲一つ無ぇ。腹減ったぁ。」
言えば余計に気が滅入る。だが、こんな状況だ。愚痴を言いたいこの心情くらいは汲んで欲しい。
俺「と言うか一体、何処の誰が俺なんかの漂流記を望んでるんだよぉ?駄目だ意識が遠退く。」
するとボートが若干揺れる。波が立ったのか?意識が朦朧としているから考えるのも辛い。
男1「あんれまぁ!あんたぁ、こんな所で何してるぅ〜?」
男2「漂流でねぇか?」
男1「それは見れば分がるってぇ。船長〜!人だぁ!何かボートで漂流してる人がいるよぉ〜!」
船長「分がったぁ!とにかく助げてやれぇ!おい!誰か水持って来ぉい!」
俺は偶々通り掛かった漁船に助けられた。
俺「助かったぁ!死ぬかと思ったぁ!」
人目を気にせず泣いたのは久しぶりだった。しかし、そんな事を気にしていられないくらい辛かった。
船長「お前ぇさん。こんな所で何してた?」
俺「俺はか・・・。」
"監獄島から来た。"それを言いそうになった所で冷静な俺が待ったを掛ける。このまま素直に言って良いのか?と。元々は冤罪だが、脱獄した事に変わりは無い。本土に着いて直ぐ逮捕じゃ、洒落にもならない。
俺は自身の脳細胞をフル回転させ妙案を思い付く。
俺「いや、それが自分でも分かんなくて。」
船長「はぁ?」
男1「あ!これアレだべ!記憶、喪失って奴でねぇか?」
男2「ああ。あの頭の中がぁ、変になるって奴だっけ?」
男1「そう、かな?うん?何か違うような?」
船長「まぁ、ええわ。お前ぇさん。名前は?名前も分がんねぇのか?」
俺「え?いや、まぁ、名前はシリウスです。」
男2「へぇ、名前は分かるだか?何か都合がええの?」
ヤバい!疑われてる?
船長「とにかく俺達はこれから帝国に帰る所だ。お前ぇさんも連れてってやる。代わりに俺達の仕事、手伝って貰うからな。」
俺「へい!若輩の身ですが精一杯、務めさせて頂きます。」
こうして漁船に救われ、俺は帝国へ送って貰う事になった。
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