デュヴァール帝国編
帝国の歴史
アイリス「はぁ〜!風が気持ち良い!」
俺「・・・・・。」
アイリス「・・・・・何?」
俺「いや、何でいらっしゃるのかな?って思って。」
アイリス「・・・悪い?」
俺「いえ、そんな事は・・・・。」
俺達は現在帝国に向かう船に乗っている。ただ、アイリスが同じ船に乗っている理由が分からない。今回の事、まだ話して無かった筈だけど。
クリス「僕がお願いしたんです。」
アイリス「そう。」
クリスが?何故?
クリス「フフッ。世界は広いですが、その世界で義兄上を御しきれるのは姉上だけだと思いまして。」
成程、そういう事か。だけどここまで来たら、俺がクリスの見合いに付いて来た理由を説明しなきゃならない。どうしよう。
クリス「姉上。よろしくお願いします。」
アイリス「任せなさい!」
マーク「クリス様、あちらでお待ちです。」
クリス「ああ、今行く。」
クリスは帝国からの使者と話す為に移動する。
アイリス「で?」
俺「ん?」
アイリス「今回はどんな厄介事?」
俺「え〜っと、仕方ないか。」
夢の事を全部話す。
アイリス「はぁ?じゃあ、何?ヴェルダンディは、人の恋愛の為に私の旦那を戦場に放り込むつもりなの?」
俺「いや、まぁ、つもりって言うか。もう放り込まれたと言うべきか。」
アイリス「何でそんな仕事、受けたの?」
俺「あいつが言うにはこのままだとクリスは大怪我するし、戦争も起きて大変だって言うから。」
アイリス「うっ。はぁ、仕方ないか。あ!ちょっとごめんね。」
アイリスは身なりの良いお嬢さんの所に向かう。挨拶をしてから楽しそうに話し込んでいる。
俺「誰だ?」
ジェイド「スワロウ公爵家お抱えの商会、ルミナス商会。その1人娘で、お前の女房の親友だ。」
俺「へぇ。・・・・・何でお前がいるの?」
ジェイド「ふぅ、お前が公爵に話を持って来てから直ぐだ。この1件には裏があると思った公爵が俺と部下達を呼んだんだ。」
俺「ん?何で呼ばれたんだ?」
ジェイド「公爵は考えたのさ。お前の事だからどうせ自分の護衛は出来ないとな。」
俺「だからお前と部下達が護衛に付いたって事か。」
ジェイド「隠しているが、今、公爵の後ろにいる女は俺の部下だ。因みに俺の仕事は護衛じゃないがな。」
俺「え?何で?」
ジェイド「さっき言ったろ?公爵はこの見合いを怪しいと睨んでいる。俺は帝国に着き次第、お前達と離れ調査に入る。」
俺「調べるの?帝国を?大丈夫なのか?」
ジェイド「勿論、帝国側に知られれば問題だ。俺の首が飛ぶ事は当然、俺の上にいる貴族も責任を取られて極刑だろうな。」
俺「クリス、首切られるの?」
ジェイド「何言ってる?その下にいるだろう?責任者が。」
考えるとランドの顔が浮かぶ。でもあいつに責任を取らせるには無理があるのでは?
ジェイド「はぁ、何を考えてるのか知らないがランドじゃないぞ。」
俺「は?じゃあ誰だよ?」
ジェイド「お前、自分の肩書きをちゃんと把握してるのか?」
うん?正確に自分の肩書きを思い出す。伯爵と・・・あれ?待てよ!俺って魔族領の領主って肩書き無かったか?
ジェイド「やっと思い至ったか?首を切られる責任者はお前だよ。」
俺はその事実に言葉を失う。
俺「何で?」
ジェイド「はぁ、考えれば分かるだろ?それに伯爵が責任を取れば公爵を咎める者もいないだろうしな。」
ば、馬鹿な!それじゃあ俺はただのスケープゴートじゃないか!クリス、それも織り込み済みだったのか?その為に俺を伯爵にして、同時に領主へ推薦したのか?は、嵌められた?
アイリス「どうしたの?変な顔をして?」
俺「・・・俺ってクリスに嫌われてる?」
アイリス「え?そんな事無いでしょ?・・・あ!フフッ。」
アイリスが手を振る。俺も釣られてそっちを向くとクリスと目が合う。アイリスへ手を振った後、今度は俺に向かい笑顔で手を振る。
俺も手を振ったけど、多分顔はかなり酷かったんじゃないかな?とか思う。何しろ自分でも顔が引き攣ってるのが分かったからな。
ジェイド「フッ。中々に面白い顔だな。」
俺「五月蝿ぇな。と言うか、絶対にしくじるなよ!分かってんだろうな!」
ジェイド「フン。お前がどうなろうと興味は無い。だが、こちらも仲間達の事がある。しくじりはしない。」
俺「・・・・そういえば帝国帝国って言ってるけど、帝国に関する知識が一切無い。どんな国なんだ?」
アイリス「シリウス学校行って無いもんね。」
ジェイド「フンッ、貴族のくせに教養が無いな。まぁ、俺も最近情報を頭に入れたばかりだがな。」
アイリス「帝国は元々、バナート大陸の約3分1を領土にしていた国なの。」
ジェイド「まぁ、当時は魔物の森を挟んで東側、我々の魔族領の辺りは含まれていないがな。」
アイリス「で、その森の西側の3分1が帝国。もう3分の1が王国の領土。残りの3分の1は弱小の小国達だったの。」
ジェイド「スワロウ公爵家も当時はその他の国で王族をしていたらしいぞ。」
アイリス「随分と昔の事で実感は無いけどね。」
俺「へぇ。それで?」
ジェイド「王国と帝国は常に鎬を削る争いをしていた。最終的に周りの小国達を取り込み、勢力を拡大させる事にした。」
アイリス「王国は和平交渉、帝国は武力で支配と、やり方は違うけどそれぞれ統一に向けて動いてたの。結果、残ったのは王国と帝国の2カ国だけになった。」
ジェイド「後は相手を潰すだけという所で事件が起きた。」
俺「え?何?」
アイリス「クーデター・・・内乱が起きたの。」
俺「内乱?」
ジェイド「当時の皇帝、ディナメル・デュヴァール4世が王国と和平交渉をするつもりで動いていた時だ。好戦派の弟、アルフラム・デュヴァールとの諍いが起きたらしい。」
俺「あら〜、凄い政治的な話。」
アイリス「最後はその弟が兄を殺して皇帝の座に付いたんだけど、流石に家臣一同が混乱してから。王国が攻める絶好の機会を帝国が与える事になったの。」
ジェイド「その隙を王国に突かれ帝国はあっさり負けたんだ。その後、王国に2度と歯向かわないと契約を結ぶ事で帝国の皇族と一部の貴族に命の保証をした。そしてこれから向かう南の島へと追いやられたという訳だ。」
俺「兄弟喧嘩で国を滅ぼすとは恐ろしい話。それで?今回の縁談話を持って来たのは?」
ジェイド「内乱を起こしたアルフラムの曽孫、若干17歳で即位した現皇帝エカルト・デュヴァールだ。」
俺「え!17ってそんなに若いの?皇帝?」
アイリス「そう。確か事件は2年前の事で、クリスと同い歳だから今は19歳の筈。」
俺「え〜っと?その妹が相手だっけ?」
ジェイド「つい最近15になった筈だ。」
俺「はぁぁ。21の俺でも国を背負うなんて大役したく無いのに凄いな。でも、何で19歳で皇帝なんかしてるんだ?親父さん、何かあったの?」
ジェイド「"親父さん"?まぁ、良い。前皇帝アルフラム3世は皮肉な事にエカルトが起こした内乱で処刑された。」
また内乱?帝国は内乱が好きなのか?
アイリス「それ以上の詳しい話はまだ王国の方に伝わってないから、経緯とかは私に聞かないでよ?」
一通りの話を聞き終えた所で帝国の港が見えて来る。これから"新章"が始まる訳だ。本体の記憶でこの先、何が起きるかは把握している。ただ、"俺"が介入する事でどんな影響があるかは分からない。しくじらない様にと、気合いを入れ帝国の大地に足を踏み入れる。そしてその2時間程後、俺は色々あって監獄に収監される事になった。
俺「何故だ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます