開始
俺「あ〜。酷い夢だ。」
気が付くと部屋のベッドの上だった。朝から憂鬱な気分だが、これから準備してクリスの所に向かわなければ。
アイリス「う〜〜ん。・・・・何?」
俺の声に起きたのかアイリスが気怠げに反応する。
俺「いや、酷い夢を見たんだよ。」
アイリス「そう。・・・・大丈夫。怖くない、怖くない。」
アイリスは寝ぼけているのか、そう言うと俺の頭を撫でる。中身は俺の方が年上なんだけど。
俺「別に怖い夢を見た訳じゃ・・・いや、割と怖かったな。・・・まぁ、良いや。」
とにかくしばらくアイリスに撫でられた後、朝飯を食いバイクでクリスのいるアストに向かった。途中で行商人の馬車とすれ違い"何じゃありゃあ!"と驚かれたけど無かった事にしよう。俺はアストに到着すると直ぐに領主邸へ向かった。
俺「と言う訳でクリス。お前の見合いに俺も連れて行ってくれ。」
クリス「・・・・。」
クロード「・・・・はぁ。」
クリス「あ、あの、義兄上。」
俺「ん?」
クリス「いきなり現れて何の脈絡も無く"と言う訳で"と仰られても、何一つ分からない今の状況では許可出来ませんよ?」
俺の勢いと流れで押し切る作戦はいとも容易く砕け散った。
クロード「以前から阿呆だと思っていたが貴様は馬鹿なだけだったか。」
俺「はぁ?お前ね。今の俺は伯爵だぜ。言葉に気を付けろよ。」
クロード「生憎だったな。私もつい先日、父上から家督を継いだ。つまりは私も伯爵。貴様とは同格だ。」
俺「分かってねぇな。そんな俺の奥さんは誰だよ。」
クロード「何!」
俺「俺の奥さんはアイリス。栄えある現スワロウ公爵様の姉君だ。要するに俺は義理とは言え、クリスの兄貴な訳よ。」
クロード「ぐぅ!」
俺「同じ伯爵でも使用人と親戚ならどちらが上か、お前なら分かるだろ?」
クロード「ぐぅぅ!」
フッ、勝ったな。
クリス「2人共、意外と仲が良いんですね。」
俺「え?何処が?」
クロード「クリス様!心外です!」
クリス「それで?義兄上は何処で僕の見合いの話を聞き付けたのですか?」
俺「え〜っと・・・・神の、御告げ?」
クリス「え?」
クロード「ただの馬鹿では無く、狂人か。」
俺「お前、いい加減しろよ!」
クロード「それは貴様の方だろう!」
睨み合う俺とクロード。そんな時だ。視界の端に気になる物を捉える。
俺「あれ?チェスだ。」
クロード「何?」
クリス「義兄上、その遊具をご存知で?」
俺「昔、似た様な物を見た事があってさ。」
クロード「これはエンペラーウォーズという名の最近、帝国で開発された遊具だ。貴様が目撃した物とは別物だろう。」
まぁ、それはそうだ。俺が見たのは『地球』にいた時だからな。というかこの『世界』にもおもちゃを作るって発想があったんだな。そんな余裕、何処にも無いと思ってた。
クリス「義兄上、遊んでみますか?」
俺「え?」
クロード「クリス様。まだ仕事が残っていますよ。・・・フム。興味があるならば私が相手をしてやろう。」
俺「いや、多少は知ってるってだけだから勝負出来る程じゃ。」
クロード「フッ。逃げるのか?」
クリス「クロード。君が遊びたいだけじゃないのかい?」
クロード「違います。この男にどちらが上か知らしめようと考えたのです。」
俺「とにかくやらない。仕事中なら集中しろよ。」
クロード「チッ!」
クリス「それにしても不思議ですよね。」
俺「何が?」
クリス「片方ではこうした娯楽用の遊具を作り、もう片方では・・・。」
俺「・・・・。」
クロード「・・・・。」
クリスが机にゴトリと音を立てながら物を置く。拳銃だ。
クリス「兵器を製造している。」
クロード「"ジュウ"と言うそうだ。言ってしまえば恐ろしく小型の大砲だな。」
俺「小に大ね。頓知が効いてるな。」
クロード「ふざけている場合では無いぞ。」
クリス「下手をすると戦争の準備とも取れる行動、そこへ僕との縁談話が来たんです。」
俺「へぇ。そりゃ何とも怪しいね。」
クロード「貴様は嫌いだが、その鼻が効く辺りは流石と褒めてやる。」
嘘っ!お前って人を褒める事あるんだ!ビックリ。
クロード「何だ?」
俺「いや。それで?」
クリス「僕としては護衛が増える事はありがたいですし、それが義兄上ならば尚更助かります。」
クロード「クリス様!本当によろしいのですか?この男が同行して?我が国の品位を下げる恐れが・・・。」
何で俺がこの国の恥を代表しなきゃならん。俺はそこまで凄く無いぞ。
クリス「フフッ。大丈夫だよ、クロード。僕に秘策がある。」
不敵に笑うクリス。俺は思わずクロードと目を合わせる。首を傾げクロードに"どういう事?"と聞くと、今度はクロードが"分からん"と首を横に振る。というか俺達って目だけで会話、出来たんだな。個人的にはそこまで仲良く無いと思ってんだけど。何はともあれ俺も帝国へ行ける事になった。
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