第2話 恋の芽生え

オフィスの窓から夏の日差しが差し込む頃。

彼との電話は、すっかり日常になっていた。


「入金の確認をお願いします」

事務的な言葉のやり取り。


けれど声を聞くたび、胸の奥がふっと温かくなる。

電話を切ったあと、書類をめくる手が止まってしまうこともあった。


同期会の帰り道、彼がふと隣を歩いてくれたことがある。


「大変だよな、事務の仕事って。俺ら営業より細かくてさ」


軽く笑いながらかけられたその一言に、不思議と励まされた。

ほんの小さなやさしさに、心が大きく揺れた。


週末に出かけた牧場でのこと。

草の匂い、太陽に照らされた彼の笑顔。


その横顔を見ながら、私は気づいていた。

もう“ただの同期”ではいられないのだ、と。


やがて耳に入ったのは、彼が同期の女性と付き合い始めたという噂だった。

胸の奥でざわめきが広がる。


「へえ、そうなんだ」


そう答えるしかなかった。


恋心は芽吹いたばかりだったのに、もう行き場を失っていた。

それでも、隠せば隠すほどに鮮やかになっていった。

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