第11話 日々の瞬間
後日、ニグリスの死刑判決がくだされた。
処刑までの間、ニグリスは面会をすべて拒否した。ニグリスはその間何も口にしなかった。
そして処刑の前日、ニグリスは自らの炎で己を燃やし尽くし、残ったのは灰だけだった。
その事を知ったハインズは絶望し、怒り、そして改めて覚悟を決めた。ニグリスの思いを受け継ぎ、立派な氷の騎士になると。
ルナはニグリスへの思いを言葉にできないままだったため、悲しみ、涙が止まらなかった。そしてルナは後日、騎士団を辞職していった。
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ニグリス部屋にて
「はぁ…団長から部屋の片付け命令されるとか俺ついてねぇ〜…てかこの部屋何もねぇな。あいつに趣味があんまねぇのは知ってたけど…マジで最低限なものしかねぇな。呆れるわ〜……」
するとローベルは壁にこの街の地図があることに気づいた。
「…この地図は、犯罪者の詳細とか書いてあるな。字が細けぇ……これ、一人でやってたのか。つらかったんだろーな。まぁこれがアイツの選択なんだからどーでもいいけどな。」
地図を壁から取り外し、続いて近くにあった机を整理し始めた。引き出しを開けると、そこには2冊の本があった。
「…一冊は、日誌か?アイツの性格じゃねぇだろうに…」
本を開き、中を見てみると真面目に一日一日のことが書かれていた。業務のこと、飲み会のこと、その人の好みや街の人の事など。だが、青い死神についてのことは一切書かれていなかった。
「…あいつらしいな。これじゃ普段の書類仕事と同じじゃねぇか。」
もう一冊には、街の子供などからもらった花や折り紙、小さな手紙などが挟んであった。そして一番最後の場所に写真が何枚か挟んであった。
見ると、ほとんどは街の人と撮ったものと、飲み会での集合写真だった。そして数枚は違った。ニグリスが隠し撮りしたであろう写真だった。ローベルとシャルの言い争っている時のもの、ハインズが街の子供に囲まれている時のもの、ローベルの後ろ姿、ルナとシャルの写真だった。
「…あいつ、こんなのいつ撮ったんだよ。
きめぇなー…」
ローベルはそのまま整理を続け、粗方が終わった時、ベットの枕の下に手紙が1枚だけあった。
[合計1438人。男7割女3割。男は暴力など派手な犯罪だったためすぐに発見した。女は人を騙す事が多かったため少し手間がかかった。
僕は人を大勢殺した悪人だ。だからこれが終わったら自殺をしようと思う。たとえ死刑判決だったとしてもそれは僕を誰かが殺すということになる。そんなこと、誰にもしてほしくない。だから、自殺する。ローベル、お前はそれを許さないだろうけど、わかってくれるだろうな。この人生、僕は人に恵まれたと思う。とても、楽しかった。こんな道を歩んでしまって後悔はないけれど、悪いと思っている。この手紙を読んでいる人がいるなら、頼みがあります。ハインズに僕の剣を、ルナに僕の紅茶を、ローベルには、僕の部屋の適当な物をあげてください。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、お願いします。]
「…剣って、お前が勤務中に使ってるやつのことだな。紅茶は棚にしまってあるやつだろうな。確か香りがいいってルナが言ってたな。俺には…」
ローベルは部屋の整理を終わらせて、部屋から出ていった。処分するものとは別に、剣、紅茶、そして花や折り紙が挟まっていた本を一冊持っていった。
ローベルは、その後毎日、花や折り紙、手紙、そして写真を眺めていた。そして毎晩、小さな声で泣いていた。
騎士の影 やんまた @ymmysh
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