騎士の影

やんまた

第1話 善悪の区別

騎士団本部

午前10時を過ぎたあたり、

ニグリスは少し溜まった書類を整理している真っ只中だった。

すると後ろから足音がして振り返ると

先輩であり、バディであるローベルが話しかけてきた。



「あーあ…こんな書類溜めやがって…

うっわ面倒くさそうなのばっかじゃねぇかよ」


「…仕方がないだろ昨日は夜まで他の仕事がびっしりあったし、それにこの中には君がサボったものもあるんだから。」


「うわお前俺の尻拭い役かよ!おもろ!」


「ぶん殴ってもいいか…」


「やめろよお前ゴリラだからいてぇんだよ!」


「ゴリラって………失礼だな…」


「しゃーねーな…とりま1つ書類よこせ」


「そう言ってくれると信じてた。

じゃあこの一番厚みのあるやつで」


「容赦ねぇ………」


「早く終わらせよう。この後は北東での街の巡回があるから。

そこでついでに飯に行こう」


「お前のおごりな」


「君に金を使うなら街の子供に

お菓子を配ったほうがいい。」


「そりゃそうだろうな

あー、めんどくせぇな…」




ローベルは文句を言いながら

書類を一つ一つ片付けていった。


書類整理が終わり街の巡回中




「あ"ぁ…体中いてぇ…

これなら訓練してたほうがよかったわ…」


「猫背が原因じゃないか?」


「え、俺猫背だったか?」


「終始ずっと」


「どーりでいてぇわけだ……」


「というか真面目に仕事してくれないか」


「めっちゃ真面目だわ俺を舐めるな」


「書類整理サボった人に言われたくない」


「あーあそこに大荷物の爺ちゃんがー!」(棒)


「逃げるな」


「いや逃げてねぇから」



すると広場のほうから悲鳴が聞こえてきた。

ニグリスとローベルはすぐにその方向へと向かった。


広場では大柄の男が子供を3人、人質にしていた



「オラ!ここにいる全員金目のモン全部出しやがれェ!あともし騒ぐようなら…

このガキ共殺すぞォ!」




するとあっと言う間にローベルは広場にいる人の安全確保

ニグリスは大柄な男の背後にいた。ニグリスは赤い炎をまとった剣を首あたりで寸止めをしていた。



「降参してください。

あなたにはこれ以上動くことは許しません。」



すると大柄な男は焦り驚きながら笑って言った。



「テメェがその剣を俺の首にやる頃

このガキ共はとっくにお陀仏だ…はは…」


「…そうですか。残念です」



すると避難誘導を終えたローベルが戻ってきてあっと言う間に男に近づき峰打ちで気絶させた。


子供達を家まで送り、近くの食堂で休憩をした。



「あ、そういやお前今晩あいてっか?」


「飲みか?面倒だな…

酔っぱらってる君の世話とか」


「いや、今日は個人的なやつじゃなくて…

お前の同僚のルナが誕生日だろ?だからそれでみんなで飲もうって」


「あー…」


「流石に参加するだろ?」


「そうだな、行くよ」


「よぉし決まりだ。」



____________________

夜になり、騎士団本部の近くの大きめの居酒屋


「よぉルナ飲んでるかぁ?」


「はい先輩!

今日はお付き合いいただき感謝です!

それに…あの……ニグリスも参加してくれて

ありがとう」


「はは、祝の場には流石に参加しますよ。誕生日以外にも結婚とかそういうのあったら呼んでください。」


「……はい。」


「あー……じれってぇ腹立つな」


「ちょ、先輩しーっ!」


「なんだよ別にいいじゃねーか!

誕生日効果でなんかやっちまえよ!」


「無理言わないでくださいっ!!!」


__________________


騎士団は祝い事は全力で祝う風潮があった

おそらく騎士の皆が人を守りたい、笑顔にしたいという共通の思考があったからだと思う。

くだらないことで笑って、楽しくすごしていた。

どんな困難も乗り越えて善には助けを、悪には鉄槌を、それをずっと守っていた。



ある夜、任務が入った

緊急だったためすぐに動けるのが僕とローベルだけだった




「情報は?何人だよ?」


「複数人だが詳細は不明、

街で様々な物を窃盗した後女性一人を人質にして逃亡。」


「せめて人数がわかりゃな…」


「まあこんな暗い夜だし、無理もないだろう」


「この古い家か?今は人住んでねぇんだよな」


「そのはずだ。今から二手に別れよう。

挟み撃ちにして隙を狙う」


「わかった。気をつけろよ」




2人は左右に別れ

ニグリスは家の正面玄関、ローベルは裏口から家に突入していった。

いつものように2人はスピーディーに人質の救助と犯人を捕らえた



「これで全員か?」


「おそらくな」


「あー疲れたなぁ……ねみー」


「明日は昼から仕事でいいらしい」


「お、ラッキー」



ニグリスとローベルは応援を待つ間に色々話をしていた。

すると物陰から犯人の一人が襲ってきた。

なんとか2人は避けて体勢を整えた。

そして物陰に隠れていた奴らがわらわらと出てきた



「……流石に、この数は不利だな。」


「あの女性を守りつつ、

この狭い場所で戦うのは…僕も炎が使えない。

ローベル、あの人を安全なところまで連れて行ってくれないか?」


「…わかった。

古い家だし街から少し離れてるから、

多少燃えても問題ねぇだろ。」


「気をつけて」



ローベルは女性を連れていった

するとニグリスは炎を使い

少し時間はかかりつつも犯人達を制圧した。

中に仲間がいないことを確認し、

縄で拘束し終わったため周辺をみて回っていた。


すると外に倒れている人影が見えた。

近づいてみると、それはローベルだった。



「ローベル!?こんなところで、どうした?

その腹を貫いている剣は…なんだ…?

おい、ローベル?ローベルしっかりしろ!

おいっ!!」


「カハッ……ぁ……」



ローベルは脈が弱って入るものの呼吸はできていた。

それをニグリスは確認してほんの少し冷静になった。



「ローベル…………悪い、僕のミスだ…

僕が君に誤った指示をしたから……」


「あ、の女…は、にがし……たッ

背後からっ…2人、襲って………きて……

不意打ちを……くらっ……」


「っ!わかった、わかったからもう話すな!

腹を貫かれるのがどれだけ重傷なのか

分かっているのか…!?」


「だっから、女…逃がして返り討ちに………

してやった…ははっ……ざま、ぁだ!」


「君は………本当に……」


「ぐッ…お前の、せい…じゃねぇぞ………

だから、安心…………」



そのままローベルは気絶をした。

すぐに応援がきてローベルは病院に運ばれた。

医者が言うには重傷で、昏睡状態だという

いつ目覚めるかはわからないそうだった。

ルナも駆けつけてきた。

そしてニグリスの傍に行き、話しかけた。



「…ニグリス、先輩はなんだって?」


「…腹を貫かれて、重傷。意識が戻らないらしいです。」


「……そうなんだ…」


「…俺のせいなんですよ。

俺が他に敵がいるという考えを出せずに…

安易に逃げろとか…言ったせいなんです。」


「…それは、違う。

少なくともニグリスのせいじゃない!

それに、多分先輩だって…」


「…わかってますよ。

任務で疲れました。先に寮に戻って休んでます。」


「…そっか。無理しないでね…」


「はい、では明日は午後からなので。

おやすみなさい」



そう言い残し、ニグリスは帰っていった。

ニグリスは寮につくと倒れるようにベットに飛び込んだ。



「……はぁ、どうして皆僕は悪くないと言う……間違いなく僕のせいじゃないか、人を助けるのが善、傷つけるのが悪、騎士の心構えだ。

僕は今日、僕のせいでローベルを傷つけた。今日の僕は悪人だ。でも…俺は騎士で、多くの人を救ってきた。騎士は皆善………あぁ…わからなくなってきた。善悪………悪がローベルを追い込んだ。その悪である善がローベルをすぐに病院へ連れていった……悪がこの街から居なくなれば、ローベルはもう傷つかないし、善悪という言葉も不要になる…そのために俺がするべきことは…

悪を、消すこと。

あぁなんだ、簡単じゃないか。

今まで人を殺したことはないが…まあ、できるだろ。タイムリミットは、ローベルの目が覚めるまで…それまでに絶対にやりきろう。

大丈夫だ、俺は騎士の中では最強と謳われるローベルと同等と言われている。やれるさ。

となると、計画を立てないとな…」

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