侵食

Kei

侵食

後ろを振り返ると「無」がすぐ後ろまで迫ってきていた。

真っ白な闇。無の壁がじりじりと私の方に進んでくる。飲み込まれたらどうなるのだろうか。そう考えるより先に体は動いていた。逃げ出していた。ひたすら走った。


通りの先に古い建物があり、行き止まりになっている。左右の道に逸れている時間はない。私は建物に飛び込んだ。


中は暗闇に包まれていた。据えた臭いと不穏な空気に一瞬竦み、立ち止まった。ここにいれば無の侵食を防げるだろうか?馬鹿な考えだった。振り返ると入口がない。すでに白い断面と化していた。


軋む床を踏みつけ正面の階段を駆け上がり、途中でつんのめった。暗い空間が開いている。段が抜けていたのだ。その先に残った階段と踊り場が見える。


考えている時間はない。私は飛んだ。

段を掴もうと伸ばした手は空を切った。私は全身を叩きつけられ、そのまま無に呑まれることを覚悟した。


私は落ちていった。しかしその先に床はなかった。










              GAME OVER

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侵食 Kei @Keitlyn

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