侵食
Kei
侵食
後ろを振り返ると「無」がすぐ後ろまで迫ってきていた。
真っ白な闇。無の壁がじりじりと私の方に進んでくる。飲み込まれたらどうなるのだろうか。そう考えるより先に体は動いていた。逃げ出していた。ひたすら走った。
通りの先に古い建物があり、行き止まりになっている。左右の道に逸れている時間はない。私は建物に飛び込んだ。
中は暗闇に包まれていた。据えた臭いと不穏な空気に一瞬竦み、立ち止まった。ここにいれば無の侵食を防げるだろうか?馬鹿な考えだった。振り返ると入口がない。すでに白い断面と化していた。
軋む床を踏みつけ正面の階段を駆け上がり、途中でつんのめった。暗い空間が開いている。段が抜けていたのだ。その先に残った階段と踊り場が見える。
考えている時間はない。私は飛んだ。
段を掴もうと伸ばした手は空を切った。私は全身を叩きつけられ、そのまま無に呑まれることを覚悟した。
私は落ちていった。しかしその先に床はなかった。
GAME OVER
侵食 Kei @Keitlyn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます