一般人が考えた密室殺人の謎を名探偵たちが解き、またその芸術性を評価するという番組――密室大戦。
まず、その斬新なアイデアに驚かされました。
素晴らしい発想だと思います。
名探偵が四人出てくるのですが、どのキャラも個性があって魅力的です😊
評価項目が不可能性・難解性・即時性・ご都合主義性・論理性と五つあるのですが、名探偵たちの評価はバラバラで、各々の性格がしっかり出ているのがとてもよかったです。
一つ目の密室はスポーツ複合施設のプールで、水泳選手の水無月葵が死んでいたという事件。
しっかりと事件が起きるまでの過程が描かれていて、トリックも作り込まれているし、真相に意外性もあって、総じてクオリティの高いミステリー作品でした。
ちなみに、私は犯人もトリックもわかりませんでした😓
解くのはかなり難しいと思います。
あなたも是非、この謎解きに挑戦してみてください。
生放送の推理系バラエティ番組『密室大戦』。それは視聴者から募集し、最終選考に残った4つの密室を審査員が評価するというものだ。評価項目は不可能性・難解性・即時性・ご都合主義性・論理性の5点。そして審査員は個性豊かな“名探偵四天王”。優勝賞金の342(みっしつ)万円はいったいどの密室が獲るのか?
まず発想の妙に目を奪われました! そしてただ密室を提示するのでなく、ドラマ仕立てでその成り立ちを語り、バラエティらしさを演出しつつミステリー的な仕掛けを散らす巧みな構成に引きずり込まれました!
加えて出演料欲しさに姉の身代わりとして参加した素人探偵にして主人公、赤瀬川芽衣の視点が読者を代行している点――彼女といっしょに謎解きを楽しむ感じ、これがまたすばらしいのですが。それを阻む名探偵四天王同士たちがまた外連味盛り盛りで、芽衣さんと物語を混沌へ陥れてくれるのですよ。本当にキャラ力が高いのです!
さあ、第一の密室を巡る評価はいったいどうなる!? 芽衣はちゃんと姉の身代わりを務められるのか!? 結末はご自身の目で!
(「ダニットという謎」4選/文=髙橋剛)
※第一編までを読了した時点での感想です。
さて、上に書いた「ガチ」の意味について、辞書には以下のように記されています。
『真っ向勝負、小手先ではない正面からの本気のぶつかり合い、などの意味で用いられる表現。』
本作には、これらの表現がそのままピタリと当てはまります。
なぜなら、本作はロジックによる謎解きを追求する姿勢において、一切手抜きのない渾身の力作であるからです。
密室トリックについては、少しネタバレ気味にはなりますが、文系読者にとってハードルが高いかもしれません。
しかしながら、犯人を特定する過程=ロジカルな推理、において突出した成果を上げています。
100%ロジカルな推理小説というのは今だに存在していない(あるいは今後も存在しえない)と思いますが、作者はその遥か高みを目指そうとする意志を、実作を以て表現しています。
しかも、19歳という若さで。空恐ろしい限りです。
本格ミステリに少しでも興味のある方は、是非とも作者の本気と向き合ってみてください。
また、本格ミステリにまったく興味が持てない方は… そんな方にも「世の中には、こんなにもロジックにこだわる特異な形式の小説があるんだなあ」ということを発見していただきたいです。
若き才能のほとばしる本格ミステリ、是非ご一読ください。