第2話 煙草

 トラックの荷台に少年兵を乗せてブートキャンプへ走り出した。

 少年たちの面持ちは暗く絶望している。

 砂利を踏むタイヤのせいで車体が小刻みに揺れる。

 荷台の壁に腰をもたせかけ宙を見ていたヴィロンデ。前髪が靡く。

 すると、ひとりの少年が煙草をポケットから取り出した。

「なぁ、こっそり吸おうぜ――」

「ライターはあるのかよ」

 興味津々に煙草を持つ少年を囲む。

「兵士のロッカーから煙草を盗むとき、ライターも拝借したよ」

「すげぇよ。お前。俺、煙草なんて初めて吸うぜ」

 金髪少年が煙草を咥えて火を先端に近づけるも点かない。

 繰り返し火を点けようとしたが、段々苛ついてきたのか、煙草を折った。「こいつ湿気っているんじゃないのか?」

「――貸せ」

「あ?」

 ヴィロンデが煙草を折った少年を睨みつける。

「煙草なんて点けられるだろ」

「じゃあやってみろよ」眉根を寄せて反感を露わにする金髪少年。

 煙草を奪い、咥えて火を点ける。それから紫煙は悠々と昇った。

 目を丸くする少年たち。驚きからか唖然としているのだ。それに対してヴィロンデは少し嘲笑を見せた。

「すげぇ。大人だな」

 そう言われて誇らしい気持ちになったあとで、何が大人だよ、自分はまだまだ子供だ、という自尊心が可逆される。少年兵として徴集され、これから戦争で散々使い回されるだろう。そんな奴が「大人」なわけが無い。勘違い甚だしい。

 揺れが止まった。トラックから降ろされる。

 ここはどこなのだろう。右には密林があり、左には住居群がひしめく。

 心細かった。だから、つい口走ってしまう。

  

 母親の名前を――

 





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