秒読みサウンドウォーク—川崎駅前、喉が鳴る夜—

mynameis愛

第1話

【配役】

 慎也(しんや):番組ディレクター。最短距離で効果に届く段取りを選ぶ。

 莉愛(りあ):新人パーソナリティ。変化にすぐ馴染み、必要な時は言葉を引く。

 幸輝(こうき):サブディレクター。疑問をその場で言語化し、穴をふさぐ。

 里帆(りほ):音響。観察から先回りで支援し、身近な物を音に変える。


【時間・場所】

 2025年8月25日(月)18:54—22:10

 川崎駅前アーケード周辺/ラジオ局第3スタジオ/商店街「星丸書房」許可内収録


【音の表記】

 [SFX:効果音]/[BGM:音楽]/〈定位〉やdBの指示あり。台詞の合間に短いト書き。


――――――――――――――――――


(スタジオ。ON AIR直前。ブース内は明かり控えめ。ガラスの向こうで里帆がフェーダーに指を置く。幸輝は進行表に蛍光ペン。慎也はカウントダウンをセット。マイク前に莉愛。)


[SFX:空調の低い唸り/時計の秒針/紙の擦れ]


慎也:

 残り六分。狙いを一行で。——「音で歩かせる」。説明は足し算しない。音で作って、言葉は端を整える。


莉愛:

 了解。歩幅三十センチ、靴裏は薄め、石畳で速歩。——[SFX:こつ、こつ、こっ(試し打ち)]


里帆:

 靴音は中域を少し細く。[BGM:きらめき系マリンバ−24dB→−18dB]で明るさだけ薄く添える。


幸輝:

 質問。八百屋の温度感、どう差す?氷と紙札の揺れで足ります?


慎也:

 足りる。落差を作るためにミストを挟む。里帆、氷袋はここ。[SFX:ザラッ、ザララッ] 札風は紙やすり。[SFX:さらっ]


莉愛:

 では合図で「三十二度、風は左から右」と短く入れます。


慎也:

 中継ルート復唱。駅改札→左へ百八十→アーケード入口→右手に八百屋→十メートル先、靴修理。


幸輝:

 復唱完了。質問、靴修理はトンカチだけだと平板?


里帆:

 革のきしみを足す。[SFX:ぎゅ、ぎゅ→カン、カン] 手元にバラ釘の音も用意。


慎也:

 三十秒前。……(全員を見渡して)黙ってても伝わる瞬間が来る。それを逃すな。


[SFX:カウントダウン電子音×3→ON AIRランプ/カチッ]

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