第13話 親友に尾行されるおもちちゃん

翌日の昼休み。屋上でおもちに会った稲見が嬉しそうに抱きついた。


「おもちちゃ~ん!会いたかったよ~!」

「心配かけてごめんね」

「大翔君に連絡してなんで私には連絡しなかったの?」


不満そうに頬を膨らませる。


「ごめんね」

「いいけどさぁ……次からは私に一番先に連絡してね」

「うん」

「じゃあ食べよっか!」


稲見がおもちのお弁当をチラッと見ると、不思議そうに尋ねる。


「最近おもちちゃんのお弁当って大翔君のお弁当に似てるよね?」

「「……!」」


二人がピクッと反応する。


「ほ、ほんとだ……偶然だね」

「そ、そうですね……」

「よく見たら内容も一緒じゃない?」


大翔は冷や汗をかきながら、おもちの方を見る。


「もしかして……最近もずくチャンネル見てる?」

「えっ?」


話合わせて!という視線アイコンタクトを察して返事する。


「そ、そうです!最近ハマってて……」

「やっぱり?俺の執事もそれ見ながら弁当作ってるからさ」


ハハハ……と演技臭がする笑いで誤魔化す。


「な~んだ!一緒のチャンネルだったからなんだ!私も見てみようかな?」


納得した稲見が購買で買ったクリームパンを食べる。


(何とか誤魔化せた……)


執事には申し訳ないが、内容を別にしてもらおう……



放課後。テスト1週間前になり、図書室で勉強会をすることになった。


「二人共ありがとう!私本当に数学できないからさ」


稲見が大翔とおもちに感謝する。


「おもちちゃんはバイト大丈夫なの?」

「テスト前はお休みを頂いているので……」


三人は教科書などを開きながら勉強をし始める。


「おもちちゃん。この問題わからないんだけど」

「まずどういう式になるかを考えて……」


大翔はおもちが稲見に教える姿をじっと見つめる。


「大翔君?私……間違ったこと言いましたか?」

「えっ?」

「私を見ていたので……」

「いや……その……後で質問しようと思ってたからさ」

「そうですか。これが終わったら聞きますね」

「頼むよ」

「おもちちゃん頼りになる~!」


大翔は再び勉強に戻るが、少し経つとおもちを見てしまう。


(なんでだろうな……集中できない……)

「大翔君。どこがわからないんですか?」

「え、えっと……この問題なんだけど……」

「あぁ~……ここ難しいですよね。まずイオンについて何ですけど……」


おもちが大翔の教科書を使いながら説明する。


(近い……なんかいい匂いもするし……)


大翔のドキドキが止まらない。


「……って考えたらわかると思います」

「えっ?」

「すみません……説明難しかったですか?」

「そうじゃなくて……ごめん。ボーっとしてた」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫。申し訳ないけどもう1回説明してくれる?」

「はい」


稲見は二人をじっと見つめる。


(最近仲良いなぁ……あの二人……私より距離感近い……)


あそこにいるおもちちゃんが私だったらなぁ……



勉強会が終わり、学校を出ると稲見は二人と別れる。


「じゃあまた明日!」

「おう」

「また明日ね」


稲見は歩いて角を曲がると、足を止めて二人の方を覗き込む。


(よし……)


視界に入る距離を保ちながら二人を尾行する。


(大翔君っておもちちゃんのこと好きなのかな?)


最近二人きりでいることが多いし、稲見への態度とおもちへの態度も違う。


(おもちちゃんも大翔君のこと好きだったりするのかな?)


だとしたら……私は……どうすればいいのだろう?そう思うと足を止める。


(ううん。まだ決まってない。告白もしてないのに諦めるのは早い!)


稲見は二人の後をつけていると、衝撃の光景を目の当たりにする。


(え……?)


それは二人が大翔の豪邸に入っていくところだった。


(どういう……こと……?)


稲見は受け止めることができず、真っ白になった。

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