19.大団円! 『ごくらく★生徒会』!

「いやぁ〜。私は、みかる氏なら必ずやってくれると信じていましたよ」

「じゃろう⁉ 阿弥陀如来よ! なんといったって、ワシの自慢の初孫じゃからな!」

 生徒会室。

 お茶を飲みながら、私たち生徒会メンバー4人は、阿弥陀如来サマと壱おじいちゃんが楽しげに話すのを見ていた。

 邪神を封じたあのあと。

 全校生徒たちは、みんな無事に正気を取り戻し、ケン校長先生は、みんなを救おうと必死な私たちの姿に感銘を受け、そしてまた、邪神は人の心を惑わす悪魔だと信じたようだった。

 きっとケン校長先生の奥さんも、極楽浄土で、ケン校長先生が悪者になりきらなくて安心してるよね……。

 【あみだぶつ】の仕事と、邪神のこと。

 みんなに知られなかったのかって?

 そこは、神様の力っ!

 全校生徒ゼーーンインの記憶を、阿弥陀如来サマは、自分の1日のパワーをほぼ使い切って消しちゃった☆

 もちろん、まゆうちゃん、りっちゃん、あーりん、ねいろちゃんの記憶も。

 だから、この一連の騒動を知っているのは、私を含め『ごくらく★生徒会』のメンバー4人だけ。

 阿弥陀如来サマ、さすが神様っ!

「それにしても、壱よ。お前は一体何をしたというのだ。この役立たずめ。ただオロオロしておびえて宙に浮かんでいただけではないか!」

「ええーい! うるさいうるさーい! 毎回毎回、ワシの名を呼ぶ際、壱よ、とえらそうに呼ぶなああ!」

「お前は壱ではないか! 極楽浄土に私が会いに行った時、クッキーとゼリーを心底幸せそうにもぐもぐと食べていたあの壱だ!」

 あ。今の阿弥陀如来サマの言葉で、私は思い出した。クッキーとゼリーは、昔から壱おじいちゃんの大好物なんだよね。

 阿弥陀如来サマと一緒に、始めて極楽浄土から地上へと降りてきてくれた時……お供え物として置いてあったやつ、食べちゃってごめんねっ! 壱おじいちゃん!

「大体お前は……」「なにおう!」と、阿弥陀如来サマと壱おじいちゃんがまだやり合っている。

 せととゆゆりん、それに一心くんが、「まあまあ」となだめつつも笑っている。

 私が孫で、誇らしげな壱おじいちゃんを見ていたら──胸がジーンと熱くなって。思わず涙が込み上げてきた。

 いけないいけないっ! また泣いちゃうとこだったよ! 私ったら、最近泣き虫だなぁ……。

「みかるさん?」

 となりに座っていたゆゆりんが、首をかしげて、少し顔をのぞき込んできたものだから、私はあわてて涙をこぶしでぬぐった。

 それから、見せつけるようにうでの腕章をぐいっ、とまくる。

「なっ! 泣いてなんかないよ! みかるは元気だもんっ!」

 ◇

 その日の夜。

 私は、お風呂に入ってから、ベッドで眠る前、今日のことを思い出してふふっと笑っちゃった。

 阿弥陀如来サマと壱おじいちゃんは、疲れたのか、ベッドサイドで犬とネコのぬいぐるみ姿でスヤスヤ眠っている。

 今日はいろんなことがあった。

 マイスクールバッグ、納豆風呂事件。

 全校生徒、邪神と、(ほんの少しだけケン校長先生のせいで)狂喜乱舞の大騒動。

 そしてその後、生徒会室でみんなでお茶を飲んで笑い合ったこと。

 明日には、またみんな、いつもの日常に戻れるといいなぁ……。

 うとうとと意識が沈みかける。そして──最後に思い出したのは……

 ──「強がんなって」

 頭の上にポン、と置かれた、せとの手のひらの感触。

 ぶわっ、と急激に、意識が現実世界に舞い戻った。

 なっ! なに思い出してんの、私!

 なんでこんなシーンをっっっ!

 それで顔を赤らめるってまじか!

 ちょっとせとが優しいからって……

 ありえない! ありえないありえない!

ゼッタイありえないから、ありえないっ!

 ガバッ、と勢いよく布団にもぐりこんだ私だったけれど。

 せとの声変わり寸前の少し低音のボイスが、意識すればするほど、頭の中でなんども再生されて消えてくれない。

「〜〜〜っ!」

 その夜は──、せとが私を呼ぶ声とか、色々思い出してきて……なかなか寝つけなかった。

 ◇

『桜望中生徒会』……別名、『ごくらく★生徒会』。

 やっぱり私は、せと、ゆゆりん、一心くん。このメンバーがだーい好き♡

 もちろん、あんなことがあったけれど、桜望中のみんなも。

 騒動の翌日、学校へ行くと、陽月ケン校長先生が、私にまつわる邪神のウワサを、上手く生徒たちに説明してくれたみたいで。誤解だったとわかってからは、みんな次々に、私の机まできて謝ってくれた。

 生徒会室に直接謝りに来てくれる子までいたんだよ。

 えへへ。

 そんなの、許すに決まってるよねっ。

 そして生徒たちは、私が桜望中の生徒会長で良かったって、私の笑顔がほんとは必要なんだって、そうはっきりと言ってくれた。

 邪神に操られていた時、私たち『ごくらく★生徒会』が懸命に助けようとした時の記憶が、少しは残っているのかも……?

 阿弥陀如来サマは、引き続き、私には【あみだぶつ】の仕事を手伝ってほしいと言った。しぶしぶ了承した私(と生徒会メンバー)。波乱の日々は、これからもまだ少し続くみたい。

 でも。どうか、これからも楽しい毎日でありますように。みんなが笑っていられますように。

 なにがあっても、四人のキズナは壊れない! そう確信できる。だって私たちは……泣く子も黙る、【最強生徒会】なんだもん!

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