美少女がえっちな目に合う同人RPGに転生した俺はノーダメクリアを目指す
カラスバ
第1話
同人ゲーム、あるいはインディーゲームというのは様々あるし、その中にはいわゆるエッチなシーンが含まれるものも多数存在する。
「テリルのアルケミスト」というゲームもまたエッチなシーンがあるタイプの同人ゲームであり、しかしこのゲームの醍醐味はどちらかと言うとゲームの方にあった。
いや、確かにエッチなゲームとして「使える」シーンはたくさんあったのだ。
ただそれ以上にゲームの「ゲーム」のところが素晴らしくて多くのプレイヤーを熱中させた。
やりこみ要素――えっちな内容以外のやりこみ要素である――は当然のように充実しているし、ゲームのターン性なバトルシステムも簡単ながら戦略をしっかり考える必要性がありやりごたえがある。
更に言うとゲームに登場するアイテムのフレーバーテキストも面白く、ちょっとした先の展開の伏線にもなっていたりした。
更新で定期的に新しい内容のクエストが実装されたり、何ならヒロインが追加されたりもしたので、このゲームを作った人は本当にゲームが好きなんだなと素直に思えたし、実際俺も普段はしない高評価のレビューを購入したサイトに書き込んだりもしたのである。
とはいえ、と言って良いのかは分からないが。
このゲームに関しては「エロが邪魔」とか言われたり、「布教の上でエロがあるのが本当に困る」とか言われたりしていた。
レビューで「エロがある」からなんて理由で最大点数から一個落とされているのを見つけるほどだった。
そのためゲームが同人ダウンロードサイトで販売されてから数か月したのちに本当に全年齢版が販売される事となったが、アイテムのフレーバーテキストに若干の変更があったりもしたため、結局全年齢版に関してはそこまで購入される事はなかった。
薄情だが、ユーザーなんて基本的にそんなものである。
そんな訳で俺もまた数多くいる「テリルのアルケミスト」プレイヤーと同じく最初の周回ではわざとシーン回収のために敗北した後はアイテムを回収するために雑魚キャラを倒したりマップを周回したりしていた。
当然、レベルはしっかりと上げて強化してからなので負けたりはしない。
ガチ勢は「ノーダメクリア」とかをチャレンジしているらしいが、流石にそのレベルまでガチるのは無理だったのでせいぜい一度も敗北せず、つまり一度もエロシーンを踏まずにクリアするのを目標に遊んでいた。
「どうしたの? なんかぼーっとしているけど考え事?」
……と、そのように過去に遊んでいたあのゲームの事について改めて考えていると、その思考に割り込んでくるように声が聞こえてきた。
顔を上げるとそこには白色のロングヘアに白い瞳をした少女……テリルがいた。
肌も白いので本当に真っ白な少女である。
ちなみに彼女がどうしてそんなに真っ白なのかについては、ゲームのアイテムのフレーバーテキストで明かされていた。
即ち、彼女は「錬金術で作られた人造人間」である、と。
なんでゲームの世界にいる彼女が俺に話しかけているのかという話だがむしろこれは逆で、つまり俺の方がゲームの世界にいるのである。
転移、ではなく転生。
ゲーム世界に転生してしまった俺は、何故かテリルの幼馴染として今を生きている。
年齢はお互いに18歳。
なんか最近の状況的にゲームのストーリーが始まるらしい雰囲気が漂っているが、ゲームの登場人物はみんな成人していますというのはやはり方便だったんだなと思いもした。
そりゃそうだと言われればそれまでだったが。
あるいは俺が転生したのはあくまで「ゲームの設定にそっくりな世界」でしかなく、そのためゲームの設定と多少齟齬が発生しているという可能性もあるが、それはさておき。
この世界にも、ゲームのそれと同じく危険な存在は多数ある。
危険というか、エロゲ的にやばいと言うべきか。
例えばどこそこの誰それがモンスターに襲われたとか、巨大植物に襲われたとか、野盗に襲われたとか……襲われ過ぎじゃないか?
それでもなんだかんだで俺達が住んでいる町は何事もなかったかのようにしっかり動いているのだからよく分からない。
ちなみに襲われるというのは当然……これに関しては男女平等です。
意味深。
……ヒロインであり主人公である彼女、テリルはこれからこの町を中心にして行動を開始する。
目的は、錬金術師として賢者の石を作る事。
それはあくまで知的好奇心からの目的であったが、その過程で彼女はいろいろな出会いを経験し、そして真の答えを得る事となる。
ちなみにその途中で何度もエッチな目に合う訳ですが。
「……?」
きょとん、とじっと見つめる俺の事を見つめ返し首を傾げてくる。
純粋無垢で、まさに真っ白な紙のような女の子。
彼女を汚すわけにはいかない。
幼馴染とか関係なしに、彼女の事は守らなくてはいけない。
故に俺――ノーダメクリアを目指します。
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