河内
河内
賊を北に追い上げる最中の劉秀、馮異の報告と李軼の手紙を読み終えて、目を閉じて、指で
劉秀、口に出して曰く「生きるも死ぬも共にしようと約を結び、
約を破ったのは李軼、独り昆陽から宛に戻って、遂には、兄劉縯を害す。劉秀、筆を
回覧すれば、
劉秀の返書を受け取った馮異、これを読んで深く
洛陽の守将、朱鮪、果たして李軼の書の中身を知るや烈火の如く怒り、人を遣って李軼を刺殺させる。これによって洛陽の城中、内紛を生じ、劉秀の軍に多く降る者有り。朱鮪、ついに劉秀と矛を交えるしかないと覚悟を決める。しかも、河内には劉秀本人は居らず、今を逃す手はない。そこで朱鮪は
その朱鮪、先ずは洛陽の真北、
馮異、皇帝劉玄と戦うことを考えていた。道義上、劉秀自身は自分の主上である皇帝とは戦えないが、何れは正面から戦わなければならない、と言う相矛盾した立場に在った。馮異と関中に入った鄧禹は、その意を汲んで、自らの裁量として、劉玄と緒戦を開くことにした。馮異の場合、攻められた故に戦うなら、皇帝軍と戦ってもまだ非難されることは無いと、洛陽の主将朱鮪が否が応でも兵を発すように、また洛陽城を攻めるよりも、城から出てくる兵を待ちかまえて撃つのが良策である故に、今まで挑発してきたのである。
馮異、既に朱鮪らがどの様に河内郡を攻めるかを検討していれば、平陰攻めは幾つかの想定の一つに過ぎぬ。よって、馮異は配下の
一方、朱鮪の布告文が届けば、寇恂、撃って出るにわざわざ布告文を出すは、河内郡を揺さぶろうと欲するからで、実戦力は三万を割っていようと、直ちに軍を整え
寇恂曰く「温県は河内郡の
寇恂、遂に馳せてこれに
さあ、如何ならんと寇恂が
今だと、寇恂、
蘇茂の軍、前後を分かたれ、北は寇恂の軍、東は河内郡諸県の兵、西は馮異の軍となれば、破れた兵は南、黄河を渡って逃げるしかない。立て直す
追討軍の追う事急であれば、ついに賈彊を
寇恂、馮異に曰く「これで主上が、逆賊呼ばわりされることは有りませぬな」
馮異、首を振ると返して曰く「主上の留守に洛陽が襲いしが、太守殿が懸命に守られた。我の功はその助力のみ」
寇恂、その言に笑い、つられて馮異もまた笑う。
男は目を見開くと、ぽつり独言して曰く「虎を
しかし、それから黙って幾つか史書を開いては巻き、開いては巻き。子細に見る。男は嘆息して曰く「時の権勢の至る故か、何れも悪し様に書かれることは無い。果たして、我が思った通り、臣下が君主の立場を汲んで事に及んだか、それとも、この君主が密命してそうさせたか」
しばらくじっと机を見ていた男は、笑って曰く「史家を調って名目から離す計であるな」と、筆を執ると、墨を含ませ、二文字をいつもの竹簡に書き加える。
男は筆を置いて曰く「山、確かに山である」と、瞑目して復た思いに耽る。
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