Ep.2 ダークワールド
俺は今世紀最大の大博打をして、怪しげな路地に入ることに決めた。
初めの頃は未知の世界への冒険のようで楽しかったが、俺はすぐにその選択を後悔した。路地の向こうは見えており、足も進んでいるというのに、なぜか一向にたどり着けないのだ。謎の力が働いて少し進んだら後ろにワープしているみたいだった。
こんなに奇妙なことが起きているのだからさっさと引き返して家に帰るべきなのだが、ここまで歩いてきたんだし、あっちに何があるのか突き止めるまで帰れない。ここで帰るやつは、それこそ大馬鹿者ってものだ。
この思考は本当に俺のものだったのだろうか?今思い返すと疑問しかない。
ようやく向こうへたどり着いた。だが、そこにあったのは俺の目を疑うものだった。
黒い魔法陣があった。半径は50cmくらいでゆっくりと回転しており、微かに点滅している。それだけでも怪しさ満点なのに、これがただの落書きや映像ではないと示すもう一つの事実があった。
なぜかこれを見ていると体が勝手に動くのだ。意識してこの場にとどまっていないと、足が勝手に動いて魔法陣に触れてしまう。俺は操られているのか...?
もうたくさんだ!俺は踵を返して、異質すぎる魔法陣から離れようとした。
その時だった。
<私に触れろ>
最初はただの空耳かと思った。しかし、何度も耳元で同じことが聞こえるのだ。唱えられるごとに音がはっきりしてきて、これが空耳でもなければ俺の頭がおかしくなった訳でもないことを悟った。
もう一度魔法陣の方へと視線を向けた。この魔法陣からはただならぬ気配がする。やはり危険だ。逃げよう。
<お前は来るのだ。今すぐ>
声は苛ついているようだ。呆れたような声で囁かれた。頭の中で黙れと大声で怒鳴りつけ、今度こそ帰ろうと足を動かした。
しかし、勝手に足が魔法陣へと進んでいくのだ。俺は必死で抵抗した。何が起きるかわかったものじゃない。しかし脳の命令を受け付けない足はとうとう魔法陣へと触れてしまった。
***
地獄だ。俺は真っ先にそう思った。
俺の目の前に広がっていたのは、一言で表すならば
俺が立っていたのは森で、不気味に曲がりくねった木々に囲まれている。空には満月が二つあり、片方は血のように赤く、もう片方は不自然なほど真っ白だ。草木はトゲトゲしていて、実っている果実は紫色の毒々しい色だ。地面は少し湿っていて、濃い緑で硬い草で覆われている。そして、辺りにはうっすらとミントのような独特な匂いが漂っていた。
時間は恐らく夜なのだが、星は月以外全くなく、漆黒に染まっている。俺以外には誰かいる気配はない。
俺はパニックになり後ろを振り返った。いつもの世界に帰るための魔法陣があるかもしれない。
よかった、あった。後ろには白色の魔法陣があり、さっき見た黒色の魔法陣と同じように点滅しながら回っている。
俺は安堵し、魔法陣へと戻ろうとした。
しかし、俺は完全に油断していた。こんなに危険そうな世界なんだから、現実世界で言うところの熊みたいな
ガンッッ
背中に鋭い痛みを感じた。肺の空気が抜けていき、心臓が鼓動するたびに激痛が体全体を貫く。俺は地面に崩れ落ちた。
「ヴルルルルル」
聞いたこともない邪悪な笑い声がした。考えられないほど絶望的だがこんなときにこそ冷静にならないといけない。俺は必死に状況を整理した。
俺は、……剣か?とにかく刃物で背中をざっくりと斬られた。そして地面にぶっ倒れている。あまりの痛みに立ち上がる余力も残っていない。
つまり俺は
終わった。
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