クロノリフト:時の断片
@Nuno_
第二章 — 時計の残響
封印された時間
第1話:封印された時間
カエルは、父が消えたあの日以来、書斎の扉を二度と開けなかった。
埃にまみれた棚、破れた図面、そして中央の机には、未完成の時計の設計図が広がっていた。
それは、時間を操るための装置——父が命を懸けて追い求めたものだった。
「これ…父さんの…?」
彼の指が図面に触れた瞬間、“カチッ”という音が棚の奥から響いた。
隠し扉が軋むように開き、黒い箱が姿を現す。
中には、古びた懐中時計が一つ——まるで時を越えて待っていたかのように。
彼がそれに触れた瞬間、空気が震え、時計の針が逆回転を始めた。
部屋の音が消え、静寂の中に父の声が響く——
「カエル。もしこれを見つけたなら、もう後戻りはできない。
時間は崩れ始めている。君だけが…止められる。」
胸が締め付けられる。
父が家族を捨てた理由は、これだったのか?
時計の裏には、古い文字で刻まれていた。
『運命を記録する者へ』
その瞬間、壁に亀裂が走り、青白い光が漏れ出す。
時空の裂け目——それは、彼を過去へと引きずり込もうとしていた。
「待って…まだ何も…!」
だが、時計は彼の手の中で脈打ち、選択を迫っていた。
進むか、壊すか。
父の遺産を受け継ぐか、それとも拒絶するか。
カエルは、震える手で時計の蓋を閉じた。
そして、静かに呟く。
「…俺が決める。時間に支配されるのは、もう終わりだ。」
その瞬間、時計が眩い光を放ち、彼の周囲が歪み始めた。
床が崩れ、彼の体は青い光に包まれながら宙に浮かぶ。
——そして、彼は空へと吸い込まれた。
次に意識が戻った時、彼は高空から落下していた。
風が耳を裂き、景色が回転する。
遠くに街が見えた——だが、空の色も建物も、何かが違っていた。
「っ…!」
彼は地面に激しく叩きつけられ、土煙が舞い上がる。
時計が手から離れ、転がっていく。
クロノリフト:時の断片 @Nuno_
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