しあわせものたち

はるむら さき

わたし


おかえりなさい。お疲れさまでした。


あ、帰ってきたら玄関で脱いだ靴を揃えて。

冷蔵庫開ける前にちゃんと手を洗ってうがいして。

まって、氷を手で直接つかまないで。

ああ、こんな真夏に牛乳を置きっぱなしにしちゃ駄目だよ。腐っちゃう。

ねえ、もっと椅子をひいてテーブルにくっついて食べないと、こぼすから。ほら。

こぼしたものはちゃんと拾って。ああ、ティッシュじゃ駄目だよ、味噌汁なんだから、濡れた布巾で拭かないと。

食べ終わったら、テーブル拭いて。

まって。寝室に戻る前にもう一回、手を洗って。味噌汁、拭いて手が汚れてるでしょう。


「おまえは神経質すぎるんだよっ!!!!」


耳に痛い大きな音を立てて、思いきりドアを閉められる。

大丈夫、いつものこと。大丈夫、大丈夫。

でも、そうなの?

私が神経質すぎるの?

あなたのやることすべてを肯定して、あなたの失態はすべて私が何も言わずに対処すればいいの?

みんなそうなの?

「みんな」って、でも誰? その人は私の代わりにあなたの世話をしてくれる人?


…ああ、よくない。また色々と考え込んじゃった。悪い癖ね。笑顔、笑顔。ほら笑顔を作れば、こんなに泣きたい時でも楽しくなってくるんだから。

繰り返す毎日に閉じ込められて、生きる意味なんか見つからなくても、私は幸せ。

だって毎日、こんなに笑顔で生きているもの。

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