はじめの一歩

勇者になりたかった。

母が寝物語で聞かせてくれた英雄譚が大好きだった。

特に『始まりの勇者』と呼ばれるアダムの話が特に好きだった。


僕は剣を振った。

毎日毎日剣を振った。

第一線冒険者だった父さんの教えもあってか、月ごとに成長を感じた。

僕は剣を振った。

父さんが亡くなり、悲しみに暮れる母と共にある国の僻地で暮らすことになっても・・・僕は剣を振った。

父さんの代わりに僕が勇者になるために・・・

僕はより多く剣を振るった。

が本を読みふけっているときも傍で剣を振った。


僕は勇者になりたい。


そして、時が来た。


今日、僕は、グラム・ルベア・ティールは15歳になった。

この日のためにためてきた少ないお金とここから始まる冒険への挑戦心をもって家を出る。


「お母さん、行ってきます」

「本当に行くのね?」

「行くよ」

「そう、血は争えないわね。・・・でもね、グラム。約束して。必ず、絶対に帰ってきてね」

「うん。わかった。絶対にここに帰ってくるよ」


今日まで何度も何度も反対していた母を押し切って僕は玄関の扉を開け、家の敷地『外』に出た。


「待ってたよ。グラム。」


外で待っていた僕の、イサベル・カイノ・カレンティアが僕に声をかける。


「行こう。イサベル」

「うん」


僕のかけた言葉にイサベルは薔薇のような笑顔をして返事をしてくれた。


今日この日、僕の冒険が始まった。

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英雄譚のピリオド 蒼華 @tengenmusouryuu100

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