第22話 いじめは許さない

 内田くんは一階に降り、旧校舎に向かっていく。旧校舎の廊下をまっすぐ進み、やっぱり技術室に入った。ここ、いつもカギが閉まってないのかな。


「おい内田! おせーぞ!」

 中から声がした。あいつだ。先週の体育の時、内田くんをからかっていたやつ。


「持ってきたんだろうな?」

 内田くんの声は小さすぎて聞き取れない。

「おい、これだけかよ!」

「せっこいな」

「やっちゃえばー」


 内田くん以外に三人いるみたい。


「うぐっ!」

 ドスっとにぶい音がすると同時に、内田くんの小さな悲鳴が聞こえた。

 その瞬間、ユーリが技術室にけ込んだ。


「おいお前ら! 何やってんだ!」


 いきなり姿見せちゃった。イリュなんとかはかけてるだろうけど。


「なんだお前、転校生じゃないか!」

「転校生で悪いか⁉」

「ちょっと見た目がいいからってカッコつけてんじゃねえよ」


 ああ、それはウソの姿なんだけどね。


「いじめはカッコいいのか?」

「内田! 助け呼びやがったな!」

「よ、呼んでないよ……」

 内田くんが弱弱しく答えた。

 うーん、彼がソーサラーとは思えないよね。


「オレも呼ばれてないぜ!」

「うるせえ!」


 いじめの首謀者しゅぼうしゃらしい男子がユーリになぐりかかった。


 危ない!

 もちろん彼がだけど。


 ユーリはひらりと体をかわし、なぐり掛かったこぶしがくうを切った。勢い余った男子の体をユーリが後ろから押し、彼は床にひっくり返って転がった。


「いたた……今のなんだ?」

「魔法かな?」

 ユーリがほくそ笑んだ。


 はは。魔法じゃないよね。やっぱり体術とかも学んでるんだ。


「く、くそ、ふざけんな。なんなんだよ、お前」

 ほかの二人はびっくりして固まっている。

「もうやめろよ、いじめなんて」

「う、うるさい!」


「うわあああああ!」

 しゃがみこんでいた内田くんが突然、叫びながら扉の方に走ってきた。私はあわててよけようとしたが、内田くんの方が私をよけた。

 あれ? 私のこと見えてた? 内田くんはそのまま廊下を走り去った。


「あ! まずいな。内田、行っちゃったよ」

「おい転校生。オレのことは無視かよ」

「え? まだ相手してほしいの?」

「あ、いや……」

「そっちの二人もやる?」

「あ、ああオレはいいや」

「はは、オレも」


「なんだ。根性ないな。でもお前らにもちゃんと反省してもらわないとなあ……」


 その時だった。


 ガシャーン。

 突然、大きな音がして技術室の窓ガラスが割れた。

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