第20話 親友の秘密

「ああ、食った食った」

 ユーリは部屋の床に仰向けにひっくり返っている。

「ユーリ、ホントそればっかり」

 きょうも夜は作戦会議だ。


「あ、そう言えばさ、桜庭、オレのこと、いつの間にか呼び捨てにしてる」

「え? ああ、気付いてた?」

「そりゃそうだろ。そう呼べって言ったのオレだし、ちょっとうれしかったし」

「そうなの?」

「ああ。くんとかつけられるとさ、よそよそしいじゃん」

「でも私、不思議な感じがしてる。知り合ってこんなちょこっとの間で人を呼び捨てにするなんて初めてだから」

「オレは会ったその日から呼び捨てにするけどな」

「それはユーリがおかしいんだって」

「はは。なんか二人とも、ずいぶん仲良くなっちゃったね」


「え!?」

 声がユニゾンした。


「ほーらまた」

「もう、カイトさん、茶化さないでくださいよ」


 あれ? ユーリ黙ってる。

「あ、ごめんね。それじゃあ、あしたの話を詰めよう」

「わかりました」


***


 翌日の朝、私は真彩におそるおそる声をかけた。

「あのさ、真彩。きょう昼休み、時間ある?」

「え? どうしたの桔梗?」

「ちょっと話したいことがあってさ」

「そうなんだ。いいけど」

「じゃあさ、屋上行こう」

「わかった」


 四時間目の理科の授業もユーリ無双だった。化学式は確かにまるで魔法の設計図みたいだけどね。ホント、魔法使いってやつは。こっちは真彩が心配で気が気じゃなくて授業どころじゃなかったってのに。


 給食が終わった。

「屋上行こう」

「わかった」


 ごめん、真彩。あなたがソーサラーだったらと思うと、私、怖くてどこかへ行っちゃいたい。でも、そういうわけにはいかない。違うって信じたいんだけど……。

 

二人は魔法道具の姿を消すレースをかぶってついてきている。かんづかれる可能性はあるけど、カイトさんが安全を最優先にするって言ってくれた。


「あのさ、真彩。思い切って聞くけど、部長に告白したの?」

 ここから切り出すしかないよね。


「え? ああ、そのことか」

「うん。やっぱり気になってさ」

「振られちゃった」

「え?」

「好きな人がいるんだって」

「あ、うん……」

「それって桔梗だと思う」

「ええ⁉」

「桔梗、かわいいし、部長がいつも見てるの気付かなかった?」

「そんなことないと思うけど」

「そんなことあるよ。だから私……」


「え? どうしたの?」

 真彩は突然、顔をおおって泣き出した。


「彼に言われたの。部長を連れてくれば、部長をお前の言うことを聞くようにしてやるって」

「え?」

「それできのうの昼休み、体育館の裏で部長を彼に会わせたの。そしたら……」

 真彩はまた手で顔を覆った。


 きのうの昼休みも校内の魔法陣探しに三人で没頭ぼっとうしていたけど、体育館の裏は先日の一件以来、気にしていなかった。


「彼と話したとたん、部長が変な顔になって突然、私のこと好きだって言いだして。私、怖くなって逃げちゃったんだけど……」

 ああ、それできのうは部活を休んだのか。


「あのさ真彩、彼ってだれ? 私たちのクラスの人?」

「え? 彼? だれ? え? あれ? うう……思い出せない……あ、頭が痛い……」


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