第16話 ほうきに乗っちゃった
内田くんはずっと教室でひとりぼっち。ユーリが言っていた「もう一人の女子」が誰なのかは、「オレが
おじいちゃんはあやかし退治で忙しいみたいで、週末になっても私を呼びに来なかった。まあ、二人のことを説明するのは面倒だし、ちょうどよかったのかも。
――日曜日は楽しかったなあ。ショッピングモールでユーリ、めちゃめちゃ目を輝かせてた。たこ焼きにあんなに感動した人、初めて見たよ。
カイトさんはクレーンゲームに夢中になりすぎて、「絶対取る!」って人格変わってた。魔法使っちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしたくらい。
二人とも日本生まれなのに、日本の子が普通に楽しんでいることを
その夜のことだった。
「桜庭、ちょっといい?」
廊下からユーリの声。ドアを開けると、ほうきを抱えたユーリが立っていた。
「桜庭、空飛んでみたくない?」
「ええ?」
「ほうきに乗せてやるから来いよ」
「危なくないの?」
「危ないもんか、オレを誰だと思ってるんだ?」
危なっかしい魔法少年、としか思えないんだけど。
「またカイトさんに怒られるんじゃないの?」
「見つからなきゃ大丈夫」
「見つからないわけない気がするけど」
「いいから行こうぜ、ほら!」
どうしても連れていく気らしい。
「わかった。ぜったい落とさないでよ」
「当たり前だろ。オレは桜庭のナイトなんだから」
「ぜんぜん答えになってないけどね」
仕方なくほうきの後ろにまたがった。スカートじゃなくてジャージだからいいけど。どうせ
……あれ? 五芒星出ない? 本当に浮いてる⁉
ほうきに乗った私たちは夜の街をすり抜け、ぐんぐん上昇していった。
「ちょっと……速すぎるって!」
「しょうがないだろ、ほうきなんだから」
「何それ! 答えになってないでしょ!」
町の明かりが遠ざかり、やがて青く丸い地球が見えてきた。
「ここ……宇宙じゃないの⁉」
「へへ。当たり前だろ。アカデミアでここまで上がれるのはオレだけだぞ」
本当に天才なんだ、この子。
息ができるけど……まあ細かいことはいいか。
「ちょっと聞いていい?」
「え? 何?」
「魔法使いになるのって、怖くないの?」
「……怖くないって言ったらウソになるけどさ。だからオレ、もっともっと強くなりたいんだ」
いつも強がりばかりのユーリが、ほんの少し本音をのぞかせた気がした。
「でも桜庭だって陰陽師だろ? すごく強いよ。二回も助けられたし」
「それは……おじいちゃんのおまじないがあったからで……」
「それだけじゃないと思うぜ」
……なんとなく照れる。
「もうちょっと飛んでていい?」
「遅くなっちゃうからもう帰ろうよ」
「しょうがないなあ」
ユーリはほうきを下に向けた。反動で私の体がユーリの背中にぶつかった。
「あ……あの、桜庭……背中に……」
「何?」
「あたって……いや……その」
「どうしたの? 早く帰ろう」
「あ、ああ……う、うん」
あんなに調子に乗ってたのに急に黙っちゃった。変なやつ。
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