第5話 天才少年は年下

「あの……いろいろ話が見えないんですけど」

「そうでしたね。説明します」


 王子様――カイトさんが優しく語り始める。


「ボクらは魔法使いなんです。ただ、まだ正式なウィザードじゃなくて、マグス・プエル。日本語にすると“魔法っ子”とか“魔法少年”かな」

「オレはもうウィザードと変わらないけどな!」

「はは。――こいつ、ユーリとボクはロンドンのアカデミア・マギカ、つまり魔法学校からこの学校に派遣されてきたんです」


「ロンドンから来たって、本当だったんだ……」


「ミッションは、この学校に潜んでいるソーサラーを見つけ出すことです」

「さっきから言ってるソーサラーって?」

「秘密なんですけど……もう巻き込んでしまいましたからね。ソーサラーは“災いをもたらす魔法使い”のことです」

「災い……?」

「はい。世界の大事故や災害、戦争の多くはソーサラーのしわざなんです。公表されていませんけど」


「ええ⁉」


 カイトさんが申し訳なさそうに眉をひそめる。

「その一人が、この学校に潜んでいるんです。さっきの攻撃で確信しましたが、不意を突かれて……助けられました」


「い、いえ……。足がしびれてただけですよね」


「ああ……はい。それにしても、アカデミアで習いましたけど、陰陽師おんみょうじってやっぱりすごいんですね」

「え? ま、まあ……実はあれ、実戦で初めてやってみたんです」

「ええっ! あんな力を初めてで⁉」


 むしろ私が驚いてるんだけどなあ。おじいちゃんのまねしただけだし。


「足がしびれて不覚を取ったけど、あんな攻撃、オレにとっちゃ大したことなかったし」

「はいはい、勇ましいね」

「オレは将来、マグス・スプレムス・サペレ、最高の大魔法使いになるんだから!」

「はは、そうだったね」


「次は絶対やっつけてやる」

「そうだね。――紹介しておくと、この子はボクより二歳下で十二歳。でも才能は天才的で、魔法学校でも飛び級してます」

「じゅ、十二歳?」


 私の弟と同い年⁉

 英語はもちろん勉強も全部負けそう……ちょっとショック。


「本当は中一なんですけど、ここでも飛び級したいって聞かなくて。でも、背が小さいから、得意の幻惑魔法――マギア・イリュージョニスで背を大きめに見せてるんです。おじょうさんには効かなかったみたいですね」

「オレは小学生じゃないって!」

「はいはい」


(なるほど……あやかしの幻術みたいなものか。退魔のおまじないで効かなかったってことだね。ってことは……みんなには“かっこいいイケメン”に見えてる⁉)


「そのイリュージョニスでどんな姿になってるの?」

「魔法が効かないなら見せられないだろ」

「スマホに映せばいいんじゃない?」


 カイトさんがスマホを取り出す。……魔法使いもスマホ使うんだ。

「お、いいなそれ」


 ユーリが杖をかざして念じると、画面に映ったのは――。


「え? 別人じゃん」

「そんなことない! 来年のオレだ」


 画面の中のユーリは、今よりずっと大人っぽくてイケメン。

「一年でこうはならないと思うけど……」

「ぜったいなる!」

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