第4話 なぞの攻撃

「この方に何かあれば、君はソーサラーと同じ永遠の地獄じごく、アエテルヌス・インフェルヌムに落とされるところだったんだぞ」

おどしだよ! 当たっても転ぶぐらいだったって!」

「そういう問題じゃない! 謝らないとアカデミアで懲罰ちょうばつだ」

「ソーサラー倒すのに懲罰なんて、やってられるか!」


 懲罰⁉ そんな大ごとに……。

「あの、私、大丈夫でしたし……」


 その時だった。


「オプグナーティオ! 攻撃だ!」

 ユーリが叫んで立ち上がった。……でも足がヨロヨロ。


「デフェンシオ・ドムス!」

 カイトさんが杖を掲げると、空に巨大な魔法陣が組み合わさってドームを形づくる。


「デフェンシオ・ムルス!」

 ユーリの叫びで、四角い光の壁が現れ、何かがぶつかって大きな音を立てた。


「くそ、足がしびれて……」

 必死で壁を支えるユーリ。そりゃ正座してたら足もしびれるよね。


「デフェンシオ・ディスクス!」

 カイトさんの円形魔法陣が次々と現れ、上昇していく。


「かなり強い。ユーリ、このお嬢さんを連れて逃げろ!」

「オレが逃げるわけない!」

「バカ! 一般人を巻き込む気か!」


 ……もしかして、これ本気で危険?

 でも私だって陰陽師のはしくれ。やってみよう。


人 差し指と中指を合わせ、くうに五芒星を切る。

退魔解呪たいまかいじゅ! 急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう!」


 光る星が一気に上昇。魔法陣も光の壁も巻き込み、見えない何かに衝突した。

 轟音ごうおんひびき、すべてがかき消された。


(……私、けっこう強いのかも?)


 けど大音量に校庭の生徒がざわついてこっちを見てる。

 まずい。私はフェンスから離れた。


「ユーリ、イリュ―ジョニス!」

「わかってる」


 杖を回すユーリ。すると校庭の生徒たちは、何事もなかったかのように元に戻っていった。


「ふう……敵は去ったみたいだね」

「ああ」

「これでこの学校にソーサラーがいるのは確定だ」

「ああ。このお嬢さんじゃないことも」

「……まあ、認めざるを得ないな」


「もう、素直じゃないなあ」

「オレは素直だよ。あの……イグノスケ・ミヒ」


「いぐのすけ? え?」

 (武士の名前?)


「ラテン語で“ごめんなさい”です。ボクら、魔法の呪文じゅもんにラテン語を使うんです。それで……」

 カイトさんが教えてくれる。


「ラテン語?」

「はい。デフェンシオは防御、ドムスはドーム、ムルスは壁、という意味です」


 陰陽師の祭文さいもんみたいなものかな?


「そうなんですね。それなら、私の“急急如律令”は……」

「ただちになすべし、ですよね」

「え、知ってるんですか?」

「はい。アカデミア・マギカで習いました」


 ……まぎか? また知らない言葉。


「ホント悪かった。オレ、すぐ考えなしで動いちゃうんだ」

 ユーリが改めて頭を下げる。


「すぐ反省するのは子どもらしくていいね」

 カイトさんが頭をなでた。


「子ども扱いするな!」

「だってボクら、まだマグス・プエルだからね」

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