マリーゴールドの追憶
日高 蓮
第1話
僕の家には、お父さんとお母さんと弟がいた
仲の良い家族だった
山の少し上の方にある、家で暮らしていた
夏はそんなに暑くなかったけれど、冬は寒くて大変だった
弟は足が不自由で、歩くのが苦手だった
小さい頃はハイハイしたり、物を掴んで立つのがやっとだった
お医者さんは言った
「この子はきっと、走れない」
「このまま行けば、歩けなくなるだろう」
そういう病気で、治すには沢山お金が必要だった
家には、きっとそんなにお金が無かった
父さんが木の枝を持って帰って来て、削りだした
何日かして、弟に杖を作ってくれた
弟はとても喜んでいた
僕は羨ましくなって、作って欲しいと頼んだ
父は笑って言った
「そんなに欲しいのなら、自分で作りなさい」
僕は枝を探して、削ってみた
何日かかけて、杖は完成した
まぁまぁの出来だった
弟と一緒に杖をついたり、少し戦いごっこもした
しばらくすると、僕は杖を使わなくなった
何も使わずに歩いた方が楽だった
弟と一緒に、山の色んな場所に行った
川や花畑や、森の中を探検してまわった
弟が疲れると、僕はおぶってあげた
「ありがとう兄さん」
弟はにっこり笑って言った
僕も笑った
弟は頭が良かった
川で魚や、狩りで獲物を獲る方法を僕に教えてくれた
「どうして、そんな事を知っているの?」
「前に父さんが言ってたよ」
2人で笑った
僕は全然、覚えていなかった
「そうだった?」
弟は大きく頷いた
花畑に行った時には、花の名前も教えてくれた
僕が聞く前に教えてくれた
「本に書いてあったんだ」
沢山、説明してくれたのに僕は全然覚えていない事に気がついた
もっとしっかり、聞いておくんだった
家の手伝いも2人で良くした
父や母はとても喜んでくれて、ご褒美に時々甘いお菓子をくれた
僕達はそれをいつも、大事に少しづつ食べた
分け合ったり、交換したり、苦手な食べ物は代わりに食べてあげたりした
母はいつも言っていた
「あなたたち、いつも本当に仲が良いのね」
優しく笑いながら、頭を撫でてくれた
やがて僕達は、学校に通う事になった
山を下って、街の近くにある学校だった
毎日、母が弟をおぶって行った
弟が大きくなるにつれて、それは難しくなっていった
ある日、僕は言った
「母さん、僕が連れて行くから」
その日から、弟を連れて行くのが僕の仕事になった
行きと帰りに僕は弟を背負った
だんだんと弟が大きくなっていき、僕は言った
「ごめん、もう背負ってあげられない」
弟は、申し訳なさそうに言った
「いつもありがとう兄さん、もういいんだ」
それから、弟は学校に行けなくなった
街で暮らしてはどうかと、先生達とも話しをした
父の仕事の都合もあって、みんなで引っ越すのは難しいという話しになった
弟は家の手伝いをしたり、本を読んだり、絵を描いたり、毎日を家で過ごすようになった
僕は学校に早く行って、早く帰って来られるようになった
びっくりするくらい、身体が軽く感じた
早く帰って来られるようになると、家の手伝いや父の仕事の手伝いを長く出来るようになった
両親はとても喜んだ
弟は少し寂しそうに笑った
「いつもありがとう、兄さん」
家族で協力しながら、何とか4人で仲良く暮らしていた
ずっと僕はそう思っていた
月日が経ち、父も母も少し歳をとった
どこが痛いとか、もっと手伝ってくれとか、少し文句が増えていった
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