その小学生達は、見咎められずに行動・観察し、ハムと繋がる

高井希

第1話遠くの親友

 僕は小学六年生の笹山涼、人間観察が大好きで、『日常探偵クラブ』の部長をしています。

僕らは誰かを見てる。

でも、誰かは僕らの事なんか気にもとめない。

だって、僕らは小学生なんだもの。

小学生って何処にでも入り込むし、みんな同じに見えるでしょ。



一人目、鈴木さん家のおばさん。


 鈴木さん家のおばさんは、美人だし、いつもニコニコ笑って、誰にでも親切だ。

シンプルだけど清楚な服装も感じが良いって父さんも言ってた。


おばさんは、今日も僕らに「おはよう」と、声をかけてくれた。


「あのおばさん。美人で優しくて、いいよな」

「うちの母さんもあれくらい美人だったら良かったのに」

「あのおばさん、いつも町外れのボロい神社の掃除をしてるよ」

「そういう仕事なのかな?」


下校の途中、町外れの神社に寄ってみると、鈴木さん家のおばさんが境内の掃除をしていた。

紅葉がはじまって、黄色いイチョウの葉が境内を彩っている。



「こんにちは」

「あら、涼くん。今、学校の帰り?」


「うん。この近くの友達と、待ち合わせてるの。その子が、家からゲームを持ってくるから、ここで待ってるんだ」

「そうなんだ」


「おばさんは?。お仕事?」

「ボランティアでここのお掃除をさせてもらってるの」

綺麗な白い歯を見せて、おばさんはニッコリする。


「凄いな。僕なんか、教室の掃除さえ、イヤイヤやってるのに」

「この神社はね、親友との思い出の場所だから、大切にしたくて…」


「親友?」

「そうよ。遠くに行っちゃった親友」


「忘れられないくらい大切な親友なんだね。僕の友達は、僕との約束を忘れちゃったみたい。僕、もう帰らないと、お母さんに怒られちゃう」

僕はおばさんに手をふって、神社の階段を降りていった。


家に帰って、いとこの賢人さんに、電話をかけた。

「今日ね、町外れの神社に寄ってきたんだ。鈴木さん家のおばさんがいつも掃除をしてくれてるんだよ。親友との思い出の場所なんだって」


翌朝、町外れの神社へ、賢人さんと僕はロッキーの散歩に出かけた。


「おい、ロッキー。何をしてる?」

大型犬のロッキーが、境内の裏のイチョウの木の根元を、前脚で、一心不乱に掘りはじめた。


賢人さんは、少し離れた場所から、ロッキーの様子をスマホで撮影しはじめる。

僕は賢人さんとロッキーの様子をワクワクしながら見守った。


数日後、ニュースをみていたお母さんが僕を呼んだ。

「涼。見て。今、ニュースで鈴木さんの奥さんが、殺人罪で逮捕されたって。あんな良い人そうな女性がねえ?。信じられないわ」


二十年以上前に殺されて埋められた人骨が凶器と共に町外れの神社で発見されたそうだ。


その凶器は鈴木さん家のおばさんの彫刻刀で、おばさんは犯行を認めたんだって。


被害者は当時中学生だったおばさんの幼馴染で白河亜弓(当時12才)。



ー鈴木さん家のおばさん、いつもニコニコ笑ってたけど、僕、本当は、おばさんの目がちょっと怖いなっていつも思ってたんだー









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