第19話 Le retour triomphal du héros
「きゃァァァァ!!!!」
その場は漠然としていた。
さんざん助けると息巻いた日本人が、目の前で仲間を殺した。
そりゃ当然の雰囲気だ
「死んだ……エレキ様が死んだ。助けるんじゃなかったのかよ!!!日本人!!!」
「この殺人鬼!!!!!!この野郎!!!」
みんながみんな雄一郎を罵倒する、言いたい放題言いまくる。
今までのストレスを全てぶちまけ、もうどうにでもなれと言いたげな声色で
すると砂埃が舞っていて見えなかった風景がようやく見えてきた
「雄一郎は殺人鬼なんかじゃない」
え?嘘だろ!まさか!歓喜の声が飛び交う先にあるのは
爆弾だけが破壊され、涙を流したエレキを抱きしめながら笑い合う姿だった
「雄一郎は英雄だ。言葉の魂を、重みを全て自分で助け出したんだ」
『雄一郎!雄一郎!雄一郎!』
コールがなる。さっきまで日本人と名前を呼ぶ価値もないと言っていたのと同じだった奴らが、英雄と称えている。
雄一郎は言う
「これで終わりじゃない、俺は世界を救いに行く。この透明な壁も突破出来る方法が出来たんだ」
するとみんなが驚き嘘だ!と驚愕する
「クロ。俺のSilver Variationが一瞬だけ掬い取った時空移動装置を使って外に出れる」
「え?一瞬だけなんて言ったら出来ても1人程度なんじゃ……」
「俺のクロをなめんなよ。こいつの能力はコピーだ。俺らが戦っていた間に量産してもらったよ」
するとクロが前に出てきて手をかざし、その途端に眩い紫色の光がビカビカと稲妻のような音と共に発生する。
そこにはゲートのような紫色の楕円状の光があった。
それこそが時空移動装置なのだ。
「なんと……クロ様。本当にありがとうございます。」
エレキが床に膝をつき深々と頭を下げる
「我々、2週間はこの状態。食料も底を尽きかけておりました」
出れるんだ……と安堵に浸った人々の顔が、雄一郎には深く染み込んだ。
人を救うことの素晴らしさを実感した。
「よし行こう!!!!!」
みんなが時空移動装置を使い移動を開始しようとしたその途端。
その時空移動装置から一人の男と一人の女が出てきた。
「……!?」
皆が脅え、エレキが眼光を鋭くさせ、人々を後ろへと後退させて守る形になる。
「なんなんだ……一体」
クロまでもが脅える「分からないよ……」
エレキも冷や汗が出る。希望の目が黒く戻るほどに絶望をしている顔だった
「分かる……この気の強さ。六連様に匹敵する」
その途端に後ろにいた何百人もの人が脅えている体をさらに脅えさせ涙を流す人も現れる。
…………無言でこちらを見た後に笑う
その男は黒髪で、肩まで髪が伸びており、真ん中で分けているいわゆるセンターパートだった。
その姿はまるで俳優のような整った顔をしており、左手には日本刀でも剣でもない白銀に輝く剣の形をした何かを持っていた
「………………俺の名前は『城ヶ崎ケンイチ』。こっちは『城ヶ崎ナツキ』だ。」
金髪の女、ナツキを親指で指さした状態で鼻を鳴らす
「俺らの目的はただ1つ。日本に帰らせないように足止めをする。」
金髪の女が光も何も無い声で言う
「そして六連様の命令に逆らった人間の抹殺」
その目はエレキとその後ろにいた何百人の男に向けて放っていた。
「…………」
エレキは無言でさらに後ろの人々を下げ戦闘態勢に入る
「なんだその目は、文句でもあるのかこの裏切り者が」
容赦なく切りかかる、その姿はまるで鬼。
瞬時に反応し動きに成功した雄一郎が女の拳をギリギリでエレキの顔面の直前で止める。
「やめろ」
その声に反応し脅えるように体を後ろに反らせながら飛び退きケンイチの元へと戻る。
「あいつはやめとけ、俺が相手をしてやるからそのうちに裏切り者のゴミを殺すんだ。」
「わかった兄様」
クロに耳打ちする
「どうだ、クロ。」「あれは完全にダメだね。洗脳の中でもかなり強く、常軌を逸するやられ方をしているよ。」
「やっぱりな、俺もあいつらは洗脳だとすぐに分かった」
「ってことは」「応。」
「「脳に入ったチップを壊す」」
クロと雄一郎が同時に動きだし挟み込むように攻撃を繰り出す。
するとケンイチは身をかわし攻撃を避ける。その同時に足をクロの顎の下に強く殴り付ける
クロは意識を失いかけるが、ギリギリで倒れ込むところを抱えた雄一郎に助けられる
「小賢しいんだよどいつもこいつも」
雄一郎は睨みつけ機神化の状態をさらに強くさせる。
だがまだその先へは行かない、まだ掴んでいないのだ
(なにか掴めないものがある……突っかかるんだ)
するといつの間にか目の前にいたケンイチがおでこに人差し指をトントンとさせる
「お前、まだ掴んでないんだろ。それがないと俺には勝てないぞ?」
「俺はそっち側の人間なんだ。」
すると雄一郎は恐れ慄いた、目の前の光景がこの世のものとは思えなかった
「お前もこの『機獣神化』っていう更なる高みに来ないと、好きなやつの目の前で無様に死ぬことになるぞ?」
鳥肌が立つ。
こいつには全てお見通しなのか
なんで俺がクロのことが好きだと知っている、この姿が機神化だと言うのも知っていた。
そして何よりもその『機獣神化』を今目の前で起こしている。
「お前はここで終わりです、それじゃあさようなら」
見えない速度で腕が上に行った。
俺の首の先で、スパッと音がした、何も起きない。何も分からない
俺の首がゴロッと落ちた。血溜まりが作られる。
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