第11話 真実

「鎧を纏ってる、と言うよりはサイボーグで中の機械が見えてるってことか?」

「そう、こんな私でもいいか?人間じゃないんだぞ」

俺はクロの手を握り

「そんなの関係ないよ、俺はクロが好きなんだ。」

クロは頬を赤らめ、目線を床に移してから

「ありがとう」

と小さく頷きながら言った。

「サイボーグになった経緯とかある?聞いてもいいかな……」

俺は気になっていたことを一気に爆発させた、たとえ受け入れられなくても、聞いてみることが大切なのだと思った。

「あぁ……これね」

「いいよ、話すよ。雄一郎にはこのことも話しておきたい。」

「ありがとう。早速なんだけどいいかな?」

俺は受け入れてくれたことが嬉しかったのと早く聞きたかったことがおおきかった。

「私は、第三次世界大戦で命を落とした。この体は所謂作りもの。」

俺は衝撃がデカ過ぎたと思った、ここまでの衝撃を食らったのはいつぶりだろうか、

宿題の半分を教室に置き忘れていて何もやってなかった夏休みか?

テストの点が予想していた倍高くて驚きまくって叫んだ時か?

それ以上に強い衝撃。人生史上いちばん強い衝撃が頭に走った。

まるで3mほど飛ばされるんじゃないかという勢いで。

「それって……」

「うん、本当の私はもう死んでる。この体も、記憶と性格も何もかもを受け継いで作られた別物なんだよ」

更なる追い打ちの衝撃が突き刺さった。

すると


ドォン!!!!


鈍い音と地面に着地した時の特有の土埃に視界が奪われ、気がつくとクロは消えていた。

「……!?クロッ!!!!」

「やぁ、仙波雄一郎くん。」

顔が見えた時に見た姿は首を絞められ身動きが取れずに大男に抱えられているクロの姿だった。

「クロを離せ!!!!」

「おおっと、それ以上近づくなよ?クロくんの首がドカンだ。」

動きたいにも動けない、奴の言っていることは本当だと本能がそう思った。

「僕の名前は新馬六連。クロくんの脳に埋め込んだチップを起動させに来たよ。」

「お前か……!?クロに何をしたんだ!!!」

「いやいや、サイボーグのクロくんはこの世に存在してはいけない存在なんだ。だから僕の研究材料にさせてもらう」

「……、そんなことさせるかよ!」

「……なんだそれ?!」

六連の後ろにワープホールのようなものが出現した。

「これは時空移動装置。僕は本当は政府側の人間でね?地球にはいないんだ」

「お前、どこまでもゴミ野郎なんだな」

鳥肌と冷や汗が同時に襲いかかる。嫌な感じとしか言えない気持ち悪い感覚がぶつかる

「おっとと、そろそろ首を絞めてて息ができないから死んでしまうね?」

「それじゃあ……」「待て、、やめろ!!」

俺は前に手を出しながら六連とクロに走りクロを取り戻そうとするが

六連の手にはスイッチがあった。恐らくだがクロのチップが起動するスイッチだとすぐに分かった、俺は目をかっぴらき絶望と諦めてたまるかという悔しさが突っ込まれ足が早くなる。

「クロ……人間ごっこは終わりだ」

六連がスイッチを押そうとする0.7秒程。雄一郎には十分すぎる時間だった。

俺の足からは金色の光が鳴り響き地面が割れる。

「なっ……!?馬鹿な」

六連が手を滑らしスイッチが地面に落ちる。

雄一郎はそれを見逃さなかった、姿勢をさらに低くしスピードを使って地面と水平に走る。

残り距離は3mほど。

「……っ!来い!」

スイッチが六連の手に戻っていく、俺はその時にわかった。

「お前もサイボーグなのか!?」

「そうだよ。僕はサイボーグだ。磁場でスイッチを逆に移動させて手に戻すなんてお茶の子さいさいって事よ。」

スイッチに親指が近づく、そろそろ本気で終わりだと思った

ここまでなのか……

すると


ビリビリッッ!!!!


電気の音と土が破壊されるような鈍い音が鳴り響き、上から一人の少女が降りてくる。

その少女は緑色の髪をし前髪が長く伸びきっており目が見えていないのではないかと思うほどに伸びている。

「……!シオリ!?」

その姿はシオリだった。だがその姿は変わりきっており、完全に敵意を向けていた。

つまりは俺を助けた訳ではなく、俺を殺そうと降りてきた、そのタイミングがたまたま被り結果的にクロが助かったということだ。

「………お前は雄一郎を殺そうとしているか?」

六連は少し困惑した後すぐ答えた。

「……あぁ、このクロくんを利用して心をズタズタにしてから殺そうと考えている。」

「そうか、なら私たちは味方だ。手を組もう」

シオリは六連に手を差し出し「了解だ」強く手を握り握手を交わした。

「なんだお前。シオリじゃないのか!?!?」

「シオリだよ!!!!お前が要らないと捨てたゴミSilver Variationだよ!!!」

手刀で腕が吹き飛ぶ。左腕が吹き飛ぶ。

俺は金色の光を鳴らしながら後ろに身を引く。

その引く速度よりも遥かな上の速度で近づき首を手刀で断ち切ろうと振り上げる。

ギリギリのところで避けたがもう反対の手が脇腹に突き刺さり、傷を深く作る。

俺はその場に倒れ込み血を口から吐く。

「弱いですね、流石。ただの人間です。」

俺は黒い髪を掴み、自分を恨んだ。

(なんで俺はどこまでもこうなんだ……どこまでもゴミ野郎なんだよ!!!)

俺の髪が金色に変色し、体が稲光に包まれる。

「なんだ……」「ちょいちょい!なんで今ここで!!」

六連が焦りに焦った表情を顔にだし、汗が顎に伝って何滴も床に溢れ落ちる。

「ここで……なんで機神化するんだよ!!!!!!」

機神化(きじんか)とは本来の人間に備わっているが誰も気が付かない内なるサイボーグの性質を覚醒させ姿に表すことを指す。

「俺は……銀の暴君のリーダー。『クロ』を取り戻す。」

「はぁ!?」

シオリが馬鹿げたことを言ってるな、と呆れたように。でも驚いて声を出す。

「そして、シオリを元に戻してやる!!六連。貴様を倒してな!!!!!」


俺は──────金色の暴君『仙波雄一郎』だ。

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