第9話

 ロナが火災から逃げたとき、抱えていた古い本に家族の情報は一切載っておらず、右手を治すためにも一人になったロナを引き取り、治す方法を探すことにした。

 この古い本は施設のものとは違った形をしているから、家族のもとにいた頃の物だと思う。特に最初のページと途中からの全てのページが破られているため、消されたのは両親の記憶なんじゃないか。

 ロナが成長すればするほど全身が黒く染まっていったのだろう。

 施設の職員は「地球が黒く染まらないようにロナから守っている」と言っていたから、両親はとっくにもう。それでロナの感情が爆発しないように……。

「何か分かりそう?」

「うーん。ロナの両親はどうしてるのかなって考えてたんだけど、何も覚えてないよね?」

「全く覚えてない。覚えてないからちっとも悲しくない」

「そうか……。でも、感情を爆発させないようにって大変だよな。溜めるばかりじゃ辛いのに」

「でも私が感情を出したらエリックは黒くなっちゃうんでしょ?」

「そうだけど……」

 もしもこの能力が後天的に生まれヒントがら、きっかけが分かれば治せる可能性があるはずだ。きっかけねえ。ヒントがなさすぎるな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る