第13話
――フレッドとアランによる厳しい追及が行われていた。取り調べの対象になっているのは聖女のステファニーである。俺たちの親友同士の純粋な絆を気持ち悪いと言ってくれたな……こん畜生め許さないからな、という感情も大いにあった。
「ステファニー、どうなってるのか説明してくれ!」
「どうして回復魔法の力が弱まっているんだ?」
「私にもわからないの……」
二人が問いただしたところ、理由がわからないという。だがその他にもステファニーには聞きたいことが山ほどある。それはセリーヌのことだった。
「それなら質問を変えよう。食事に毒を入れられたのは本当なのか?」
ふと思い出して確認するようにアランは言った。フレッドとステファニーの仲の良さに不満を持ったセリーヌが、給仕係のメイドに命じてステファニーの食事に毒を盛らせたとされている。しかしそんな事は信じられないアランは、ステファニーの顔を覗き込むようにして質問した。
「……」
「ステファニー、なんで黙ってるんだ? 答えてくれ!」
彼女は座ったまま黙ってうつむいていた。その様子にフレッドが、じれったいといわんばかりに怒鳴り声を上げた。
「……そうよ。毒を入れられたわ。メイドが犯人はセリーヌだと自白したじゃないの」
顔を上げてゆっくりとした口調で話しだした。確かな証拠が存在しているのも事実であると、強く反論するような思いで主張する。実はステファニーが仕組んだ計画で、罪なき犠牲者のセリーヌを国から追放した。
食事に毒を入れたメイドも全てにおいて、ステファニーの洗脳によるものであり、非情で卑劣な行為を平気で行ったのだ。だが自分のしたことだと罪を認めてしまえば大変なことになる。
彼女は口が裂けても死ぬまで誰にも話さないだろう。そんなことを言えば恐ろしい破滅の運命に陥ってしまう。
「でも俺には信じられないんだ。セリーヌがそんな事をするなんてあり得ない」
「私もそう思う。あの心が広くて慈愛深いセリーヌが考えられない」
アランとフレッドが今まで生きてきて出会った女性の中で、セリーヌは一番素晴らしい女性であった。とても美しく気品があっていつも明るい笑顔を振りまいてくれる。
おまけに善良で道徳的で仏のような心を持っている。そんな彼女が聖女の食事に毒を盛れと指示するなんて、あろうはずはないと強く主張した。
「だけど、あなた達がセリーヌを追い詰めて犯人だと言ったのよ?」
「それが俺達には、あの時の記憶が全くないんだ……なあ、フレッド」
「ああ、頭の中に霧がかかったような状態で思い出せないんだ」
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