偽りの初対面
ここは学院の廊下。
そこには四人の少女グループが廊下の中心にいて話をしている。
グループの中心は、かのマーキュリー・バーナディネリ・バーンスタインである。
「マーキュリー様、正気ですか?」
「悪い噂の渦中の人物と出会うのはあまりよろしくないかと」
「やめといたほうがいいと思います」
「私はその生徒に興味があるのです。これは私の問題です。他の者がどう言おうと私の勝手です」
確かな意思表示に御付きの少女たちは口をつぐみ、マーキュリーの為すままに任せる。
所詮は腰巾着。
「それで?その生徒はどこにいるのですか?」
「いつもは第一図書館にいるとのことです」
「では向かいましょうか」
マーキュリーが目的の場所に向かって歩き始め、御付きがそれに続く。
ごく少数の者達はマーキュリーの向かう先に興味を持ち、続々と続く。
第一図書館についたマーキュリーは目的の人物の捜索を開始した。
「その生徒はどこにいるのですか?情報もなく来てしまったので、その生徒の特長を知らないのです」
「その生徒はいつも同じ場所に座しているのでそこに行けばおそらく会えるかと」
「では、そこに案内してください」
「はい!」
図書館といってもそこは博物館のように広い。
人を探すのには苦労するだろう。
数分してようやく目的の人物を見つけた御付きの少女
「いました。あの生徒です」
御付きの少女が指をさした先には積みあがった本の山があった。
その生徒は本の虫なのだろう。
多くの生徒がマーキュリーに注目し騒ぎ立てる中、その生徒は全く動かず、ただ本をめくる。
目は真剣そのものである。
そんな本に没頭している生徒にマーキュリーは話しかける
「もし、話が聞きたいのですが」
「・・・・」
その生徒は返事をせず、黙々と本を読み、ページをめくる。
周りの生徒たちは絶句していて、ある者は「不敬だ」などとわめきたてている。
権威主義的な発言に辟易しているマーキュリーは騒ぎ立てる者達に静かにするために、人差し指を口元に持ってくる。
すると、騒ぎ立てる者たちはいっせいに口を閉じた。
「もし、聞こえますか?」
「・・・・・・ん?あ?うぇ?お・・僕ですか?」
「はい、貴方です」
マーキュリーはその反応に対して心の中で大爆笑した。
★
俺の目の前にめちゃくちゃ高貴そうな女生徒がいる。
御付きみたいなのが3人。
すっげ―目立ってる。
話しかけられた俺もメッチャ目立ってるけど・・・・
「何か用ですか?」
とりあえず用件を聞こう。
「いえ、私はただ、何を調べているのか気になって話しかけたのです」
顔見りゃわかる。
貼り付けた貴族然とした顔の裏が笑ってる。
ここ二か月で貴族の奴らにも内心馬鹿にされたり、裏でいろいろされたからな。・・・金奪うのはダメだろ。この世界でもカツアゲがあるなんて知りたくもなかった。
閑話休題
コイツスッゲー面の皮が厚いな。
とりあえず、定型文を返しとくか。
「いえ、ただ本が好きなのでたくさん読んでいるだけですよ」
★
この人、めちゃくちゃ面の皮が厚い。
いじめられているとはクロから聞いているけど・・・なるほど。いじめられてもなぜ平然としているか半分分かった。
この人多分、面の皮まで見てから話している。
この状況では私の話も同じ。
こっちの話題の内容を知ったうえでやっている。
面白い。とても平民出身とは思えないほど肝が据わっている。・・・・失礼か
禁術を使って知りたいことを知ってもいいのだけど・・・話した方が面白そう。
「なるほど。勉強熱心なのですね。今何か集中して調べていることがあれば、是非教えていただけませんか?」
★
予想通り。
こいつ、俺をいじめたくてここに来た可能性がある。
外面は完璧超人みたいな美少女なのになぁ・・・至極もったいない。
とりあえずさっさと答えてこの話を終わろう。
「ある魔法について調べているんですよ」
★
そして、私が撃ったことを知らない。それはそれで好都合。
記憶消そうにもこんな面白い人を消すのはもったいないし、急に性格が急変したら面倒な先生が出てくる可能性がある。ならこの話の終着点は・・・・
「その魔法について教えていただけませんか?」
★
来やがったよこいつ。
何が「教えていただけませんか?」だよ。知ってるくせに。
さて、正直に答えるもよし、適当にごまかすのもよし。
・・・・ごまかしても聞き続けるだろうなこいつの性格を考えれば・・・
「流星が現出する魔法です」
ほ~ら周りが騒がしくなったよ。
★
・・・・正直に吐くとは思わなかった。
いや、ごまかしても無駄だと分かっていたからこそのこの回答。
さて、聞きたいことは聞き終えた。問題は・・・
「アル~~?な~にをやっているのかな?」
「「!?」」
え?この人って確か・・・
「マイア姉さん!?」
そうそう、マイア・プレイアデス。
有名なプレイアデス姉妹の長女。
そして、平民出身初の3年連続主席。(一年生時は準主席)
最近では貴族の友人を作って無意識にパイプを作り始めた奇人変じ・・・天然さん。
なるほど、この人の弟だったのか。
あれ?それって・・・・
「・・・マーキュリーさん?」
「!なんでしょうか?マイアさん」
「うちの弟が何かしましたか?」
「いえ・・・」
「違うよ。姉さん。マーキュリーさんが僕に質問してきたんだ」
姉はともかく、私に対して名前呼び!?
・・・いや、この人絶対今、私の名前を知った!!
流星群のことといい一般常識が通じない。
「マーキュリーさん。それは本当?」
「本当ですよ」
「なるほど。それで、アルゥ?」
あれ空気変わった?
マイアさんはアル?を頭を手で掴み始めた。
「ねぇ、アル~~??マーキュリーさんに下手なことしてないわよねぇ?」
よし逃げよう。なんかこの場にいたくない。すごく!!
「マイアさん。私用事を思い出したので退席しても?」
「構いませんよ」
「それでは失礼します!!」
私は足早にその場を去る
他の生徒もこの空気を感じてそそくさと退散する
「姉さん!!マーキュリー・・・さんの用事って絶対今思いついたやつぅぅう!!ッ!!イダイイダイダイダイ!!」
さようなら。アル?・プレイアデス。貴方のことは忘れない。
それにしても本読み過ぎでは?
※面が厚い者同士の腹の探り合いを見るのって楽しいよね。同族嫌悪がない二人は美しいのかなぁ?
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