"好き"に異性はいらない

辻田鷹斗

第1話 

「絢………。どういうこと?」

服は下着まで剥ぎ取られ、互いの隠したい部分が丸見えのまま親友は顔を近付けてきた。

「うーん?どういうことって?単純だよ。私はカナエちゃんが好きなだけ。」

「そ、それは友達としてでしょ?」

絢の唇は目と鼻の先にあった。今にも接触しそうな勢いだ。

「ううん。違うよ?恋人として好きなの?」

茶髪でテンパの刈り上げショートスタイルの絢はハッキリ言って男勝りだ。けど羨ましい程に小顔で目はパッチリ奥二重。まつ毛も長い。背は160代だけどいつも姿勢がスンッと伸び切っている。私服は水色シャツでその上にベストを羽織ったり、緑色のMA-1を羽織ったり、ジーンズ履いたり、黒の細身パンツ履いたり。私とはどれも真逆だ。

「こ、恋人として!?」

そんな絢が突然衝撃の告白をしてきた。

「そう。恋人として。」

私の狭い1DKアパートのシンプルな自室で。

「そ、それは……。」

絢の表情はニコニコと笑っているが発する言葉は重く芯にくる。

「嫌だ?私が女だから?」

「そ、そんなはずは!」

「じゃあどっち?友達としてはなし。純粋に私を好きか嫌いか。選んで。」

「そりゃあ好きだよ。でも絢が恋人としては求めていたのはびっくり。ましてや同性だなんて。何と答えたら良いか。」

「じゃあ生理的には無理?」

「ううん。」

クスッと笑った。

「良かった。それなら改めて言うよ。カナエちゃん。付き合って下さい。」

目を閉じて強張った筋肉を緩ませる。そしてゆっくり瞼を開く。

「……はい。こちらこそ宜しくお願いします。」

「っ!!本当に!?」

半分脅迫された気がするけど今は絢が落ち込んで欲しくない。

「ただし。」

「ただし?」

「まずは何でこんな状態になったのか教えていただきたい、です。」

絢はキョトンとしたまま辺りを見渡し始める。

「確かに。」

「いや、確かにって。もうテーブルにある空き缶を見ればわかるでしょう。」

「ん?ああああ。飲んじゃったねえ。お酒。」

「そうだけど!なんで昨日の夜飲んで酔って朝起きたら私達裸なの?」

「それは…。ねえ。流れで?」

肝心の裸変化シーンは現状絢しか覚えてないらしい。

「え?流れ?」

「うん。どうやらやっちゃったらしいね。私達。」

「え?やった?」

「うん。セックス。それも女同士水入らず。」

「は?へ?は?はら?」

「じゃないと告白なんてしないよ?いくら相手が1番信頼できるカナエちゃんだろうと。」

「……あっ、えっ。じゃ、じゃあ、キスも?」

「そうね。舌入れてレロレロしてね?」

「嘘……。大事なファーストキスが絢?それも恋人かどうか定かでないまま。あとディープだし。」

「大丈夫。私もカナエちゃんのがファーストだよ。すんごい心臓飛び跳ねそうだっけど。」

「じゃあ、もう私達。」

絢は満面の笑みを浮かべて再び顔を近づけて言った。

「うん。付き合っちゃおっか。カナエ。」

「うん。そうだね。絢。」





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