第38話:その後
「──それで、花島君を攫ってきたと。うん、若いっていいね」
「さっすが俺の幼馴染! 前から妙に男らしいところあるとは思ってたけどここまでとはなぁ!」
「男らしいというか……どちらかというと猪でしょう」
「あぁ、猪突猛進ってやつ?」
「ふっ……猪女(笑)」
──好き放題私の事を言う生徒会メンバーに私は何も言えないでいた。
まい先輩を攫ってから数日が経ったが、未だにあの時の事をこうしてからかわれる始末。
私はお見舞いのリンゴの皮を剥きながらも、そろそろこめかみあたりがピクピクしてきた……。
「あーもう! うるさいですよ! あの時は強引にでも連れ出さないと何も変わらないと思ったんです! そりゃちょっとやりすぎたとは思いますけどね。後悔はしないけど!」
「まぁまぁ、こうして上手く収まったんだから笑い話にするくらいいいじゃないか」
要先輩はにっこりする。
結局、まい先輩は学園長が保護してくれるようになった。
あの後、先輩の母親が本当に警察だのなんだの騒ぎ立ててきたが、その学園長のおかげで今はすっかり消沈している。まい先輩の母親が今までのまい先輩の扱いについて警察に事情聴取を受けているということだけは聞いた。
まぁ、私達が訪問しなかったらずっと食事も与えないつもりだった人だ。しばらくはまい先輩に会えないことになるだろう。
それよりも。
「へへ、でもあの時の茉莉、本当にかっこよかったよ。僕も負けてられないね!」
私の目の前にまい先輩がいる。……勿論、ありのままの姿で。
今は栄養失調によって病室のベッドで横になっている状態だけど、もうすぐ退院できるとのことだ。
「っていうか、今年。僕ら生徒会のメンバーって入院しすぎじゃない? 三か月に一回くらいは入院してるよね?」
「病院の先生とも顔馴染になってきましたしね……はぁ」
そんな要先輩と篠原先輩の会話を聞きつつ、私はまい先輩が早く退院できるようにと、とびきり美味しいリンゴをまい先輩の口に入れてあげるのだった。
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