第2話

 やっほー!おはこんばんにちは!突然だけどあたし、佐藤朝陽あさひは実は数百年に一度しか誕生しないと言われている伝説のSSR佐藤さんなのでーす!


 どこら辺がSSRかと言うとなんとなんと、光を操ることができるというスーパー超能力者なの!光を操るってピンと来ないよね~、わかるよ~。


 どんなことが出来るかって言うと例えば、目のハイライトをめっちゃキラキラできる!そりゃあもうプリクラで盛ったときみたいに星のような瞳なんだよ~。


 他にも、あたしのことをめっちゃ好きになってくれた人とか、あたしのこと超リスペクトしてる人とかにだけ、なんとなんと……、後光を浴びせることができちゃうんだ~。そりゃあもう神様か!っていうぐらいに雰囲気神ってるからね~。よく友達と〈暇を持て余した神様〉ごっことかして笑ってる。


 え?さっきから光の使い方がネタっぽいって?ちっちっ、これだけじゃあないんだな~。ちゃんと光そのものも操れるんだよ。


 例えば真夏の暑〜い太陽とか、あ、紫外線ヤバそうだなって思ったらちょっと明るさ控えめにしたりとか、電球とかライトとかを手を触れずに点灯させたり明るさ調節したりとか。


 これって意外と便利で、食べ物とかをすごく美味しそうに見せたりもできるんだよ!この間なんかそれでクラスメイトの松本君にいたずらを仕掛けたの――。


 ◇


「ねぇねぇ松本くんこれ見て~!」


 私が取り出したのは、実際はどこにでもある何の変哲もない黄色い飴玉。しかし!私の手にかかればこの飴玉があら不思議、ギラッギラの宝石のような輝きと光沢を持つ、かのような高級飴玉に早変わり~。


「あ、あのさ、佐藤さん。毎回しょうもない話で僕を呼ばないでって何度も言って……」


佐藤くんはいつも照れ隠しでそっけないことを言うけど、私の手にある宝石のような飴玉にはさすがに釘付けになっちゃった。


「ふふ~ん、佐藤くんにもわかっちゃった~?すごいでしょこれ、まるで宝石のような超高級な飴玉なんだよ~。とっても美味しそうでしょ~?」


「こ、これが飴玉。こんなに透き通るように輝いている飴玉は初めて見た……」


「でしょ~。これママが仕事で東京の日本橋に行ったときに貰ったんだって。うちにたくさんあるから松本くんに一個あげるよ」


「え、い、いいの?」


 ◇


 そんな感じで松本くんはとっても嬉し恥ずかしそうに飴玉をカバンの中に仕舞ったんだ。ちなみにあたしのこの力は離れてても元に戻すことができる。きっと家に帰って飴玉を確認したときすっごく慌てたんだろうな~。


 次の日、珍しく松本くんからあたしに話しかけてくれたんだけど、飴玉のことを聞かれてあたし我慢しきれず吹き出しちゃったの!松本くん拗ねて席に戻っちゃったから、松本くんの機嫌が直るまで笑いながら何度もごめんなさいしたんだ〜。


 あの時は本当に面白かったなー、ゴメンね松本くん。反省はしてるけどまたいたずらしちゃうかも。


 こんな感じで、光を操れるのってすっごく便利なんだけど。いつでもどこでも使えるわけじゃないんだ〜。この間の肝試しの時なんかホントヤバかったよー!


 うちの学校は年に一回林間学校があるんだけど、その日の夜はお決まりで肝試しをやるの。くじ引きでペアを決めるんだけど、私の番はあっさり終わっちゃってさ~。それで物足りなくてイタズラ心が出ちゃったのかな、他の友達を驚かせようかなって誰にも言わず森の中にはいっちゃったの。


 ルートの途中で待ち伏せるつもりだったのに、いつの間にかどこを歩いているのかわからなくなっちゃって。迷っているうちに隣の木も見えないくらいに暗くなっちゃって、もうどうしたらいいかわかんなくなって、その場でしゃがんで泣きそうになってたの。


 あたし光は操れても光を作ることはできないから暗がりを照らしたりできなくて、後光も私以外の誰かにしか見えない光だから使えない。どんどん気持ちが暗くなって、たぶん鏡で見れたら目のハイライトも消えてたんだと思う。


 ただただ一人でなんにもできずに俯いてたら、上手く言えないんだけど変な感覚がしたの。ゆっくり顔を挙げてその変な感覚が何なのか確かめようとした。そしたら、確実に、ほんの少しずつ周りの景色が見通せるようになったの。


 今は夜で周りは相変わらず真っ暗なはずなのに、不思議と何十メートルも先を見通せるようになってた。それからすぐにあたしの名前を呼んでる声が聞こえてきた。それを頼りにビクビク歩いていると、松本くんが私の名前を呼んでたの。


「佐藤さん、やっと見つけた。ほら、こっちが帰り道だから着いてきて」


 あたしを見つけた松本くんは、無意識なのかな、あたしの手を引っ張ってみんなの所へ連れて行ってくれた。松本くんの手を握っていると不思議と、さっきまであたしの心に広がっていた暗い気持ちが少しずつ晴れていってる気がしたの。


 だからあたし、松本くんにお礼をしようと思ったの。松本くんってちゃんと見た目に気をつかえばカッコいいと思うのに、前髪長くていつも顔色悪そうなんだ。だからあたしの力を使って、ちょっとでも健康そうな顔色にしてあげようかなって。


 スマホのライトでピカっと、あとは肌つやの加減を調整すればほら、明るく健康的でカッコいい男の子の顔になったよ!いつもいたずらばっかりじゃ悪いからね、たまには良いこともしないとっ!


 それに、これで一応借りも返したってことで――


「松本くんが、闇の一族……」


 あの肝試しの日に気づいてしまった。私たち光の佐藤の一族の宿敵。その力の後継者が松本くんなんだって。


「ごめんね、松本くん……」


 私は、あなたを――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

闇の松本と光の佐藤さん スクレ @joyjoy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ