いつまでも、

ゆ〜

第1話

ポコッ


軽快な音。

手を止めて急いで画面を確認するも、通知にいるのは公式のアイコン。

左にスワイプして、また通知をからにする。


もういっそ通知を溜めに溜めてみようかと思うも、煩雑に積み重なる表示に嫌気が差す未来が見えたのでやめた。


ペンを持ち直して机に向かう。

絶賛テスト勉強中なのだ。

しかも結構ちゃんとしなきゃいけない系のやつ。

それでも浮ついた気持ちは抑えられなくて、真隣にはスマホ。



通知以外は見ないって決めてる(意外にちゃんと守れてる)けれど勉強なんてもうダメだ。

気が散って散って進まない。


待っている時間も楽しいなんて、誰から聞いたんだろう。

いつまでも待てる気はするけれど、いつまでも待てるかと聞かれたらきっと無理だ。


勉強のお供の炭酸水も、すっかりぬるくなって気が抜けてしまっている。

せっせと手を動かすが内容は入ってこない。


なんでかって?


……そりゃぁねぇ、


僕は今好きな人からの返信待ってるんですから。



ポコッ


その瞬間に待っていたアイコンが飛び出てきた。


浴衣を着た女の子の後ろ姿。

自分の画像をアイコンにするのは……

という意見を見かけるが「可愛いじゃないか」と思ってしまう自分がいる。


なんと返信するか、既読を付けずに思案する。


自動的に画面が暗くなったらまた触って。

暗くなったら触って。


徐々にスマホが熱を帯びてくるのが分かる。



やっとのことで考えた文章を緊張しながら打ち込み、送信ボタンに触れる。


たったワンタップで会話ができる時代にここまで時間をかけるやつなんて他にあまりいないだろうなとかいうことが頭をよぎるが、それでも触れる。


シュッ


と爽やかな送信音がした。


既読には……



ならない。

うん、知ってた。



それでも、少し願ってしまう。


君に僕の熱が指からつたっていないと良いのだけれど。

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いつまでも、 ゆ〜 @MainitiNichiyo-bi

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