志草先生期待の新作ですな。
こんなに話題になったのに、少し読むのに時間がかかりまして。
私のレビューを読む頃には、皆さんとっくに読み終わってるのやもしれませんが……
いやあ、その代わり、私にこの作品語らせたら長いですよ?
皆様は、例えば密室殺人モノのミステリーを書かねばならなくなった時、
どこから考えますか?
おそらく、一番の肝となるトリックの部分を思いついて、そこから逆算して書いていくのではないでしょうか?
この作品は逆。
のっぴきならない事情で(笑)作家が降りてしまったために、
プロデューサーが代わりに物語を書かねばならないが、
先に予告編を撮ってしまったという設定です。
私ね、志草先生の作品を、格闘技に例えたら、多分合気道とかそういうのだと思うんです。
『力を抜くことに力を入れてる』んですよ!
この物語は、最終的にどうなるかというと、出演者がスキャンダルを起こして企画自体が没になります。
それが、ネタバレにならないのは……
すでにこれをあらすじで志草先生が言ってしまってるからなんですよ 笑
ここがもう面白い。
ここですでにゆるーい力感でしょ 笑
そしてそれが続くんです。
プロデューサー含め、色々な人間がみんなで、最大の肝である「トリック」を考えるのですが、
関係者各位が全員「ゆるい」!!
よくぞこのメンバーを集めた!! 見事だ!!
こちらが、この物語に食いついた分、志草先生はユルさで返してくる。それがまた笑える!
合気道じゃないですか。
随所のワードセンスがこれがまた……天才すぎまして。
この先生は本当に、令和の三谷幸喜だと思います。
これがまた、オチも綺麗に決まるんだ……。
マジで舞台化してほしい。
ドラマでもいいけど、俺は舞台がいいと思う。
俺は絶対見に行きます。
そのためにこの物語を遠くへ広めたい。
是非! 是非ご一読を!!
お勧めいたします!!
応援したくなる快作。志草ねな『密室殺人できるかな』は、30周年特番『推理スペシャル』で『密室トリックが決まらない』混乱を、笑いと風刺に昇華した業界コメディ。冒頭の決めゼリフ「これは、密室殺人です!」(第1話)から、最後のオチまで一気読み。
人物とギャグの立ち上げが巧みで、医師の「『業務上記憶障害』なのです」(第2話)で作品のトーンが決定。以降、中川監督×水柄Pのアイデア出し合戦が加速し、「蜂だ!」(第7話)や「テグスでドアを──」(第13話)など『ありそうで無理』な案が次々空転。極めつけは探偵役・鶴井の珍案に対する「そんな狂気のクレーンゲームがあるかぁぁ!」(第16話)。章末の「未作成」が毎度オチとして効きます。
メタの遊びも痛快。ついにPが「オマージュだもん」(第17話)と禁断に手を伸ばし、「黒魔法石」を持ち出す暴走で創作現場の焦りを笑いへ転換。だが企画は俳優スキャンダルで頓挫。ラストの「トイレの個室、カギのかかったその中で。」(第18話)が〈密室〉を『水柄のキャリアの死』へ転位させ、軽快さと後味の辛さを両立させます。
「密室殺人は『できた』のか?」
ドラマ内の『密室』は最後まで未成立(毒・感電・蜂・矢・テグス・氷・IT家電、そして「黒魔法石」案も放送中止)。代わりに比喩としての密室=水柄の立てこもりとキャリアの終焉が提示されます。つまり『解決された密室』には至らず、密室モチーフを業界風刺のオチに反転させたのが本作の狙いです。
面白かったです。お陰でとても楽しい時間を過ごすことができました。
あるテレビ局のプロデューサーである主人公、水柄が、ドラマの密室殺人のトリックを考えるのに苦労する話。
被害者が椅子に座ったまま死んでいて、それを名探偵が密室殺人だと告げる予告編はもう既に放送してしまった。
ところが脚本家がランナウェイしてしまった為、続きを自分たちで考えなければならなくなり、水柄が周囲の人間にアイデアを出してもらおうと奮闘(丸投げ)する。
各話では、それを披露するという形で展開していく。
面白いのはそのアイデアのポンコツ度合い。
よくこんな出鱈目なアイデアを考えつくなと、作者さんの才能とセンスに嫉妬を覚えました。
私も考えてみたけど、簡単に密室トリックって思いつくもんじゃないなと思ったし、出鱈目なトリックを考えるのも大変だっただろうなと、改めて作者の発想力に脱帽。
登場人物やテレビ局の名前などもクスッと笑える工夫がされている。
最後のオチも気が利いてて、思わずそっちかーいと突っ込んでしまった。
あなたも是非この楽しい作品を読んで、笑ってみませんか?
この作者さんのセンスには、毎回本当に驚かされます。
物語は、「とある推理ドラマスペシャル」を作ろうとすることから始まります。
主人公はプロデューサーの水柄辰也。脚本を担当するはずだった上井乱奈(うえい・らんな)がプロモーション映像だけを残して逃亡(ランナウェイ)してしまったため、急遽自分たちで「密室トリック」を考えねばならないことに。
監督に頼んでみるがうまく行かない(というか水柄がダメだしばかりしてキレさせる)、水柄が自分で考えようともうまく行かない。
上井乱奈の弟子や、更には出演俳優たちにまでトリックを考えさせようとする。
しかし、出てくるのはどれも「ヤバいネタ」ばかりだった。
この辺りのセンスに毎回ビリビリさせられます。
出てくるアイデアのぶっ飛び方がすごく、「よくここまで強烈にひどいことを思いつく!」と読者はニヤニヤさせられつつも、アクロバティック過ぎる発想に舌を巻かされることに。
トリックが実現不可能だと言われれば、前提の設定をありえないほどに歪曲。それはもはや現実の枠を飛び越え、完全なる魔界の産物と呼びたくなるほどへと変貌していく。
そして毎回没アイデアを軸として「未完成になったタイトル」が出てくるのも面白過ぎる。
一話一話で読者に驚きと笑いを提供してくれる、とんでもなく面白い作品でした。
いきなり密室殺人の現場から始まった……と思ったら、実はテレビ番組「推理スペシャル」の制作現場を舞台にした、ミステリーの要素を織り交ぜたドタバタコメディである。
主人公であるプロデューサーの水柄辰也は、事故で入院した本来のプロデューサーの代わりでやってきたので推理ドラマについては素人同然、脚本家はこだわりすぎてぎりぎりになってもストーリーを書かない上に、ストレスで入院する始末。
冒頭の密室殺人のシーン撮影だけができており、あとはトリックを考えて番組を作らなければならないが、水柄も監督の中川徳雄も大ピンチ!
水柄は、とにかくなんでもいいから密室トリックを、と考えつくものがことごとくトリックにならなくて面白い。
薬のカプセルの中身を取り換えるだけの地味殺人事件や、実は自殺だったことにして「殺人事件ではなかった」ことにするなどなど、思いついては採用できないような内容がどんどん出て来るところが最高に笑ってしまう。
はてさて、タイトル通り「密室殺人できるかな」と読む方は心配になりつつもニヤリ、となる作品である。