天津罪

ファシャープ

第1話 畔放 

ガヤガヤ…


「お前、模試の偏差値どうだった?」


ズキン…


「えっとね、5科目で60!国語は68だったよ!」


「え?w」


ズキン…


「低くね?w」


「そう、かな、結構頑張ったんだけど」


「いやいやw、トップ目指すなら70が最低でしょw」

「まあ頑張れw」


……僕は低いのか。


11月も後半に差し掛かっていたある日の午後。


高校受験を目前に控えた僕は今日も机に向かっていた。


今年の夏前から本格的に勉強に打ち込んでいた僕は、自分でも相当ショックだったのだろう。


「……っ!」


声にならない悲鳴を不器用に押し殺した。


自習室で唇を噛んでは、何度も血を口に含んだ。


『勉強しなさい!!』


『ゲームなんてしてる暇あんたにあるの?!』


母の金切り声を聞いては、自分の存在を疑った。


僕の成績を見てはため息をつかれ、こんなので許されると思っているのかといった態度を感じては、僕は自分がキライになった。


そこからは早かった。


学校内の成績は上位に入り、頭が悪いとは次第に言われなくなった。


2月、入試当日。


「よし、やりきったぞ。」


入試を終えた僕は小さくガッツポーズをしていた。


合否発表当日、次々と貼り出される受験番号を見てはワクワクしていた。


154、155、157、158…


「あれ?」


……………足が震えて動けなかった。


「落ち、た。」


僕は悟った。一生懸命に努力しても、報われない努力が存在するんだと。


「なんで…あんなに勉強してたのに。」


母親の泣き声に息が苦しくなった。


不思議と涙は出てこなかった。





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