TURNOver!!

結構な自堕落

第1話「夢見た言葉」

踏みにじられた事があるだろうか―――

例えば、身体を。

例えば、恋人を。

例えば、自由を

奪われた事があるだろうか―――――

例えば、友を。

例えば、功績を。

例えば、自分を。



羨ましく思った事があるだろうか―――

夢見た事がないだろうか―――

この物語は踏みにじられ、奪われた「弱者」による革命の物語である。


▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


「お腹減ったなぁ…」


狭く暗い路地裏にそんなつぶやきが響く。


声の出どころを見ると薄い青色の髪のボロボロの少年が蹲っていた。

彼の名前は狼崎 迅ろうざき じん

彼は腹を鳴らしながらつぶやく


「僕、このまま死んじゃうのかなぁ。やだなぁ…まだ出てきたばっかりだし…彼女、というか女子とも話したこともないし」


彼は今、空腹で死にかけていた。


「食べる物も、助けてくれる人もいない…あぁもう!死にたくないなぁ……」


グチグチと文句を言ってる間にも死が近づいて来るのがわかる。

もう生を諦めようとした瞬間彼の目の前に人が表れた。

メイド服をきた女性

こんな所にメイド服の女性がいる事も異常なのだが、頭が空腹で朦朧としていた彼には

そこまで頭が回らなかった。

女性は突然言った。


「お前、私の仲間にならないか?」


初対面からの唐突な勧誘、聞きたいことが山程あったがそれより―――


「女の子?仲間?まぁ…良いや。ご飯…くれたらなっても、いい…」


そこまで言って彼の意識は途切れた。

目の前で突然倒れた彼に女性は驚く。


「えっ?まって死んだ??………えぇ」


顔をペチペチしながら言う


「あぁよかった気絶してるだけだ…でも運ぶの面倒くさいなぁ…磁石でも連れてくればよかった」


うんしょと迅を抱えた時彼がボソッと呟く


「ハンバーグ」


気絶したはずの少年がか細く、けれどはっきり聞こえる声で呟いた。


「は、ハンバーグ?献立リクエストとか厚かましいな、コイツ」


ため息1つ吐いてから彼女は少年を運んだ。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▲▽▲▽▲▽▲


ハッと目が覚めると知らない天井が見えた。

そして妙にふかふかな地面に驚く


「!?」


困惑して素早く起き上がると同時に気絶する前の事を思い出す。


「助かった…のかな」


ふかふかの正体は布団だったよく手入れされていてとても綺麗だ。

二度寝したい気分だがそんな状況ではない


深呼吸をして落ち着いて周りを観察してみる。六畳くらいの部屋がふすまで仕切られており、真ん中の机をはさんで青髪の青年がいた。


「あ、起きたか」


この人は誰とか言う疑問の前に―――

ふすまで仕切られた部屋の中に、僕と知らない男が2人きり―――


「なにする気!?」

「なんもしねぇよ!!」


開口1番それかよとぼやきながら誰かを呼んだ。するとすぐにメイド服の女の子が来た


「はい、これ」


コトンと机の上にデカいハンバーグが乗った皿が置かれる。


「ハンバーグ!ちょうど食べたかったんだよねぇ」


何日ぶりの食事だろうか、我慢できずハンバーグにがっつく、美味しい美味しいと食べてるうちにすぐになくなってしまった。


「おかわり!」


僕がそういうと青髪の青年がけげんな顔をした。

「まる…ほんとにこんな奴を仲間にいれるんですか?今ん所被害妄想食いしん坊ですよ?」

「どうだろう…意外と見どころあるはずだよ、多分だけど…」


青髪の男とのファーストコンタクトは失敗してしまったらしい、誤解を解こうと口を開こうとするとまると呼ばれている女の子が切り出す。


「自己紹介してなかったね私はおもちまる。まるって呼んで、こっちのコレは磁石、これからよろしく」

「コレって…磁石硬じしゃくこうです。よろしく」

「おもちまるか…珍しい名前だね

僕は狼崎迅!よろしく」

「迅、君ランクは?」


おもちが問いかける。

[ランク]とは個々人の強さによって首元に刻まれた位の事でC、B、A、Sに分けられててその中でも+−と普通に分けられる。

例えばBの中でのB−、B、B+みたいな感じ

C−に近づく程弱いって事で、S+が1番強い。

――僕のランクはというと


「B-ランク、だね…」

「そう。でさ、私の夢に協力してくれない?」

「話聞いてた?B-だよ?世間じゃ弱い方。僕を仲間にしたってなーんもいいことないよ?」

「だいじょーぶだいじょーぶ、ちょうど良いくらいだよ。協力してくれる?」

「いいけど…その、夢ってのはなんなの?」

「国家転覆。」


は!?………申し訳ないあまりの衝撃にカギカッコをつけるのを忘れていた。

――――改めて


「は!??」

続いて僕は言う

「無理無理!無理だよ!できっこない!国を潰すって事は政府に逆らうって事でしょ?政府には高ランクがウジャウジャいるんだよ?」

それに!と続けようとした僕をおもちまるが遮る。

「わかってる」

おもちまるが続ける

「でもさ、考えてほしい。今の国に迅は満足できてる?」

「満足…?」

「自由に生きれてる?」


―――自由。

魅力的な言葉だ、だけどそんな事許されない

―――少なくとも「弱者」で「この国」にいる限り。


「数十年前の戦争からこの国は変わった。

首元に刻まれたこの[ランク]のせいでね。強者は弱者から全てを奪い、蹂躙する―――

そんな世の中でほんとに良いって迅は思ってる?」


「「弱肉強食」」この国でのルール。僕みたいな弱者は大人しく奪われるしかないルール

そんな世の中で国家転覆しようとか言う奴はイカれてる。どんな事を言われても協力なんてするわけないし、したくない。


「まる、いきなりそんな事言っても了承する人いないですって…リストにも乗ってない奴ですし、仲間に入れる必要もないですよ。」

「………」


強者に逆らうなんてまず無駄だ。

そんな事に協力なんてしない方がいい

――――けど。

魅力的に聞こえてしまった。

夢を見てしまった――「自由」を


このランクのせいで散々な目にあった。

捕まって酷い目にあった。

全部全部ランクのせいだ。

このシステムを作った国のせいだ。


「……やる」


チャンスが目の前にあるのに取らないなんてそれこそ弱者のやる事だ


「国家転覆!やる!!」


正気か…?と磁石がやっぱりね。とおもちまるが


「ほら。言ったじゃん磁石」

「……なんでわかったんすか?」

「まぁ、勘かな。後こいつの事を国が追ってたんだよ、だから相当な事したんだろうなってこの国でイカれた事出来る程の奴なら了承してくれるかなって」


そう、僕は追われてた。

理由は捕まっていた研究所から逃げだしたからだ。思い出したくもないあんなところ、毎日毎日訳分かんないもの打たれたり飲まされたり、痛い思いしたり。

まぁ、強い奴の所から逃げ出すということはこの国のルールに反すること、色んな人から追いに追われて冒頭の状態になったってわけ

――思い返してる内に1つ疑問が浮かんだ。


「ねぇ僕が加わって大丈夫?お尋ね者だよね?一応」

「あぁ、そこは大丈夫。お前死んだ事になってるから」


話を聞くとどうやら僕は追われてるうちに餓死したという事になってるらしい。

まぁ、確かに取り逃がしました☆とか言えないから死んだ事にするしかないんだろな。


―――まぁ、なにはともあれ僕は文字通り国を揺るがす大犯罪に協力することになってしまった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▲▽▲▽▲▽▲


「ねぇおもち、国家転覆するっていってもどうすんの?」


しばらく話し、打ち解けた頃に僕は問いかける。


「あぁ、磁石説明よろしく」

「はい!」


元気よく挨拶してどっから出したのかホワイトボードを出してきた。


「え〜っとですね、大雑把に言うと

①政府の主要施設である国会、研究所、及び武器庫の破壊

②低ランク帯を違法に労働させている施設の破壊、労働者の解放。

③政府の人間、及び国王を一回全部倒す。

って感じですね。」

「うん、わかりやすくていいね!だけど人は足りるの?僕は低ランクだし…」

「あ、俺も一応C−ランクだぞ。まるに拾われてここに来たんだ。」

「低ランク2人じゃん!無理じゃん!」


どうすんの?!とぼくが喚く。


「まぁ、たしかに人数も、戦力も足りないね―――だからリストを作った。」


そう言えば磁石がリストに入ってないだのいってたなその事を聞こうとする前に机の上にノートが置かれた。


「これがそのリスト。ここには戦力になりそうな私が目をつけた奴らが書いてあるその中でも次に仲間にしたいのは」


その内の1ページをこちらに見せてくる。


「こいつ、鬼崎涙。赤黒い角に長い黒髪

多分見ればわかると思う」

「なんで最初がこいつなの?」

僕の質問に磁石が答える

「単純だ。そいつは調べた限りクッソ強い

過去には研究所の支部を1個潰している――――しかも単独で」


研究所は場所によって強弱はあれどかなり強固だし、守りも固い。それを単独で壊す戦力

味方にしたら確かに心強い。


「でもいる場所が面倒なんよなぁ」

まるは心底だるそうに言う

「……どこにいるの?」

恐る恐る聞いてみる。


「――――――監獄」

「おっ…とぉ……」


確かに面倒くさいとかのレベルじゃない。下手すれば返り討ちに合う。初っ端から難易度

ゲキムズだ。


「後、補足すると―――これは2人でやってもらいたい。」

「僕と、まる?」

「いや、迅と磁石で」

「「はぁ!?」」


どうやら磁石も聞いてなかったらしい、そりゃそうかさっき僕は仲間に入ったばっかりだ。その仲間に入った人をすぐに仕事に行かせる事もそうだが低ランク2人を監獄に送るのは無謀も無謀、死ねと言ってるようなもんだ。


「なんとかなるでしょ、たぶん。」


僕達の国すら揺るがす大犯罪が幕を開けようとしていた。

――――僕の心に少しの不安を残しながら…







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