不思議な闇のヒーロー達?
授業が終わり、龍弥は椿に話しかけていた。理由は簡単、龍弥はクラス委員長なので担任の宮崎先生に、椿に学校のことを教えてやってくれ、とお願いされたらしい。
龍弥は椿の元へ行き学校説明をしようとした瞬間、椿は驚いたように目を見開き、龍弥をまじまじと見た後いきなり冷たい目つきに変わった。
龍弥はイケメンだからほとんどの女子はまじまじ見た後黄色い悲鳴を上げるのだが椿は黄色い悲鳴をあげずそれどころか異物を見る目であった。
龍弥は途中まで頑張って説明をしていたが、近づいて行ってわかったのが声が震えているということだ。
龍弥が涙目になりこちらをゆっくり振り返って
「青斗お前よく耐えられるな……」
と僕に話しかけてきた。ちょ待てよ、僕だってこの視線は耐えられなる気がせず、授業以外は席につかないようにしようと思うほどだ。
僕は龍弥に耳打ちした。あのそっくりな男子生徒のことを聞いてと、龍弥はぴくり身震いした後恐る恐る冷たい視線を向け続ける椿に聞いた。
「ねえ、君にそっくりな男の子を見たっていう人がいたんだけど、もしかして双子だったりする?」
龍弥は恐る恐る椿に尋ねると椿は冷たい視線のまま
「そうですよ、ですがそれと何が関係するのですか?小鬼さん」
なぜか椿は龍弥のことを名前ではなく
“小鬼さん”そう呼んだ。
僕と龍弥は顔を見合わせて再び椿の方を見た。龍弥もはっきりと小鬼さんと言われたのが分かったらしい。
「ねえ、説明はもう終わりましたか、そろそろ兄に会いに行きたいのですが」
そう言いながら席から離れて教室から立ち去ってしまった。僕と龍弥はただただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
放課後、僕はいつも通り美術部に行き
絵を描いてた。しばらくすると扉から手を振る人がいた。
そこには困った表情の龍弥と、なぜか龍弥に疑いの目を向け続ける椿と、僕を見てゲッとした表情を見せる椿のそっくりさんがいた。
慌てて筆をパレットに置き、龍弥のとこへ行くと少し椿の視線に困ったといいたげな表情を浮かべた龍弥にはどうしたのかと?尋ねると、どうやら部活見学をしているらしく、椿のそっくりさんはどうしているのか?と聞くと、そっくりさんは再び顔を顰めて
「おい、そっくりさん、そっくりさんうるせーよ。俺の名前は炎だ」
と不機嫌そうに話した。炎はムスッとしたまま何か言い返せるものがないかと辺りをキョロキョロ見渡していた。
しかし僕の描いている途中の絵を見た瞬間、その表情は固まり、一歩後退りした。
「なんつー絵を描いてるんだよ。こえーよ」
そりゃそうか絵の中には人の死体を詳しく書いており炎のいるとこからも何が描かれているかがよくわかった。
そう炎はポツリと言葉をこぼし、こちらを恐怖が入り混じった顔で見つめてきた。
椿はというと周りをキョロキョロと見てからつまらなそうに教室から出て行ってしまった。
「あ、椿さんちょっと待って。悪い、青斗行かねーと」
そう龍弥が申し訳なさそうに手を合わせ謝りポーズを取ってそのまま美術室を炎と一緒に椿を追いかける感じで出て行ってしまった。
炎の表情を思い出しそんなにエグい絵なのかと見てみるが僕には少しわからなかった。
本当にあの双子は変な子だな、と僕は思いながら絵の続きを描き始めた。
絵をなんとか描き終わり、僕は家に帰り始めた。僕が住んでいるところは途中で学校が併合されるレベルで子供が少なく、駅に行くには歩きでもなんとか30分でいけるが車があると安心なレベルのドがつく田舎だ。
電車で一時間揺られてその後は親の車で二十分行かないと帰れない。これでも他の高校よりかは近いというのが驚きだ。そう考えながら電車でうたた寝をした。そしてもうすぐ完全に眠りにつくところで頭が前方に倒れていき完全に転んでしまった。
親に迎えにきてもらい、家に着くと僕の日課の某ネット掲示板を見てみた。
そこには一際目を引くスレが立てられており、スレ名は変な奴から狐が助けてくれたんだがというものであった。
昔から妖怪を信じていたりすることもある僕にとっては気になりまくる名であった。僕はそのスレを開き内容を確認してみた。
【不思議体験】変な奴から狐に助けられた件
1 名前:名無し高校生[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:15:00 ID:XXXX
昨日、恋人とデート帰りに人気のない畑道歩いてたら変なモヤモヤみたいなのに襲われた。
存在感だけあって目にはほとんど見えない感じ。怖すぎワロタ。
これって人間じゃねーだろ…。
2 名前:名無し高校生[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:17:00 ID:YYYY
それ狐とか妖怪系じゃね?w
3 名前:1[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:20:00 ID:XXXX
いやマジでマジで…
襲ってきたのは普通の人間っぽいけど、耳と尻尾が付いてる奴ら。
女は髪白くて雪の結晶が散ってる、着物っぽい。
男は髪赤くて狐耳で、軍服っぽい格好。
2人とも狐面付けてた。多分年齢は10代後半くらい。
4 名前:名無し高校生[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:23:00 ID:ZZZZ
おお、リアルでコスプレとか?写真ある?
5 名前:1[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:25:00 ID:XXXX
写真は無理。学生だしw
で、そのモヤモヤ?存在しないみたいなやつなんだけど、
2人が刀とか銃で防いでくれた。
男は炎に包まれ、女は氷を操ってた感じ。
ほんと意味分からん。
6 名前:名無し高校生[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:27:00 ID:AAAA
どこの異世界だよwww
7 名前:1[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:30:00 ID:XXXX
女の方、モヤモヤの魂を鳥籠みたいなのに入れて優しく撫でてた。
悲しそうに、慰めるみたいに。
怖いけど不思議な光景だった。
8 名前:名無し高校生[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:32:00 ID:BBBB
こえーwwwでも何で助けてくれるんだろうな
9 名前:1[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:35:00 ID:XXXX
声出そうとしたけど無理だった。
で、女の子が「夜遅くに出ないで、めんどくさいから」と冷たく言って、
二人は歩いて去っていった。
俺のことは全然気にしてない感じ。
10 名前:名無し高校生[] 投稿日:20XX/XX/XX(X) 22:37:00 ID:CCCC
マジかよ…。狐面双子とか都市伝説かと思ったらガチかww
しばらく見ようとしていたが、
「青斗、お風呂入りなさーい!」
「はーい‼︎」
僕は母さんのお風呂コールに大声で返事をして、パソコンを閉じてお風呂に行った。
あの話はそそられるけどやはり、人間ではないものに襲われるのは怖く少しビビりながら僕はお風呂に入った。
僕はお風呂から上がり、またパソコンを起動して続きを読み始めた。
どうやら結構な見たという意見があったがまだ半信半疑で釣りだろという人も多く、イッチには疑問と不信感が向けられていた。イッチは自分の見たのが本当だとわからせるためにある一つの提案をした。
「分かった本当だってこと見せてやる。学生だから出せない時もあるだろうけど見かけた時は写真撮ってこのスレに貼ってやるよ」
その言葉にみんなは楽しみと言ったり変なコスプレ写真とかは絶対信じないからな。
ということを言う人もいた。僕はイッチを少し哀れと思っていたが、眠気には勝てず。あくびをして布団に入り寝てしまった。
僕は昨日の見たことを思い出して、少しだけ怖さを感じた。
人間にいきなり襲われるのも十分恐ろしいことなのに、見てわかるほどの人間ではないわけの訳の分からない変な生き物に襲われるとは、そう考えながらいつも龍弥が待ってくれている横断歩道付近に来た。
「よっ、おはよう」
龍弥はいつも通りの笑顔で僕に向かって手を振って挨拶をした。
「おはよー、龍弥。結局部活見学はどうだったの?一応帰宅部もありだけど……」
そう尋ねると龍弥は、あはは……と困ったように笑い
「結局どこもしっくり来なかったらしくって、帰宅部になったよ」
そう言いながら、椿から小鬼と呼ばれ続けるのは困ったな。と笑っていた。
一体なぜ椿は龍弥のことを小鬼としか呼ばないのだろうか。
そう考えているといつのまにか校門前まで来ていた。
「青斗ずっと考え事してたな、何度名前読んでも返事もねえし、大丈夫か?」
そう心配そうにする龍弥に、昨日不思議なスレを見たからかな。
ということを伝えると龍弥は苦笑いして
「お前、いちおうい言っとくけど夜更かししすぎるなよな」
と注意をされてしまった。教室に行くと美智子が元気に挨拶をしてきて、しばらくの間話をしていた。椿がする変態を見る目に耐えながらあそこで本を読む精神力なんて持ったこともない。
そう思いながら僕は自分の口走ったことを思い出して、心の中でもがき苦しんでいた。
席につき、本を読んでいる椿に
「おはよう、氷海さん」
と挨拶をしてみると、全く返事をしないことを見ると、まあ案の定だが無視をされていると分かった。チャイムがなり朝礼の先生の話も中の話もぼやけて聞こえていなかった。
今日も数学では訳の分からない図形の話を50分間みっちりと聞かされており、周りの子の中では眠り始めたり、英語の宿題を頑張っている子などがいた。
僕も眠りにつきそうになっていたので、目を覚ますために椿の方を見たら、眠りもせずにしっかりとノートを取り、みんなができないと言って頭を抱えている人が多いのに、全てを解き終えていた。
すごいな、僕はそう思いながらわからせる気が無さそうな解説を聞きながら答えの出し方を覚えようとした。
時はすぎて放課後。僕は部活に行き完成させた絵の紹介文を書き、新しい絵の構想を練っていた。
そうこうしていると帰らなければならない時間になったので、僕は部活を切り上げて家へ帰る準備をして駅に向かい電車に乗った。
電車の中はぼく一人だけ、建物の光や電灯の光が仄かに点々と付いており、その光が田んぼをほんのりと照らしている。僕は、ぼーっとその景色を眺めたまま昨日の掲示板でのスレを思い出していた。
“モヤモヤ”という言葉だけだったら全く怖くないのだが、やはり人間ではないと考えると恐ろしいところがある。
そうこうしていると、目的の駅に着いた。今日はお父さんが残業らしく母さんも車を車検に出したらしく今日は歩きでないといけなかった。
暗くて電灯も全くないので持っていた懐中電灯で辺りを照らし歩いていた。すると松田さんの畑あたりで不思議なものを見た。
あれは何だろうか煙のようにゆらゆらと揺れているのから見て畑で何か燃やしているのかな、と思いながら通り過ぎようとしたのをこのとき僕は後悔をした。
松田さんは夜は怖いから畑で物を燃やすのはしないと言っていたらしい。
そして今の時間はもう8時近くになっている。
だから確実に松田さんは今は燃やしていないはず。じゃあ、これはいったい……そう思った瞬間その湯気は振り向いたような行動を取りこちらに襲いかかってきた。
ヤバい!そう思った瞬間脳内には走馬灯が駆け巡った。その内容は家族愛……などの聖人の鏡のような走馬灯ではなく、殆どが黒歴史かそれに近しい物であった。
その中で何度も駆け巡ったのは学校の帰りに誰もいないことを確認して自作の歌を音程も関係なしで大熱唱していると後ろから、やばくね〜(笑)と笑いながら通り過ぎて行った。
おい、なんてひどいのを思い出させてるんだよ。それ以外にも数々の黒歴史を走馬灯として見て……「家族愛を見せろよ、家族愛を」と最後の言葉を言った。
その瞬間、シュパッと冷気をまとった何か刀で切ったような音がした。その後銃声が響いた。
瞑っていた目を開くと目の前には狐面をつけた少年少女が立っていた。どうやら昨日見た掲示板で書き込まれていた狐の双子だろう。体格からして同じ年齢のように見える。
こちらには全く目を向けずただモヤモヤを見つめて刀や銃をモヤモヤに向けて構えていた。掲示板の書き込みはかなり正しくほとんどそのままの格好であった。
しかし,想像以上に背丈が高い、女の子の方はゆうに170㎝はいそうな高身長である。モヤモヤが攻撃しようと飛びかかろうとしたらピタリと動きを止めた、モヤモヤの手はよく見ると少しずつ氷が広がっている。銃弾が当たった片足は炎がついていた。
あっという間に小さい人魂になっていた、少年少女は影から何か鳥籠のようなものを取り出してそっと人魂を閉じ込めた。少女は魂を閉じ込めた鳥籠を優しく悲しそうな表情でそっと鳥籠を撫でた。何故、何故なのだろうか。
何かお礼を言おうとしたが僕の喉は今までの出来事で声を出すとまた攻撃されるのではと思い声は全く出てこなかった、
「もう夜遅くに出ないで、めんどくさいから」
そう言いながら少女はそんな僕を冷たい視線を向けて、ツカツカと二人は歩き出した。
僕のことを気にしていないように。
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