night heroes〜夜の平和を守りし者たち〜

ねこすけ

謎の転校生

 もう何年前だろうか、僕が人間だった頃は。


あぁ……君は読んでいてくれるんだね、それじゃあ君には教えてあげようか。


僕がnight heroesになって、人間をやめるまでのことを。


_______


「行ってきまーす」


 そう僕は親に言って学校へ向かうために駅へと行った。


僕は大草青斗だ。親や友達から絶妙に運がないということを言われる。


 例えば、僕の名前も原因の一つだ。父と母は僕を産む時ずっと雑草のように図太く生きて欲しいと思っていたらしく、名前を決める時も、スマホなどで調べたりしていたらしい。


だが、読み間違えにより蒼を青と描き間違えて名前をつけてしまったということを両親は大笑いしながら言っていた。この時の僕は初めで両親に怒りが湧いたが今ではそのことは許している。


また中学生の時すごくブームになっていた映画があった。その映画を友達と観ていた時、僕と全く一緒の名前のキャラが出て来たのだが、そいつが主人公を散々バカにして秒で主人公にやられるという、なんともわかりやすい雑魚キャラだった。


友達はなんとも言えない顔で僕の顔を見つめ優しく肩を叩いてくれた。しかし、やはりブームの映画なので、同じクラスの奴、ほとんどがこの映画を観ていたこともあって、学校でネタにされまくったのはいうまでもない。


 電車から降りて、駅から出ると、 


「おーい、青斗おはよう。」


そう言いながら電柱にもたれかかっている。少しチャラそうな外見のやつが現れた。


彼は西宮龍弥(にしみやりゅうや)ぼくの友達だ、彼は見た目に反して学校ではクラス委員長として活動しており、成績優秀、運動神経抜群で、おまけにイケメンな天から二物をサラッともらって生まれて来たようなやつだ。性格もとても良く、みんながぼくの名前をいじって笑っていた時に止めに来てくれるような優しいやつだ。


「おはよう、龍弥」


そう言うと龍弥はニヒヒと笑顔になった。


「よし、学校に行こうか」


そう言いながらぼくの背を軽く叩いて歩き出した。学校に向かって二人で歩いていると、龍弥が噂を教えてくれた。


「今日は転校生が来るらしい。颯太が職員室に用があって行くと見知らぬ男女二人がいたらしい。青斗、多分本当だと思うぞ。まぁ言うても俺はクラス委員なのに聞かされてねーんだよな」


そう笑いながら龍弥は言った。

クラス委員長でも聞かされてはなかったのか。そう思いながら学校に向かって言った。



 校門を通り教室へと入っていく。フワーと欠伸をして机に行こうとすると明るい声で僕と龍弥を呼ぶ声が聞こえて来た。


「やっほー、青っちと龍っちおはよー、マジで月曜日ある理由わけわかめだよね」


そう片手でガラケーをいじってルーズソックスとガングロメイクのギャルのクラスメイトが僕と龍弥に話しかけて来た。


 この一世代前の時代からやって来たようなこの人は同じ学校の友達天道美智子(てんどうみちこ)だ。


彼女は親が元々昭和から平成を生きた人らしく親が死語を使い続けたことで彼女自身も絶望的に今の言葉についていけていなくなってしまったと大笑いしながら言っていた。


「今日さ、英語2個もあるんだけどさほんっと最悪、チョベリバだわ〜」

と美智子は僕と龍弥に向かって大笑いしながら言っていた。


美智子に転校生の噂を聞くとやはり美智子も知っていたらしく、僕が龍弥に教えてもらうまで知らなかったということを伝えると、

「え、やば。みんな知ってたよ。青っち。アーシよりも乗り遅れてるね」 


 ということを真顔で言われた。美智子にそう言われるのは納得いかないところだが、やっぱり僕しか知らなかった人はいなかったらしい。


と少ししょんぼりしていると始業のチャイムがなった。


「おーい、みんな席につけよー」


と担任の宮崎先生が相変わらず大きな声でそう言った。宮崎先生は典型的な熱血体育教師でいい先生なのだがあの熱血さに耐えられずに苦手になるという人たちも多かれ少なかれいるという。(まぁ、僕もあの先生の熱血さは苦手なのだが、)


担任の宮崎先生は大きな声でハキハキと喋り出した。


「今日は転校生がうちのクラスにやってきました。おーい、入って来てくれ」


 そう言いながら宮崎先生は廊下にいる転校生に手招きをしてから黒板に名前を書きだした。周りからは歓喜と男か女かどちらがいいかという論争が起こっていた。


やって来たのは黒髪ロングに赤いカチューシャを身につけた美人さんと言っても過言ではない少女だった。しかも、ぺったんこの胸だが、代わりにお尻と太ももはムチムチである。とてもすごい。まじですごい     


「初めまして、氷海椿と申します」


 冷たく、平坦な声で、礼儀正しく自己紹介をしてからお辞儀をした。全くネタに走る様子もなくthe優等生という感じの少女だった。


座席は王道の空いた席、それは僕の隣であった。先生と僕がなんとか机を運んできた。


椿が席に着くと微かに花のような香りがしてとてもいい匂いだった。


「何見てるの?」


小さく平坦な声が隣から聞こえてきた。椿が無表情のまま話しかけて来たというのが隣のムッとした表情の椿を見てわかった。


「ご、ごめんいい香りして・・・」


と本当のことを話してしまい、彼女の顔はムッとした顔からウワァというドン引きに近い表情へと変化していった。


「キモ……一回地獄落ちたら?」

 これは僕も気持ちが悪いことを言ったけどさ。流石に地獄へ落ちろは言い過ぎじゃない?


僕はそれでも確かにキモいことを言ったので、椿にそのことを謝罪しトイレへ行くためにそそくさと廊下へ行った。


トイレへと向かうと、そこには思わず目を疑う光景が広がっていた。


先程ドン引きした表情で睨んでいた椿が男子トイレから出て来た。……いや違うよくよく見るとこの高校の男子制服を着ている。


まじまじと見すぎていたらしくムッとした表情になり


「……んだよ」


 ということを言っていた。……いや待って、絶対今回そっちが悪いよ、だってさ見るからに女子なんだもん。


表情もやっぱり椿によく似ている、しかし声が若干こちらの方が低いので椿ではないということがわかった。


いやはや、変わった転校生が来たなと思いながら僕は一旦椿のそっくりさんに謝り、急いでトイレに入った。危うく僕は学校で人生を終わらせなければならないようになるとこだった。


 まさかこの後僕は色々なことに巻き込まれるとは想像もしていなかった。


 トイレで一命を取り留めて教室に戻ると椿は変態を見る冷たい目で僕のことを見ていた。


流石にこの冷たすぎる視線を浴びせられながら質問できるほど僕は精神的に強いやつではない。


やはり1番聞いた方がいいのは椿と分かるが僕は結局席には戻らず龍弥の所に行った。


龍弥は椿が浴びせてくる冷たすぎる視線の理由を尋ねてきた。そりゃそうだ転校生に初日からこんな視線で見られるなんて、太るという失礼な言葉を使う以外は滅多にないことだ。


「いい香りがするって言ったら自然が冷たくなった」 


龍弥にそのことを伝えると苦笑しながらそりゃそうだ。と言っていた、その後少し話した後授業開始のチャイムが鳴り響いた。


 授業の間でもだいぶ冷たくヤバイ奴を見る目で僕を見る椿、そんないつ発狂して机を投げるかわからないような感じで僕を見ないで欲しい。


居づらさを感じながら、でも成績を伸ばすためにしっかりと先生の話を聞き、ノートに黒板の文を書いた。そしてちょいちょい僕は龍弥にヘルプの視線を送ったが、困った表情をした後黒板を小さく指差し先生の話を聞くようにとジェスチャーした。


……僕は少しだけフツメンがやったらムカつくことを全くムカつかない感じでできる龍弥に僕は少しムカついていた。


先生は訳の分からない図形の計算の解説を教えていた。


計算は全て違い、答えを書く気も失せていた。


はーあー、早く数学の授業が終わらないかな……と思いながら、僕は大きくため息を吐いて、チラッと椿のことを見た。


転校生だということで周りの女子が話しに来たが、表情も変えず、愛想も良くしていなかったので、朝の休憩時間から椿はもう孤立状態であった。


僕もすでに椿からの好感度は地の果てかもうすでに地の底という次元ではないレベルで好感度は下がっているかもしれない。


あはは……僕はどうやらもうすでに転校生からは危険視されているらしいが、話しかけたらいいのか、それとも他の方がいいのか、まあ、なんとか挽回しよう。


 授業を終えた教室に静けさが戻った。しかし、どこか遠くで微かに不穏な気配が漂っている――この日常は、もうすぐ大きく変わるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る