青春期特有の、あの永遠にも似た時間を思い出しました。何者でもなくて、何かに深く絶望させられたとかじゃなくて、でも毎日「明日地球が終わってもいいかな」と漠然と死がちらついている無色の季節。痛くない死に方を探す主人公は海へ行き、海へ還ろうとします。思慕している「君」は先に旅立ってしまったのでしょう。もういなくなった影はきっと水底には落ちていないけれど、それが主人公をぷかぷかと浮かぶ金魚たらしめています。暗い小説は良い小説。誰かの心の影に寄り添うような、静かな物語でした。
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