第一話 新しい世界、新しい家族、新しい名前
突然だが、俺は今世最大の危機に瀕していた。どういうことかというと今とてつもなく大便がしたい。
むろんおむつはしている。だが、俺の精神年齢はこの体よりずっと上なのだ。
記憶は少しあやふやと言うかなぜかもやがかかったような感じがする。
まぁ、それはこの際どうでもいい。
「…」
羞恥心まで引き継がれているのは誤算だった。
世界神がくれたスキルは意識することでON、OFFができたので、とても便利だった。
今すぐにでも現代の知識で無双したいのだが、そう言った知識がどうやらもやがかかったみたいに思い出せない。
記憶や思い出、便利だったという感覚は残っているが、仕組みや構造にはフィルタ-がかけられているようだ。
早速、世界神には騙されている感が否めないのだが、今は言語を覚えることに注力した方が良さそうだ。
そう言えば他の転生者っているのかなぁ
「あら、おむつを変えましょうね」
「ふふっ」
うっ、こんなことを考えている暇じゃなかった。
何とかピンチを切り向けたが、どうやら俺は本当に転生したらしい。周りの大人が話している内容は分かるので、現状を整理してみよう。
まず、俺の今世での名前は、[ヴォルフ]、[ヴォルフ=ハーティア]意味はまだ分からないがなんとなくいい名前なような気がしていた。まぁ気に入ったのだ。
そして俺は男に生まれることができた。これを知った時には安心した。精神と肉体がかみ合わないのはつらいことだろう。
あまりこういう言い方はしたくないが、その点で言うとあたりといって差し支えないだろう。
家族構成は父の[アレス]見た目は二十代前半くらいの筋肉質な男前という印象だろうか、とても鍛えられていて、いわゆるイケメンというよりも男前という方がふさわしいだろう。髪色は明るい茶色で、かなり長く後ろでまとめられている。奇抜な組み合わせだが、不思議とよく似あっている。前世でいるなら、チャラくて少し関わりづらいタイプの印象だ。
まぁここは異世界だからそんなことはないと思うが、
そして
母の[アルマ]見た目は二十代前半の若妻という感じだ。髪色は青で、見た目はかわいいというよりもきれいなタイプこの人が妻とはアレスもなかなかやるようだ。
ちなみにさっきおむつを替えてくれたのは[アルマ]だ。
まぁ男前だしなんだか強そうだこの世界にも冒険者などいるのだろうか?時間がたつのが楽しみになってきたな。
最後にメイドの[ダリア=レトゥ] 性別は女性で髪色は暗い赤色だ。それにオッドアイを持っている。色は右目が黄色で左が青だ。見た目は50代半ばという具合だろうかそろいもそろって顔立ちが整っているな。うらやましい限りである。
異世界だからだろうか、
まぁ今は自分が一番若いのだが、
またダリアは眼鏡をかけている。
初めて見たときはこの世界にもメガネがあるのかと驚いたものだ。
どうやら俺が長男らしい。しっかり長男らしく振舞おうと思う。
それにやはりというべきか母と分かっていてもアルマにはいまだに恥ずかしいという感情がある。どこか母親だと心から思えていないのかもしれない。
まぁこれは俺の精神年齢も影響しているのかもしれないが、またメイドのダリアでもおむつを替えてもらうときには、未だに緊張してしまう。
しかし、食事が母乳ではなく、ミルクで本当に良かった。
話を変えよう。
ダリアはいいとして
だが、二人ともおそらくというかほぼ確実に前世の俺よりも若いだろう。
だから親という感覚よりも後輩や友達のように思ってしまう。まぁ会話などでぼろが出ないように注意するとしよう。
まぁある程度予想はしていたが、どうやらこの世界は剣と魔法のファンタジーらしい。
時代は、中世ぐらいだろう。
しかし、俺はかなり恵まれた環境に生まれることができたらしく、かなり家は大きい。それに風呂はないが、近くには川があるようだ、これで行水はできるだろう。まだ俺は小さいので、ふろを用意してもらっているが、
それに気づいたことがある。俺は第二の人生をこれまで半年ほど謳歌してきたが、前世の記憶が戻ったのは生まれた直後ではないらしい。
記憶が戻った時から服を着ていたし、最近は母乳以外にも細かくつぶした野菜なども出してもらいるようになった。まぁミルクも離乳食も舌が肥えた俺にとってはあまりおいしいものではないが、そして最後に気づいたことで最も重要な情報が、言葉だけではなく、本や文章にも言語理解が効果を発揮するということだ。神様ありがとうございます。
これで、今まで困難だった情報収集も多少やりやすくなるだろう。
幸い我が家には書庫があるようだしな、しかも俺の部屋の(寝室)の隣だ。
もう少し成長したら、内緒で入って本などを読むことにしよう。
言葉の方は少し分かってきて、たぶん日常会話ぐらいならできるだろう、でも誕生日を祝うのかは知らないが、
おそらく一歳にもなっていない子供が
「おはようございます。父様、本日はいいお天気ですね」
なんて言ったら違和感満点だろう。
違和感で言ったら一切ぐずらず、泣かない現状もどうかとは思うが、とりあえず今の生活には満足しているし、アルマやアレスもしっかりかまってくれるしこの世界の童話や自分の武勇伝なんかを話してくれて、なかなか面白い。
「ヴォルフ様は本当に落ち着きがありますね。まるで大人を相手にしているようです。しかし、あと一週間で一歳だというのにアルス様は狩りや釣りばかりして」
ダリアがそういうと俺を腕の中に抱えながらアルマが
「まぁアレスは意外とそういうことは忘れないから大丈夫よきっと、それよりもこの子が、我が家にやってきて、もう一年がたったなんて、時の流れは速いものね。」
「そうですね、奥様、今日はヴォルフ様の思い出に残るような日にしましょう」
「ええ、そうね」 とアルマが微笑みながら言った。
一切の誕生日は誕生日会などはしなかった。
まぁ、一歳のうちは喋ることもできないし、別に特には気にしなかった。
そうして一歳の「誕生日」を迎えた俺はハイハイやつかまり立ちをしたり、アレスにおんぶや武勇伝を聞かせてもらったりしながら、さらに1年を過ごした。
「ヴォルフ誕生日おめでとう」
みんなで食卓を囲みながらアルマがそう口を開いた。
「母様、ありがと」
そう俺はつい最近ついに言葉を解放したのだ。まぁ使えるには最低限の動詞と名詞だけなのだが、やっと喋れる。これは意外と感慨深いものがあるものだ。
「もう、ヴォルフも二歳かこんな小っちゃかったのが、もういっちょ前に母様だなんて、子供の成長は速いもんだな」
「ヴォルフ様の場合は速すぎると思いますが」
ギクッ!少ししゃべるのが速すぎたか?
「まぁ、俺たちの子だからな」 アレスが親ばかで助かった。
「ふふっ そうね」
今日の主役は俺なんだが、
「ああ、すまない。実は、今日はお前にプレセントがあるんだ。」 おっそうなのか、誕生日プレセントをもらうのなんていつぶりだろうな?
「まずは俺からだな、ヴォル誕生日おめでとう!」
そういうとアレスは俺に少し大きめの木箱を渡した。
「父様、あけていい?」
「ああ、開けてみてくれ」
許可をとって箱を開けてみると中には衝撃的なものが入っていた。
「これは? 短剣?」
「ああ、これは俺の爺さんが昔使っていた短剣だ。納屋を掃除していたら偶然見つけてな、武器屋できれいにしてもらってたんだ」
「御守りにも、採集にも、剥ぎ取りにも使えるぞ、今のお前には十分な長さだろ」
その剣は明確にいいものだと分かるものになっていて、素人目にも切れ味が良さそうに見える。
「ありがとうございます」俺がそういうと、
「おう、お前は冒険談を聴くときに目を輝いていたしな」 アレスは自信満々にそう答えた。
「次は私ですね」ダリアがそう口を開くと今度は小包みのようなものを俺に差し出した。
「ダリア、ありがとう」俺がお礼を言いながら小包みを受け取ると同時にあけると
中には純白のハンカチが入っていた。よく見るとこっちの文字で俺の名前のイニシャルと花が刻まれている。どうやら縫ってくれたようだ。
「うわ~きれい」
と正直な感想を漏らすとダリアは嬉しそうにほほ笑んだ。
「最後は私ね、あなたは私が本を読んでいるといつもうらやましそうにのぞき込んできたわよね」
そういいながらなんと魔物図鑑をくれた。
「母様、大事にしますね」
「ええ、喜んでくれてよかったわ。まだ読めないと思うけど、大きくなったら読みなさい」
これはとてもありがたい。今日は書庫にもぐりこむ前にこれを読もう。
「どれどれ」
今日は俺の第二の人生で最も印象に残った日になった。一年前のダリアの決意が現実になったのだ。
そして、一年前より少し伸びた髪を母が優しくなでてくれた。
そうして、二回目の誕生日を迎えた俺は一つあることに気が付いた。
実は俺の髪の毛はアレスとアルマと違って紙が白色だし、眼の色だって赤色だ。
異世界だし、遺伝の規則性があっちの世界とは異なるのかもしれないが、少し不思議だな。
まぁ気にしても仕方がない。そんなことを考えつつ、俺はアルマにもらった魔物図鑑を読みながら寝落ちをした。
意外とこの世界危険なのかもしれない。
だって、見覚えあるやつがいると思って説明を読むと
スライム
・体長 十五cm~一.四m
・繁殖方法 分裂
ある程度成長すると分裂する。
・生態 低い知能を持つ低級の魔物。しかし主に子供や女性などが白骨化した状態で体内から見つかるなど大変危険。大の大人であれば、基本的に討伐可能。弱点の核を壊すと死滅する。ゲル状の部分はポーションや魔道具の材料として使われる。
魔石兼核である部分は、基本的に体の中心にある。斬撃属性の武器で攻撃することを推奨する。
そんな感じでとても、恐ろしい。
これは気を付けないと足元をすくわれる可能性があるな。
それにしてもこの図鑑、めっちゃ詳しく書いてあるし面白い、アルマには感謝しないとな。
そして、翌日俺は今世初の隠密行動を決行しようとしていた。
そう、書庫に潜入しようとしているのだ。両親が寝ているのを確認すると、ベットから飛び降りたり、寝室から抜け出す。そして忍者のようにハイハイをしながら書庫の扉を開ける
昨日の図鑑やアルスの冒険談で、感づいてはいたが冒険者や魔物の類は存在しているらしい。
そうするとやはり、男たるもの魔法が使ってみたい。
なので、この世界の常識などを知る前に魔導書を読むことにした。
「魔法系の本は、、ここか」
ちょうど俺の背でも取れそうな場所に”魔法入門”という本を見つけた。
「これが良さそうだな」
ちょうど良さそうな本を見つけると、夜明けがくるその前までその本を夢中で読みふけった。
そして、何とか両親とダリアに見つかる前に寝室に戻ることに成功したが、疲れて寝てしまった。
この世界は魔法が使える人間は、6割ほどのようだ。そのため日常生活にも使用されている。
現に、小さいころの俺の風呂はアルマに魔法で沸かしてもらっていたし、
たしか詠唱は沸き立てだったかな、怖いから詠唱しないけど
急に手の上にお湯が出てきたら余裕で泣く自信がある。
こうして、昼間はよく寝て夜は書庫で魔導書を読み漁る日々を続けていくと魔法についてかなり知ることができた。
どうやら魔法とは詠唱と魔力によって引き起こされる現象らしく、詠唱は基本的に完全詠唱と簡易詠唱があり、簡易詠唱はかなり高等な技術らしい。
まぁ、よくある設定だな。
そして、魔法には様々な種類がある、例えば、火炎魔法、
さらに面白いのが、この世界の魔法には、初級、中級、上級というくくりは存在せず、魔法使いの階級は魔力の総量と使える魔法の属性の数の合計で決まるようだ。
だったら魔力と詠唱さえあれば魔法が使えるのかといえば、それは違う、どうやら魔法を使用するにはイメージが重要らしく、例えば火球(ファイアーボール)の魔法だったら、炎が、燃え盛る情景とそれを球にして射出するイメージが重要になるらしい。
じゃあ隕石が落ちる様子を思い浮かべて詠唱すれば、隕石を落とせるんですか?と思ったが、魔法は起こす現象と魔力量、そして実際に見たことがあるかと言うことが重要だそうだ。なんなら詠唱が決められているのは基本となる魔法ぐらいのもので、ほとんど先祖代々の魔術だったり、個人が開発したり、など自由な物らしい。
いつか、オリジナルのかっこいい魔術をつかってみたいものだな
そして、そんな魔力量は限界まで使い続けたり、魔物を倒し、魔石を割ることで上限を増やすことができるようだ。
魔物は現段階では、倒せない。と言うわけで俺は翌日から魔法の練習を内緒で始めた。
練習する魔法は水魔法の水滴(ウォーター)だ。
理由としては、危なくなく処理も簡単でイメージがしやすかったからだ。
「染み出せ」
詠唱をしてみると指先から、水道を閉めたときの’ポチャン’と言った感じに少し水が指先から発生した。
初めて使ってみた魔法だったが、意外と簡単に出てきた。
これで、俺も魔法使いの仲間入りかな
「あっ、 …」
喜んだら簡単に消えてしまった。
集中力を維持し続けるのが、重要そうだがこれを戦闘中に咄嗟に使えるだろうか。
こめる魔力量を増やすことで効率的に持続的に魔力を消費出来るはずだ。
なんだか少し疲れたなこれが魔力切れか。
酷くなると、最悪死ぬんだったか今日はこれぐらいにしておこう。
無理、ダメ、絶対
このように昼間は寝たり魔力を鍛えたり、アルマと一緒に外に散歩に行ったりして過ごし、夜は書庫で魔導書やこの国のことや常識、魔物、種族について調べて行った。
そのような生活をまた、一年続けて行った。
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「「「ヴォルフ」」」「様」「「「誕生日おめでとう!」」」
「ありがとうございます。父様、母様、ダリア」
「じつは、今日はお前に相談があってな」
「そうね」
なんだか、厳かな雰囲気だな。
俺が何かやらかしてしまったのだろうか。
「あともう一つ大事な、話があってな」なんだろうか雰囲気的におめでたい感じだ
「実は、妹が生まれるんだ」
ええー、まさか予想が当たってしまうとは 驚いてアルマのお腹の方を見ると
アルマは微笑みながら、お腹をさすっていた、確かに言われてみると少し膨らんでいる気がしなくもない。
「おめでとうございます。母様」
「ありがとね」
安心したと同時に俺はそれを伝える決意を強める。
今日は俺にも言いたいことがある。
「父様、実は僕、剣の稽古をしたいんです。稽古をつけてほしいんです」 アレスは引退する前まではB級の冒険者だったらしく、弓矢と剣で様々なモンスターを討伐したり、各地を旅したりしたらしい。
何事にも、強さは必要だろう。
特にこの世界は魔物のついでに剣と魔法のある世界だ。
「そうか、おまえももう、剣を握りたい年か」
「少し早いんじゃない?あなた」
「う~ん」
そう言ってアレスはしばし考え込む
「わかった。稽古をつけてやろう。その代わり魔法の練習と勉強も母さんとしっかりするんだぞ」
「ハイ! 頑張ります」 別に魔法も練習したかったし、一石二鳥だな。
ちなみに俺は一年間の勉強と魔力鍛錬のおかげもあって、かなりの進歩を遂げたと言っていいだろう。
そして、やはり俺の鍛錬は正しかった。最初は5分も魔法を維持できなかったけど、魔力切れ、回復、魔力切れを繰り返していくうちに徐々に持続時間が増していったのだ。
本気を出せば1時間ほどは、水を出し続けられるほどに、
これって、結構頑張ったのではないだろうか。
「じゃあ、明日から始めるか。 朝食を食べ終わったら、外に来い」
「ハイ!」
そうして俺は誕生日を過ごした。ちなみにプレセントは剣術の練習用の木剣と植物図鑑と髪の毛用のくしだ。
木剣と図鑑はともかく、くしは男の子に送るものなのだろうか、まぁこれは髪の毛をかなり伸ばした俺にの原因があるかもしれないが、
ダリアのセンスがわからない。
そんな楽しい時間を過ごし、床に就くとあっという間に夢の世界に堕ちて行った。
翌日、俺は顔を洗って朝食をとった後、外に出て準備体操をしている。
「なんだ、その変な動き?」
「こうするとケガしにくくなるんですよ。父様」
「ふ~ん、よし、そろそろ始めるか」
「はい」
「まず、剣を振るう上で重要な心構えを伝えよう」 そういうとアレスは真剣なまなざしでこっちを見据えた。
「お前はどうして剣を振るうんだ?」
「いつかできた、大切なものを守るためです」 そう、正直に答えるとアレスは驚いたように目を見開いた後こう続けた。
「お前は、本当にしっかりしているな、生後半年で泣かなくなったと思ったら三歳のころには、こんなことを言うなんて、俺がお前ぐらいのときはまだ、母さんに抱きついて指をくわえていたと思うんだがな」
でも、一応注意をしておこう、まず剣は人や生き物を殺す道具だ。使い方を誤れば取り返しのつかないことが起こる。特に初心者は剣を持つことで、自分が強くなったと勘違いすることもある。だから、お前は常に考えて剣を握りなさい。剣を振るった後、後悔しないように」
その心構えを俺は真剣に聞く、そしてこうも思う。やはり、この世界は前の世界とは違うんだ。考え方を改めなければ。
そう覚悟をしていると、アレスがパンッと手をたたいた。
「よし、じゃあまずは剣を振ってみるか」
「はい!」
そういわれたので、準備運動がてら木剣を振ると勢いで用意してもらった木剣がへし折れた。
「「えっ!」」
「ちょっと待て、お前に魔力循環が使えたのか」
驚いているとしらない言葉とともにこんな質問を投げかけられた。
「なんですか?魔力循環って?」
「そうすると、力がえげつないのか?」
そういわれる俺の表情は狸に化かされたような表情をしていただろう。
それもそのはず、だって全く身に覚えがないんだからな。
今の今まで自分の力のことなど全く気にかけたことがなかった。
前世の感覚はあまり覚えていないが、そこまでの感覚のずれはなかったはずだ。
だったら、何が今までと違ったのだろうか。ない頭で考えていると、ある過程にたどり着いた。
それは力を込める意識だ。
俺は剣を振る時、あんなことを聞いた後だったから、準備運動がてらとはいえ強めに力を込めて振った。
でも、なんでこんなに力が強いのだろうか。
そう頭を悩ませていると
「まぁ、ちょっと力が強いだけで剣を握れなくなんてならないから気にするなよ」
「はい」
別に気にしてはいないのだが、
それにしてもアレスは本当にいい親だな
普通、気になると思うのだがこっちのメンタルケアまでしてくれるとは
そういうことで稽古を再開することにしたのだが、力はなるべく入れないように心がけて剣を握る。
「よし、じゃあ打ってこいヴォル」
「はい」
そういって俺はとりあえず踏み込んで、アレスの太ももにめがけて木剣を振りかざす。
しかし、その剣はアレスに、届くことなく難なくはじき返されてしまった。
その実力とあまりにあっけなくはじかれてしまったので驚いていると、
「どんどん、打ってこい。」
と余裕で言われたので少し、イラっと来た。
今度はこっちが驚かせてやる。そう意気込んでまた踏み込んだ。
さっきとわざと同じ踏み込み、俺はまだガキだし、アレスは油断を少なからずするだろう。
また、はじかれるそう思った瞬間、思い切り飛び上がり頭に向かって剣を振り下ろす。
よし!捉えた。と思ったのもつかの間、ぎりぎりで、またはじき返されてしまった。
「くッ!」
「惜しかったな。だが、さすがまだに当たってやれねぇな」
残念だ、あれから十数回剣を交えたが、惜しかったのはあれだけだった。
力は人より強いのかもしれないが、めちゃくちゃ疲れた。
剣を使うなら、スタミナつけないとなぁ
「今日はここまで、本格的な稽古は明日から始めるぞ。」
「あと、夕飯のときに魔力循環について教えてやる。」
「ありがとうございました。」
そうして木剣を持ったまま家の中に上がっていく。
明日の魔法も楽しみだな、アルマもしかすると驚くのではないだろうか。
アレス視点
「俺は夢でも見ているのだろうか」
俺は小声でそうつぶやいた。
たった今剣を握ったばかりの子供が、フェイント入れてきやがった。
剣圧も、下手な大人よりも鋭い、当たったたら痣できるぞあれ、
それにあのジャンプ、自分の二倍以上は飛んだぞ
あいつはもしかすると剣を握るために生まれてきたのかもな
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