啓斗POV

おい」麗奈がノックもせず部屋のドアを開けて入ってきた。何も言わずに座っていると、すごい顔でこっちまで詰め寄ってきた。そんな元気がこいつにはあるんだな。「お前なんで他の人に俺が押したって言わないの?」と聞くと、「は?そんなの淵が可哀想だからに決まってるでしょ。親友に押されて死んだって話なんて誰も幸せにならないじゃん。あんたのことなんてどうでもいいけどね。」そうか、そうだよな。結局お前が一番淵のことを考えてたってことか。親友なんてものネットの広告のようなものなんだろう。そこに真実なんてないんだ。「なんで学校来ないの?あんた自分が可哀想だとでも思ってるの?」と言われた。俺が可哀想かだって?悪者が可哀想じゃないことなんてあるのか?誰もそれを可哀想だと思わないだけだ。ブルブルと俺のスマホが震えた。麗奈と合っていた目を逸らしてスマホを見てみると、一瞬体がフリーズした。「何よ」麗奈も覗き込んできた。麗奈も動かなくなった。そのメッセージは、桃花からのものだった。「なん、、で?桃花からメッセージが来るの?」俺が知りたかった。来るわけがなかった、きたとしたら、それはイタズラか、時間で送られるように設定されたメッセージなのだろう。開いてみると、そこには「やってくれると思ってたよ。啓斗なら。」と書いてあった。どういうことだ?なんのことだ?と思っていると麗奈が悲鳴をあげた。「どうしたんだよ?」と俺が聞くと、俺から逃げるように、縮こまった。親が「啓斗何してんの?」と部屋まで急いできたが、「クモが出てきただけ」というと、縮こまってる麗奈を見て帰って行った。しばらくして落ち着いたとうかに話させてみると、「桃花は私のことを、啓斗を使って殺そうとしたのよ。桃花は、麗奈がノートを見つけて淵と付き合うことを、予測していた。というか私がノートを取るように、私にあらかじめ見せた。そして全員どんな性格だか知っていたから、淵が仲直りしようとして、二人が一旦仲良くなることも、私が調子乗ってノートで付き合ったことについてどうせ話すつもりだったことも、それを聞いた啓斗が仲直りしたところからどん底に落とされた気分になることもわかっていたんだよ。だから、啓斗を利用して、自分が手を汚さなくても、麗奈を殺せるようにしたんだ。」ほんとにそんなことができるのだろうか?自分は自分の意思で動いでいるはずだ。「啓斗に冷たかったのもそういうことだよ。啓斗が麗奈のこと嫌いになるように仕向けてたんだ。ずっと前から。でも啓斗が離れようとしても淵がそうさせないのを知ってたんだよ。」そうだったとしても、人のせいにしてはいけないんじゃないだろうか?俺は結局やったんだ俺は、怪物だ、そうだったとしても甘い匂いに誘われて、やってしまったのは俺なんだ。俺ら二人はそのまま夜まで泣き続けた。自分が誰かもわからずに。

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