啓斗POV
「付き合ったんだって?」と俺が送ってみる。すぐ既読がついた。「そうなの」「おめでと?」「何そのクエッションマーク」「あのさ」「うん」「淵がとうかのこと覚えてないっぽいんだけどどういうこと?ショックすぎて忘れてるってこと?」既読はついたものの返信がしばらくこない。なんか用事でもあったのだろうと、ご飯を食べに行こうとすると、スマホが振動した。「そうじゃないよ」「わかるの?」「わかるよ」「てかお前とうかとほぼ親友みたいなものだっただろ。なのに淵と付き合うってどういうこと?」「後で会える?全部話すよ」「今日はずっと暇」「じゃうち来て」「今から行くわ」
会話に飲み込まれてて親が階段を上がってきていたのにも気づかなかった「昼ごはんだよ。手伝いなさい。」「うん。わかった。」と言ってキッチンにおいてカトラリーをとった。「ごめん。母さん出かけてくる。」母親がえ?と言った気がした、多分帰ったら怒られるだろう。何か言われるだろう。もしかしたらもう外出するなとか言われるかもしれない。だがそんなこと俺には関係ない。俺は過去に囚われた人間なのだ。今すらも生きていない。俺は走り始めてしまったんだゴール直前でスタート地点へと、いやそれよりもっと先へと。
麗奈の家にはすぐについた。インターホンを押すと麗奈がでてきた。「早いじゃん。てか汗かいてるじゃん、走ったの?走る距離じゃないよ?w」質問に答えるよりも早く押しのけるように中にはいり、「そうだよ」と言う。「さっきの話どういうこと?」とすぐ切り出すと「まぁ座りなよ。」と言われて気が進まないが、リビングにある椅子に座る。麗奈はお茶のペットボトルとコップを持ってきた。ゴポゴポゴポゴポお茶を注ぎながら、麗奈は口を開いた。「そっか気にするよね。啓斗、とうかのこと好きだったしね。」なんでこいつは知っているんだ。誰にも言ったことはない。淵にすらも、いや淵に言わないのは当たり前かもしれないが。とうかにすら知られまいとしていたこの気持ちを。「俺のことはどうでもいいから。」そんなことが聞きたいわけじゃない。「そうだよね。じゃぁぶっちゃけいうよ。とうかは人の性格とかがわかるんだよ。」何を言っているんだ。なんの説明にもなっていない。「そんな奴いくらでもいるだろ。」「ううん。そういうレベルじゃなくてその人がどういうことになったらどういうことをするのかってことが正確にわかるんだよ。超能力者ってことだよ。」淡々と喋っているのが逆に気持ち悪い「お前、 ・・俺のことバカにしに呼んだのか?」勢いよく立ち上がった。帰るつもりだった。「そんなわけないじゃん。これを読んでよ。」俺はここで帰るべきだったのだ。麗奈が見せてきたのはピンク色のノートだった。
疑いながらも受け取ってみる。表紙には上田桃花と書いてある。そのノートをめくって飛び込んできた文字は、とうかの文字だった。プロファイリングと呼ぶものだとうか?まず淵についての情報がぎっしり書かれている。確かに詳しい。そして賛成できるところも多い。親友である俺もわからないことが書いてある。しかし彼女だったので当たり前だろう。十数ページにもよる淵のプロファイリングの次は、俺の名前が書いてあった。俺は少なからず喜んだ。
喜べたのは一瞬だけだった。圧倒的に気持ち悪い。俺の知らない俺までもが書かれている。自分が向き合ってこなかったものがここには書かれている。吐きそうになった。顔を上げると麗奈がこっちを見ていた。麦茶を飲み干した。「ね。本当だったでしょ。」自分もそうだったかのような同情するような目でこっちを見てくる。俺はいまだに信じていない。超能力なんてものがあるわけがない。だがあまりに俺のことを正確に知っていた。興味がないのにも関わらず。「そうなるよね。私も最初にとうかに言われた時驚いた。信じていなかった。このノートを見せられるまでは。」見せられた。仲がいいと言っても、確かに驚いただろう。というか、こんなものを見せられたら友達ですらいられなくなりそうだ。まずこんなノートを作っていたことが謎ではあるが。「でもそれと淵がとうかのことを忘れてるのとはどういう関係があるんだ?」「最後まで読んでみ?」と言われて、躊躇しながらも最後のページまでめくって読んだ。他と比べて大きな文字で(ありがとう淵、私の記憶は消させてもらうよ)と書いてあった。記憶を消せる?だと?そんなことできるわけないだろ。「できたとして。とうかはなんでそんなことしたんだ?」「知らないけど、私のことは忘れて新しい恋を見つけてー。的な感じなんじゃないの?」なわけないだろ。お前じゃああるまいし。本とかではあるあるだが実際そんなことやろうと思うか?まずとうかが自分を忘れて欲しいと思うと思えない。「まぁ分からないけど、一旦置いておこう。」こいつとこのことを話しても無駄だと思った。「うん」まだ問題が残っている。「なんでお前はそれで縁と付き合ったんだ?とうかの友達だろ?ならとうかがどう思っていようが普通淵とは付き合わないだろ。」「淵はとうかのこと別に好きじゃないんだよ。」そんなわけがないだろ。そんな誰とでも付き合うような男だった覚えはない。まず答えにすらなっていない。だからなんなんだ。好きでもない奴に俺は負けたというのか。
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