第5話 池にて
「池にて」
カルガモの群れ、マガモの小さな集まり
釣り池、睡蓮池、庭園池、それぞれに集まる。
歩くカルガモ。歩くマガモ。
池では優雅だが、陸では、太目の体の両脇にある足で、
尻を振りながら内股で不器用に歩く。
池の周りを歩く姿を時々見かける。
人馴れしていて、逃げない。
至近距離で描く 目が合う 真ん丸の目で
表情がある。やさしい目で、私を見てくる。
鉛筆を走らせている間、同じ姿勢でいてくれる。
首の曲線が美だ。
頭の形は意外に複雑で、見る角度によって、いびつだ。
背中へ自然に流れるおおらかな動きは、翼を広げる力にも見えてくる、
美だ。
美そのものが、そこにはある。
飛び立つ 風切り羽が 低く鋭く ヒュンッと音を立てる。
池に降りる 水かきのある足で 微かな音だけたてて着水する。
私は手を止めて、ぼんやり眺めていることもある。
目前の出来事を流れる時間のままに。
マガモは、暮れる日の中、
池の縁に片足立ちで並んで、首頭を背中側へ、翼の中に丸め込む。
目を閉じて、眠りはじめる。
人工池の循環の水音だけが聞こえる。
静止したマガモの影が水面に揺れる。
私は、黒く塗り潰したシルエットを描いた。
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