告白
「あえて言いたくもないし、聞きたくもないと、思うけど・・・」松山は言いだした。
これまでずーっと気づかれないようにしてきたし、それに長い間苦しんでもきた。
だが、ここにいる人たちの命がかかっているとしたら、隠しておいていい事じゃない。
「どうしたんです?」安藤が言って、他2人も注目した。
松山は、スラックスのポケットから、小さなレザーのコインパースをテーブルの上に出した。
「何ですこの小銭入れ」美紅が言った。
えりちゃんが、それを手にして真ん中のスナップボタンを外すと、コインパースは一枚の鹿皮になって、中に入ったものがテーブルに散らばった。
「えり!」安藤は怒ってえりちゃんの手を叩いた。
えりちゃんは、泣きはしなかったが、口をへの字にして母親をじっと見た。
「あぁ大丈夫。ごめんねえりちゃん」松山はテーブルに広がったものを集めた。
入っていたのは数種の錠剤だった。
「これ・・・」新卒二人にはそれが何の薬かは分からなかったが、安藤はさすがに老人施設の管理栄養士だけあって、そのうちのいくつかには見覚えがあった。
「
「そんなの全然気づきませんでした」テーブルの上の錠剤を見ながら安藤が言った。
「もう長いんで、だいぶコントロール出来てますから・・・」松山は安藤に向かって言った。
「あの・・・何もそんな事ここで話さなくても、良かったんじゃないですか?というか今それを話したのは何でです?」薫が言った。
「
手が震えていた。
「それも自分だけのことで、それぞれみんな違うのかもしれないけど・・・」松山は少し
「
「みくちゃんなかないで!」えりちゃんが下から美紅の頬を触る。
「普通の人にはわからない感覚って、それ俺のことじゃないかって・・・これまでのことが全部俺に関係してるなら、その感覚も俺のものを感じているのかもしれない」
「・・・・」
「だとしたら、初めてそれに当たったら、かなりのショックを受けるだろうことは予想できる。正直並大抵じゃないから」松山は笑って言った。
「言ってることは判りました。でもそんなことで松山さんの・・・なんていうか、価値は全然揺らぎませんから!」薫がやや声を荒げて言った。
言って聞かせるような口調だった。
「でも、客商売するには困るんだよ・・・信用だからね」松山は言った。
「私たちみんな、
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