自衛隊怪談

空原涼馬

第1話 広報館

B3曹という、三十代の陸上自衛隊員から聞いた話。


彼の勤務していた駐屯地には「広報館」と呼ばれる小さな博物館があったそうだ。

展示されているのは、旧陸軍で実際に使われた兵器や、ご遺族が寄贈した軍服。

由緒正しい資料館ではあるが、隊員のあいだでは「幽霊が出る」と、まことしやかに噂されていたそう。


今から十年ほど前。

B3曹は一般見学ツアーに警備要員として同行していたそうだ。

特に異常もなく、見学を終えた人々が順に退出していくのを見守っていると

四十代くらいの男性客が、少し興奮した様子でB3曹に話しかけてきた。


「いやあ、二階にあった蝋人形とジオラマ、すごかったですね!」


B3曹は一瞬、返す言葉を失った。


なぜなら、その広報館は最初から最後まで平屋建てだからだ。

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自衛隊怪談 空原涼馬 @Sora_kwaidan

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