おてがみ
宇地流ゆう
おてがみ
2057年10月10日
リカちゃんへ
このお手紙がちゃんと着くといいな。リカちゃんが転校したあと、学校はつまんない。さみしいな。ママは、「すぐ会える」と言ってたけど、きっと「優しいウソ」ってやつだよね。だってリカちゃんはずっとずっと遠くに行ったんだもん。ねえ、宇宙船ってこわくないの?おへんじ書いてね。
ルカより
2057年10月16日
ルカちゃんへ
お手紙ありがとう。宇宙船はこわくなかったよ。パパは偉い人だから、いちばんいい客室に乗れたよ。おっきな窓から地球を見た。とっても青くて、きれいだから、ルカちゃんに見せたかったけど、写真を送信するのは、お金がかかるからだめって。来週から、あたらしい学校に行くんだよ。ちょっと、きんちょうするけど、ルカちゃんからもらったノートを使うのが楽しみ。またお手紙かいてね。
リカより
2057年11月30日
リカちゃんへ
きのう、やっとおてがみが届いたんだよ。やっぱり、遠いところからのお便りは、時間がかかるみたい。
さみしくて泣きたいとき、お月さまを見ることにしてるよ。リカちゃんがあそこにいて、月の学校でわたしのノートを使ってるんだ、って思ったら、ちょっと悲しくなくなる。でも、新月の時は、なんだかリカちゃんが消えちゃったみたいに思うから、だから、ぜったいお手紙かいてね。
ルカより
2058年3月5日
ルカちゃんへ
月には大気がないから、地球がいつもとってもきれいに見えるんだよ。でもね、こないだパパの管理しているドームが事故にあって、人が死んじゃったの。空気がないって、怖いよね。ルカちゃん、元気でいてね。
リカより
2059年4月12日
リカちゃんへ
今日、パパとママと喧嘩した。パパは、リカちゃんのことを「イマジナリーフレンド」だって言った。月にいるリカちゃんなんて存在しないんだって。私は12歳にもなって、子どもみたいな妄想に取りつかれてる、中学校に行ったらイジメられるからやめなさいって。ひどいよね。だって、リカちゃんからのメールはちゃんとパソコンに届いてるのに。
ルカより
2070年9月27日
ルカちゃんへ
あのあと、こっちで色々あって、お手紙を送れなかったの、ごめんね。でも私はここにいるよ。ルカちゃんは、お手紙が来なくても、ずっと私を待ってるの、わかってたよ。きっとずっと会えないけど、ルカちゃんがくれたノートが証拠だよ。
そうだ。それから……きっと、このお手紙が着く頃には————
お誕生日、おめでとう。
リカより
おてがみ 宇地流ゆう @yuyushirokuma
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