魔界を統べたインキュバスにして最強の大魔王バルガスは、人間界を支配する?
吾輩は魔王である
第1話 大魔王バルガス、人間界に舞い降りる
「ここが人間界か」
強力な魔力によって創り出した闇をくぐり抜けると、そこは魔界とは違い自然豊かで広大な地だった。
空は青く美しく、空へ飛び立ち見渡せば森や山々、湖や川、海と見渡す限りに自然が溢れている。
褐色の荒れた大地に暗黒に包まれた魔界にはこのような自然はほとんどなく、人間界には惹かれるものがあった。
「バルガス様、ここが人間界です。驚いたことにこの世界には魔素が存在しておりませんでした。魔力を一切感じられません」
「魔素がないだと……?」
「はい、ですが心配ありません。バルガス様が創られた闇を通じていずれは魔素が満たされていくでしょう。そうなれば魔物たちも住みやすい世界へとなるでしょう」
この人間界には魔素が存在していなかった。
人間は魔力を使うことなく生きているようだ。
魔界からは闇を通じて魔物たちが徐々に人間界へと広がっていく。
この世界がどれ程の規模でどのような人間が生息しているのか配下に調べさせる。
その間に私はここに最強の塔を創り上げるとしよう。
魔界とつながる闇を拠点として100階に及ぶ巨大な塔を創った。
わたしの魔力をたっぷりと込めたこのバルガスの塔はどんな魔法や攻撃であれども
簡単には崩すことなどできまい。
可能とするならバルガスの塔に侵入し、100階にある塔の根源たるコアを破壊するしかないだろう。
その時にはもちろん、わたしが登ってきた者どもを始末するのだが。
その前に各階に配置させたわたしの配下、魔物たちが相手をするだろう。
その戦いを見るのもまた一興というものだ。
「魔王様!」
「どうした、人間界の様子はどうだ?」
「それが……」
偵察に送っていた竜族の幹部がわたしの元へとやってくる。
「この世界は魔界とは比べ物にならない程に広大のようです!」
「ほう、魔界より広大か! では、人間界を支配するのはかなり時間を要するかもしれんな!」
「それが……どうやら人間共は、とんでもなく弱い……ようです」
「な……に?」
人間界が魔界より広大であることはわたしにとっては嬉しい報告だった。
それだけ支配し甲斐がある世界であり、楽しい世界であるということなのだから。
ただ、人間共がとんでもなく弱い、というのはどういうことだ……?
「恐らくですが、現状ではスライムやゴブリン、オーク程度でも余裕で支配可能と思われます。空に生息するのは動物のみで我々のような強者はおらず、人間は空を飛ぶこともできず弱小な武器で反抗するのが精一杯のようです」
「えっ……そうなの?」
「はい……いかがしましょう。今の所人間界にやってきた魔物は喜々として暴れ回り人間の住む村や町を襲っては破壊し続けておりますがよろしいでしょうか?」
「……あぁ、うん」
なんということだ。
魔素のないこの人間界では人間は弱小であり、オーク程度でも余裕で支配ができるという。
そんなのちっとも面白くないではないか!
もっとこう、魔界にはいなかった様な強い人間を期待していたのだが、そんなものは存在しないのだろうか。
「この世界に強い人間なんかいないみたいよ」
「アエラ……ほ、本当か?」
「えぇ、私には『視える』もの。どんなに強くてもミノタウロスと張り合うのが精一杯だし、魔法に対する対抗手段がないんだからこの世界の人間は間違いなく滅びるでしょうね」
「えぇ……折角人間界にやってきたのに……」
「ご愁傷様」
アエラが言うにはわたしが求めるような人間は存在しないらしい。
この人間界へと来たはいいものの、わたしが出る必要もなく下々の魔物で支配出来てしまうのか……
そんなぁ……!
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