今日が溶けてしまう前に

菜野りん

第1話

「ねえ、プール行かない?」

「え?プール?」

「そ。今から。」


夏期講習最終日の朝。

すずかはイタズラっぽく笑う。

俺は戸惑う。


「俺、何も持ってないんだけど。」

「知ってるよー。夏期講習の帰りにプールの用意持ってたら、そのほうがキモいよ。」


すずかはクラスメイトの友達に手を振りながら、着実に歩みを進める。

教室が目の前にあった。


「ちょっと早く終わるじゃん?そこからコンビニでアイスでも買ってさ。いこーよ。」

「あー、まあいいけど…。」


今日はたまたま塾のない日だ。というか、それを知って言ってきているんだろう。

すずかは幼馴染の俺に言わせれば、本当に変なやつだ。突然、突拍子もないことをいい始める。


「んじゃ、また後で。」


すずかは言い残すことはないと言わんばかりに、颯爽と席についた。

すずかは確かに変な人なのに、うまくクラスに馴染んでいる。

隠し切っている、らしい。


これから授業だ。ああ、俺はどんな気持ちで受ければいいんだ…。

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